年間3万人とも言われる孤独死。”見守りアプリ”のような孤独死対策サービスが一人暮らし高齢者を救う

年間死亡者数約125万人のうち約3万人が、誰にも看取られずに死を迎えています。
ここ数年よく耳にするようになった「孤独死」です。
これは日本が超高齢社会となり、三世代同居が減少していることにより独居の高齢者が増えてきていることが理由はだけではないようです。
さて、現状ではどのくらいの高齢者が孤立・孤独死を迎えているのでしょうか? 内閣府の発表によると、高齢者の単身世帯数は右肩上がりに増えています。

それに伴うかのように、東京都23区内で自宅で死亡した65歳以上の一人暮らしの高齢者数は、増え続けています。

もちろん、この数字のすべてが孤独死ではないでしょう。しかし、この数字から見ると、高齢者が自宅で一人亡くなるケースがいかに多いかがわかります。
「孤独死」というのは、誰にも気づかれずに一人きりで死ぬことで、その条件にあてはまる孤独死と思われる死亡例は数多くあります。
(独)都市再生機構が管理する賃貸住宅で「団地内で死亡」「誰にも看取られることなく」「死後相当期間(1週間以上)発見されなかった」という条件を満たした件数を集計した調査では、184件(2010年度)にものぼりました。

地域コミュニティがしっかりしているはずの団地でさえ、これだけの人が気づかれずにひっそりと亡くなっているという状況は、周囲との関わりが希薄になっている現在、人の繋がりという課題を浮き彫りにしているといえます。
近くに住人がいながら、発見が遅れてしまうというこの状況。孤独死は防げないものなのでしょうか?
孤独死・孤立死を防げ!企業による見守りサービスが続々と登場!
「夜まで洗濯物が干しっぱなし」「日中も電気がついている」…といったケースは要注意

「孤独死」という言葉がメディアに出始めたのは、1970年代。久しぶりに尋ねた親族が、亡くなっていた一人暮らしの高齢者を発見するという事件が相次いで起こったことによります。
その後、2005年9月にNHKスペシャル「ひとり 団地の一室で」というドキュメンタリーで放映された、千葉県松戸市の常盤平団地の孤独死問題は大きな反響があり、「孤独死」という問題への注目度が高まりました。
常盤平団地では、2001年春に死後3年が経過した男性の白骨化遺体が発見され、翌年にも、コタツに伏せたまま亡くなった男性が4ヶ月後に発見されるという痛ましい出来事が相次ぎました。
これを受け、住民の3分の1以上が65歳以上である常盤台団地自治会では“孤独死ゼロ作戦”という取り組みを2002年から始め、2015年で13年目を迎えました。
孤独死ゼロ作戦のおもな取り組みは、65歳以上の一人暮らしの方を対象に、緊急時に親族やかかりつけの医師に連絡するための「あんしん登録カード」、新聞配達時の「見守り活動」、コーヒーなどが常備され、100円の入室料で誰でも利用できる「いきいきサロンの運営」などがあります。
また、2012年に高齢化率23.2%となった栃木県でも、孤独死を防止する「栃木県孤立死防止見守り事業(とちまる見守りネット)」という活動が行われています。
「夜まで洗濯物が干したままだ」「日中も電気がついている」「新聞が溜まっている」などの異変に気づいたら各市町の窓口に連絡をする、戸別訪問などで積極的に関与するという取り組みが行われています。
防止対策は? 進むサービス開発に期待
痛ましい孤独死の事例をもとに、各企業は高齢者の孤独死を防止するためさまざまな対策に乗り出しました。
セキュリティ会社ALSOKでは、高齢者でも使いやすいデザインのコントローラーを自宅に設置し、体調が悪いときボタンを押すとガードマンが駆けつける、設置したセンサーで高齢者の動きを感知して家族へメールでお知らせするなどのサービスを始めています。
<企業による見守りサービス>
企業名 | サービス名 | 概要 |
---|---|---|
セコム | ホームセキュリティ | ・救急通報のできる「マイドクター」 ・一定時間、動きを確認できない場合に異常として通報される「ライフ監視サービス」 |
象印マホービン | みまもりほっとラインi-pot | 無線通信機を内蔵した「i ポット」を高齢者が使うと、その情報がインターネットを通じて、離れて暮らす家族に送信される。 |
東京ガス | みまも~る | 離れて暮らす家族のガスのご利用状況を、携帯電話のメールやパソコンで毎日お知らせする。 |
こころみ | つながりプラス | 高齢の一人暮らしの親に担当コミュニケーターが毎週2回電話し、電話の内容をその都度家族にメールでレポートする会話型の見守りサービス。 |
また、2015年6月1日よりNTTドコモは、「おらのタブレット」というタブレットに内蔵したアプリを通じて高齢者を見守るサービスを開始しました。
高齢者でも直感的に使いやすい画面にし、自治体からのメール配信による開封時の安否確認をしたり、血圧データが自動で保健師に送られたり、民生委員とのテレビ電話やメールで訪問の必要の有無を判断したり、多方面から高齢者をサポートできるアプリが搭載されています。
<主な見守りアプリ一覧>
企業名 | アプリ名 | 概要 |
---|---|---|
NTTドコモ | つながりほっとサポート | 携帯電話機の利用状況を家族にメールで伝えられるサービス |
インタープロ | みまもりステーション | タブレット型双方監視・通報システム |
システムアドバンス | ラクホン | 緊急時のメール発信などの機能 |
コロナ電業 | 見守り隊 | 端末を持つ高齢者や子どもの位置情報から、居所を確認できるアプリ |
これらのサービス利用を検討する際、費用面が課題に上がりますが、そうした課題を解決しようとするアプリ開発も進んでいます。
NPO法人M.C.S AIDは、看護師経験をもつ代表が、高齢者も利用できる安価なアプリを作るため、起業予定の学生たちと共同で制作に取り組んでいます。
残念ながら、今回の募集では成立しませんでしたが、クラウドファンディングを利用し、開発費用を集めるなど新しい取り組みにも積極的です。
このアプリには、「相談システム」や、看護師、介護士に直接繋がることで時間のロスによる対応遅れが防げる「緊急時システム」、家族に状況が伝わる「生存確認システム」などが含まれるそうです。
このような新しい技術を使うことで、今までは連絡が取れないとハラハラしていた家族の負担も軽減でき、異変があったときすぐに対応ができることは、孤独死を減らすことにも繋がります。今後の普及に期待したいものです。
孤独死をなくすために。ITやアプリは現代のセーフティネットとなりうるか?
「無縁社会」が生んだ希薄な人間関係に警鐘を。
周囲の人との関わりが希薄になり、孤立する人がふえ、「無縁社会」※といわれるようになりました。(※無縁社会:NHKがこの言葉を使い、報道したことで注目され、2010年の「ユーキャン新語・流行語対象」のトップテンにも選ばれました。)
「孤独死」自体は、そういった言葉こそなかったものの、明治時代から起こっていたといわれています。しかし、「向こう三軒両隣」という言葉が表すように、近所付き合いが濃かった時代には、ここまで「孤独死」は問題になっていなかったでしょう。
今、こうして地域・団地ぐるみで高齢者を孤独にさせない取り組みやアプリ開発が進められていることは、孤独死をなくすための方法として期待がもてます。こうした取り組みが、各地・各企業にもどんどん広がっていくことが待たれます。
しかし、アプリなどは、あくまで「異変があった時に、素早く対応するためのもの」という見方もできます。
そもそも、日ごろから周囲の人とコミュニケーションが取れていれば、具合が悪い、外出していないなどのちょっとした異変にいち早く気づくことができます。
内閣府が60歳以上の男女に行った調査によると、単身世帯、とくに男性の単身世帯では、「会話は1週間に1回未満、ほとんど話をしない/17.5%」「1週間に1回」「2~3日間に1回」も含めると、全体で28.7%という驚くべき状況がわかりました。

また、「困ったときに頼れる人がいない割合」という調査でも、単身世帯では、その悩みを持った人がより多いことに気づきます。

日ごろから近所の住民とコミュニケーションが取れていれば、いざという時に頼ることもできますし、また周囲の人も、気に留めてくれる機会が増えその時に高齢者の具合なども知ることができるでしょう。
「異変があった時にいち早く見つける」という対策だけでなく、普段から「孤独にさせない」ために、周囲が何をできるかを考え、行動していくことが求められていると思います。
とはいえ、急に周囲との繋がりを密接にするというのは時間がかかります。
そこで、アプリという便利なツールを活用して、家族などとの繋がりを持ち、孤独に生活させないために積極的にタブレットやスマートフォンなどを利用できる機会をつくってみてはいかがでしょうか。
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2020年9月7日 制定