高齢者の交通事故が多いのは9月から12月
高齢歩行者の事故は夕方になると、昼間の4倍増える!
高齢者が被害に遭う夜間事故が、日照時間が短くなる9月以降に急増することから、各地で警察が注意喚起を行っています。
茨城県では、9月末時点での交通事故の死者数が85人。このうちの48人が65歳以上の高齢者だったことを茨城県警が発表しています。
さらに、そのうち歩行中に事故にあった高齢者の半数が、夜間の道路横断中に事故に遭っています。
また、同県警の2013年から2017年までのデータでは、日照時間の長い6月から8月では、高齢の歩行者における死者数は1人未満となっていますが、それが9月から12月になると3人に増えているというのです。
こうした夜間における高齢歩行者の死亡数の多さは、ほかの県でも共通しています。福島県警は、夕方の時間帯に、車にはねられ死亡する歩行者が昼間の4倍増えていることも公表しています。

加えて、福島県内では今年10月の交通事故死亡者数は月別では最多。福島県警は異常事態として注意喚起を行っています。
歩行中の事故被害者は70%が高齢者
交通事故総合分析センターが発表した『夜間の高齢歩行者死亡事故』によれば、歩行中の交通事故による死亡者数は2009年では、1,717人。そのうちのおよそ7割に当たる1,202人が65歳以上の高齢者だとされています。
2009年の交通事故死者全体の数が4,914人であったことを考えると、なんと全体の4分の1が高齢者だったということになります。
そして、このうち夜間事故による死亡者は772人となっており、昼間と比較すると1.8倍も高い発生率であることが判明しています。
その中でも、17時台から19時台の3時間に起こった事故により亡くなってしまった方は、夜間事故の半数以上を占める416人となっており、夕方の時間帯に高齢者の歩行事故が多発する傾向にあることがわかります。
高齢者事故は近所で起きやすい
高齢者事故の70%が自宅から500m圏内で起きている
同じく交通事故総合分析センターが発表した「高齢者の道路横断中の事故」という資料によれば、こうした高齢者が歩行中に遭った事故のうち、7割が自宅から500m圏内の近所で起こっているとされています。

このうち、外出の理由は、買物と散歩が3割を占めていることが判明しており、日常生活の延長線上で事故が起きていることがわかります。
こうした事故が起こる原因としては、日常的に使い慣れた道であることから、十分な安全確認を行わずに道路を横断してしまったなどのケースが考えられます。
交通量の多いスーパーマーケット前で高齢者の歩行状況を調査したところ、横断開始前に左右を見るなどの安全確認をしたのは半数だけでした。
高齢者はその後の聞き取りに対し、「近所の道で、いつも渡っているから大丈夫」「この道を危険だと思ったことがない」と、常日的に利用している道だから危険はないと回答しています。こうした生活のなかでの些細な思い込みが大きな事故の危険につながるのです。
事故の最大の原因は「夜間視力」が低下するため
そして、高齢者の事故が起こる最も大きな原因には、加齢による夜間視力の低下が挙げられます。
これは年齢を重ねるとともに、目の機能が衰えることで、明るいところから暗い場所に移動した際、目が慣れる暗順応と呼ばれる機能が弱まってしまい、暗くなったときの視力が著しく低下しまうというものです。
平均水準でみると、20歳代では0.8前後の夜間視力が、60歳代後半になると0.4前後まで低下します。
加齢によって視力自体が落ちているなか中で、こうした症状が加えて起こることにより高齢者が事故にあってしまうのです。
夜間視力の低下の原因としては、夕方になると目がかすむなどの症状が現れる「夕方老眼」や、眼精疲労によって近視の症状が強くなってしまう「夕方近視」、網膜の炎症やビタミンAの欠乏によって起こされる「後天性夜盲症」が知られています。
高齢者の夜間事故を防止する方法
事故で亡くなった高齢歩行者の約8割に交通違反があった
車と歩行者の事故が起こった際、責任が重いのは加害者となる車の方である場合がほとんどです。しかし、高齢者事故のケースを分析すると、歩行者側である高齢者にも注意するべき点があることがわかってきました。
先述の交通事故総合分析センターが発表した資料によれば、2009年に歩行中の事故で亡くなった高齢者のおよそ3分の1にあたる249人は、横断歩道以外の単路を横断しているときに事故にあっていることが判明しています。

また、高齢死亡者のうち、交通違反の有無が確認できた236人を調査すると、走行車両の直前直後の横断が36.9%、横断歩道外横断が23.7%、斜め横断が6.4%、横断禁止場所の横断が2.5%など、合計で79.7%が事故にあう際になんらかの交通違反を行っていたことがわかりました。
これらの交通違反も、事故の一因として十分に考えられます。
交通違反があった高齢歩行者の96%弱にあたる238人が、四輪車に衝突されたことが死因であるとされています。さらにこのうちの218人の死亡について、車の運転手が歩行する高齢者を発見できなかったことが事故の原因です。
歩行者側も夜間は運転手が道路を横断する歩行者を視認しにくいという前提で、安全確認をする必要があります。
「夜光反射材」で歩行者が発見しやすくなる
高齢者の夜間事故を解決するために、高齢者が夜光反射材などがついた服やキーホルダーを身に着けることが有効です。
反射材を身に付けることで、ドライバーが歩行者を通常の2倍、60~130m前の距離から視認できるようになると言われており、事故を未然に防ぐために、反射材は非常に有効な対策です。
また、夜間視力を回復させる眼鏡なども販売されており、安全確認を行うために役立ちます。しかし、なによりも大事なのは、高齢者が日常生活に潜む事故の危険を意識して日頃から生活することです。
高齢者は、夜間視力の低下を自覚し、よく使う道路であっても安全確認をしっかりと行えば、事故にあう確率を格段に減らすことができます。
自ら実践できる対策を行うことが事故の防止につながるのです。
今回は高齢歩行者の事故についての問題を取り上げました。高齢化が進む中で、同時に高齢者がかかわる交通事故も増えています。高齢者が安心して暮らすことができる社会を築いて行くためにもさらなる対策と意識の向上が必要です。
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2020年9月7日 制定