腸内検査で認知症が確認できるように⁉予防には腸内環境を整えて痩せるのが一番
腸内検査で認知症の有無が確認できることが判明
認知症の人は腸内のバクテロイデス門が少ない
2019年1月、「もの忘れセンター」の佐治直樹副センター長、国立長寿医療研究センター長らによる論文が、科学誌である『Scientific Reports』に掲載されました。
内容は、認知症と診断された人と、そうではない人の間に、腸内細菌の組成に違いがあるというもの。
認知症の人の腸内細菌は、「バクテロイデス門」と呼ばれる菌が少なく、15%からしか検出されなかったのに対し、認知症でない人の腸内からは45%も検出されました。

さらに、バクテロイデス門が多い人と、そうでない人を比べると認知症になる確率が約10分の1となっていることがわかったのです。
佐治直樹副センター長はこの結果について、症例が少ない横断研究のため、因果関係を証明するものではないとしつつも、バクテロイデス門の少なさが認知症と関連が高いことが示されたとしています。
調査方法としては、もの忘れ外来を受診した人128人に対し、認知機能検査や、頭部MRI検査を実施。また、検便のサンプルを微生物解析の専門企業である「株式会社テクノスルガ・ラボ」が腸内細菌組成を調査し、認知機能との関係を解析したものです。
2025年には5人に1人が認知症となるとされている日本において、今回の研究は非常に意義深いものと考えられます。
3つの腸内細菌「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」とは
腸内細菌とは、名前の通り人間や動物の腸に生息する菌を指します。人間の場合、大腸に生息する腸内細菌は、2万から2万5,000種類以上にも及び、大腸内にいる腸内細菌の総重量はおよそ1.5kg以上。この腸内細菌には3種類に大別できます。
ひとつ目は、ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸産生菌など、ビタミンの合成や消化吸収の促進、免疫機能の刺激などを行い、健康の維持や老化防止をはじめとした人体にとって有益な働きをする善玉菌。
ふたつ目は、ウェルシュ菌やブドウ球菌、大腸菌などの、細菌毒素や発がん物質を生み出し、老化の促進など人体に有害な働きをする悪玉菌。
みっつ目は、そして腸内環境次第で有益にも有害にもなる日和見菌です。
これらの菌が腸内に集合体としていることを、顕微鏡で腸内を覗いたときにお花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼びます。
認知症予防に大切なのは痩せること!その理由は?
肥満抑制にも繋がるバクテロイデス門を増やす方法
今回注目を浴びることとなったバクテロイデス門は、日和見菌のひとつです。この日和見菌は、腸内細菌の中で最も多い菌であり、腸内に善玉菌が多いと、善玉菌を補助し、悪玉菌が多い場合には、悪玉菌を補助するという性質があります。
この日和見菌のなかでも、腸内に多く住んでいるのがバクテロイデス門とフィルミクテスという2種類の菌。
ふたつの性質の違いとしては、バクテロイデス門は食べ物を分解する際に短鎖脂肪酸を発生させることで肥満を防止してくれますが、フィルミクテスは食べ物からエネルギー量を多く取り込んでしまうため、肥満に結び付きやすいというものです。
事実、とある研究によれば、肥満の人ではバクテロイデス門が少なく、フィルミクテスが多い傾向があることが判明しています。
また、別の研究では、標準体型の人と肥満の人に、標準的なカロリーの食事と、高カロリーの食事をそれぞれ3日間食べさせて、それぞれの期間の便に含まれたエネルギー量と腸内細菌を検査するという実験が行われました。
その結果、肥満の人はともにエネルギー量に変化がありませんでしたが、標準体型の人は高カロリー食の際にエネルギー量が減少するということが判明。
さらに、高カロリー食を食べた場合、フィルミクテスが増加し、バクテロイデス門が減少したとされています。
つまり、認知症予防のためにバクテロイデス門を増やすには、腸内環境を整えて、痩せることが必要なのです。
善玉菌を増やすにはヨーグルトや乳酸菌飲料が効果的
腸内環境を整えるためには、善玉菌を増やすことが近道です。
これに有効とされているのが、生きた善玉菌であるプロバイオティクスを摂取するというものです。
ヨーグルトや乳酸菌飲料、あるいは漬物や納豆など、ビフィズス菌や乳酸菌を含む食品を食べることで、プロバイオティクスを摂取することができます。
しかし、これらを一度食べれば腸内に善玉菌が定着するということではなく、一定期間腸内に存在するに過ぎないため、毎日続けて摂取して、善玉菌を補充する必要があるとのこと。
また、腸内の善玉菌を増やす作用のあるプレバイオティクスの摂取も、腸内環境の改善に有効です。
これは、野菜や果物、豆などに多く含まれるオリゴ糖や食物繊維がそれにあたります。
善玉菌を含む特定保健用食品なども多く販売されていますが、オリゴ糖については急に摂取するとお腹の調子が悪くなることがあるので、注意が必要です。
逆に悪玉菌を増やす原因になるものとしては、過度食生活の乱れやストレス、抗生物質などの服用。老化によっても善玉菌は減少するため、高齢者はより、腸内環境に気を使う必要があります。

特徴として、善玉菌と日和見菌だけを増やしては健康に支障がでるということ。腸内フローラで一番理想とされるバランスは、善玉菌が20%、悪玉菌が10%、日和見菌が70%程度だそうです。
アンケートの結果、7割は腸の健康に気を使っていないことが判明
健康な高齢者の腸内は30代の腸内と似ている
こうした腸内環境は、先述した肥満や認知症への効果という視点以外でも、全般的な健康のバロメーターになる可能性が指摘されています。
カナダと中国で行われた研究では、3歳から100歳を超えるさまざまな年齢層の1,000人を対象として、腸内フローラを調査したところ、健康な高齢者の腸内は、30代の腸内フローラと似ているということが判明しました。
また、健康な人々に共通して見られたのが、腸内に住まう菌の種類が豊富であるということです。
この研究を行ったカナダのウェスタン大学教授のグレッグ・グール氏は、こうした腸内細菌を維持することは、循環器疾患を予防するうえでのコレステロール値と同じく、健康な老化をするうえでのバイオマーカー(人体の状態を評価する資料)になるとしています。
また、腸内環境は1型および2型の糖尿病、高血圧、炎症性疾患、大腸がんなどのさまざまな疾患のリスクとも関係があるとのこと。そういった意味でも、この腸内環境を整えることは、全般的な健康の維持に対して重要です。
アンケート回答者の7割は腸内の健康を意識していない
しかし、こうした健康へ大きな影響をもたらす腸内環境に対して、注意を払わない人が多いのが現状です。
森永製菓が行ったインターネットアンケートによれば、腸内環境に関する意識調査で、「腸内の悪玉菌を減らそうと日頃から意識していない」と答えた人は69.1%と、全体の7割にのぼりました。

先述したように、老化に伴い善玉菌、特にビフィズス菌は劇的に減ってしまうため、冒頭で述べた認知症との関連も含め、高齢者は特に腸内環境への意識を高くする必要があります。
また、最新の研究によれば、腸内細菌は自閉症とも関連も指摘されつつあり、現代医療において多くの注目を集める分野となっています。
そのため、今後は腸内細菌をもととして、病気を診断する方法や、健康を増進するための技術が発展していくと考えられているのです。
健康に気をつける際、この腸内環境というものが大きな指標のひとつになる、という意識が世界的なスタンダードになる時代が、今後訪れるかもしれません。
そうした意識を今から持ち、腸内環境を整えることで認知症をはじめとしたさまざまな疾患のリスクを抑えることは、超高齢社会を迎える日本にとって大変重要です。
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2020年9月7日 制定