介護現場で働く人の平均月給は約24万4,000円であることが判明
給与額に不満と答えた人は全体の約7割にも上る
2019年1月31日、介護職員の労働組合である「日本介護クラフトユニオン」が、介護現場で働く人の月給平均で24万4,206円(2018年8月時点)だったとの調査結果を発表しました。
なお、とします。
調査対象となったのは、ユニオンに加盟している施設職員・ケアマネージャーなど3,744人。
自身の給料に対する満足度について尋ねたところ、「大いに不満」もしくは「少し不満」と回答した人を合わせると69.1%。
つまり、現状の処遇に不満を持っている人は、全体の約7割も存在するのです。

また、給料に対して「(少し・大いに)不満である」と回答した人にその理由を尋ねると、最も多かった回答が「社会的な平均賃金より低いと思うから」で、月給制組合員では43.2%、時給制組合員では34.3%を占めました。
そして、月給制組合員における「夏の一時金」の平均額は14万8,870円。
こちらについても満足度を尋ねたところ、不満を感じている人の割合は71.8%に上りました。
不満に感じる理由を尋ねると、こちらも最も多かった回答は「社会的な平均賃金より低いと思うから」で、月給制組合員全体の57.3%を占めています。
給与・一時金ともに、不満を感じる理由の第1位が、「社会的な平均賃金よりも安いから」、となっているわけです。
介護業界と全産業の平均月給の差額は5万6,000円もある
では、社会的な平均賃金、つまり一般労働者全体と介護職との間には、平均賃金にどのくらいの差があるのでしょうか。
厚生労働省の「平成29年賃金構造基本統計調査の概況」によると、一般労働者の平均月給は30万4,000円。介護業界の平均月給と比べると、それより5万6,000円も低く、介護職員が給与の低さに不満を持つのは、無理もありません。
介護職の給料が上がらない原因のひとつとして、各介護施設・介護サービス事業所に支払われる介護報酬は公定価格なので、上限が決まっているという点が挙げられます。
介護報酬の大半は人件費をまかなうために費やされており、その割合は介護施設では約6~7割、訪問介護事業所だと約9割です。
もし、提供する介護サービスの内容によって設定価格を自由に変更できれば、賃金アップもしやすくなると思われますが、制度によってそれはできません。
利用者の要介護度の段階によって、サービスの内容と、それによって得られる介護報酬額はあらかじめ決まってしまうのです。
大手事業所の中には、運営に必要な福祉用品を一括購入することでコストを浮かし、その分を職員の給与に回しているところもあります。しかし規模の小さい事業所の場合だと、そのような工夫も難しいようです。
介護職員への加算手当てはうまく機能していないのが現状
加算の実感がない人が6割もいる
現在、介護職の給与アップを狙いとした処遇改善加算が制度化されています。処遇改善加算とは、介護職のためにキャリアアップの仕組みを作る、あるいは職場環境の改善を行った事業所に対して、賃金を上げるためのお金を支給するという加算制度です。
常勤・非常勤に関係なく賃金アップのチャンスがあるものの、加算を受けるための条件をクリアする必要があるため、すべての介護施設・介護サービス事業所で加算がもらえるわけではありません。
しかも、処遇改善加算を得ている事業所で働いているケースでも、賃金アップにつながっていると実感している人は少ないです。
日本介護クラフトユニオンが行った調査によれば、組合員(介護職)に「自身の給与へ処遇改善加算が反映されている実感はありますか」とアンケートを行ったところ、「実感していない」、「わからない」と回答した人の合計は60.6%にも上っています。

加算をもらっている事業所に働いているにもかかわらず、その約6割の人が、加算分をもらえている(給料がアップしている)とは感じていないのです。
介護業界なのにケアマネは加算が支給されない
処遇改善加算は、介護業界で働くすべての者の給料アップにつながるわけではありません。介護作業に従事する「介護職員」の待遇改善のみを目的としており、直接介護を行わないケアマネージャーは、支給の対象とはならないのです。
今まではそのことについて、注目されることは多くなかったのですが、今年10月に導入される予定である新加算導入の件で大きく注目されることとなりました。
この新加算も処遇改善加算と同じ扱いとなるため、加算分が賃金に反映されるのは、勤続(業界)10年以上の介護福祉士を中心とする介護職員のみ。ケアマネージャーは、賃上げの対象となっていません。
この問題について、「同じ介護現場で働く介護職なのに、賃金アップの対象となる職とならない職があるのは問題である」と指摘する声は少なくありません。
勤続(業界)10年の新加算でケアマネージャーが加算を受け取れないと判明してから、この点は活発に議論されています。
介護職員の待遇を改善するには待遇の改善から
社会奉仕・やりがいを持って働く人が多い
一般労働者と介護業界の給与の差が数万円もあるという状況は急に起こったわけではなく、以前から問題視されていることです。
また、メディアでは介護現場の苦悩を訴える報道も多くされ、「仕事内容に見合った給与がもらえない」という介護職に対するマイナスイメージは社会のなかに広まっています。
では、現在介護職に就いている人は、なぜその業界で働くことを選んだのでしょうか。
公益財団法人「介護労働安定センター」が行った「平成26年度介護労働実態調査」によると、介護職員やケアマネージャーに「介護業界の仕事を選んだ理由」を尋ねたところ、最も多い回答が「働きがいのある仕事だと思ったから」で全体の52.6%を占めていたとのこと(複数回答)。
また、厚生労働省の調査によれば、介護士になった理由の上位10位のほとんどが、「やりがいがある」「人の役に立ちたい」など、社会奉仕に対する強い意思がその背景にありました。

実際、今回発表された日本介護クラフトユニオンの調査結果をみると、介護職に「希望する賃金月額(手取り金額)を尋ねたところ、平均で26万2,494円。
一般労働者の平均月給(平成29年で30万4,000円)よりも低いのです。
このことは、社会奉仕・やりがいの精神で、仕事をしている人がそれだけ多いことの現れともとれます。
とはいえ、現実問題として生活するための給与は大事。自身の給料に不満があると回答した人が7割に上ったという冒頭の調査結果を見ても、介護職の賃金改善は喫緊の課題です。
介護の退職者は仕事内容が嫌で辞めているわけではない
今や日本は超高齢社会に突入し、いわゆる「2025年問題」まであと6年となりました。
2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年に、介護・医療費などの社会保障費が急増する問題のことです。
それに伴い介護職の人手不足もさらに深刻化すると予想され、介護人材の確保に向けた取り組み・施策が必須の状況となっています。
介護職の人手不足を緩和するには、まずは既存の介護士が離職しないレベルの労働環境を整えることが必要です。
「平成25年度介護労働実態調査」によると、介護職に「直前の介護の仕事をやめた理由」を質問したところ(複数回答)、多かった回答は「人間関係」(24.7%)、「運営のやり方」(23.3%)、「収入の少なさ」(17.6%)などでした。
介護の仕事そのものが嫌になって辞めた人は少なく、労働環境・職場環境に問題があったことが主な原因となっているわけです。
特に収入に関しては既に繰り返し触れた通り、現時点で給与に不満を持っている方が多いです。早めに対策を取らないと人材がさらに流出しかねない事態となります。
今回は介護職の給与問題について取り上げました。高齢化が進み介護人材へのニーズが年々高まる中、介護職に対する抜本的な待遇改善策が、今後さらに必要になってくると言えるでしょう。
2月13日、政府はベテラン介護福祉士の新たな加算の名称を「介護職員等特定処遇改善加算」と名付け、介護職の待遇改善を目指そうとしています。今後も、政府の動きに要注目です。
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2020年9月7日 制定