シェアハウスが孤独死を解決する
高齢者と学生が共同で暮らすシェアハウスがオープン
3月30日、近畿大学の近くに、高齢者と学生が共同で暮らせるシェアハウスが作られました。
一人暮らしに不安を抱えていたり、介護施設を出て一人暮らしをすることに不安を感じている高齢者と学生が同居することによって、高齢者に対する見守り機能を打ち出したのがこのシェアハウスです。
高齢者との共同生活を想定して階段に手すりがあったり、段差を解消するためスロープが付いていたりします。
通常、学生の下宿するようなワンルームのマンションは、キッチンやバスルームが狭いのが通り相場ですが、このシェアハウスは元々戸建て住宅だったために広く、さらに高齢者の見守りをするということで、学生の家賃を低く抑えています。
数名の同居人が一軒家やマンションなどに暮らすシェアハウスという居住形式は、トイレ、バス、キッチンなどを居住者の共有としたところが多く、近年になって都市部を中心に若者の間で既に定着しています。
このシェアハウスに高齢者が一緒に居住する試みは、高齢者向けシェアハウスとしていま注目を集めています。
一人暮らしの高齢者は700万人以上に
高齢者向けのシェアハウスが注目を集める背景には、単身高齢者の増加があります。
内閣府の『平成29年版高齢社会白書』によれば、一人暮らしの高齢者(65歳以上)は、1980年(昭和55年)時点では男性が約19万人、女性が約69万人で、高齢者人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でした。

しかし2015年(平成27年)には、男性では約192万人、女性では約400万人にまで増加し、高齢者人口に占める割合も男性が13.3%、女性が21.1%にまで上昇しています。
約35年の間に、一人暮らしの高齢者の人口数は男性が約10倍、女性が約5.8倍も増加し、高齢者人口に占める割合では男性で約3倍、女性で約1.9倍上昇しているのです。
一人暮らしの高齢者は今後もさらに増えていくとみられ、『高齢社会白書』では、団塊の世代が75歳以上となる2025年には男性217万人、女性471万人。2035年には男性261万人、女性で501万人に達すると予想されています。
身寄りのない人も多い単身高齢者が増加するにともない、孤独死などの懸念からシェアハウスの需要が高まっているわけです。
シェアハウス最大のメリットは認知症予防!
会話も外出もない高齢者は認知症のリスクが
こうした独居高齢者には、認知症のリスクが高まる可能性も指摘されています。
2018年に日本福祉大学によって行われた調査によると、同居人以外と週1回未満しか交流しない高齢者が、毎日頻繁に交流する人に比べ、要介護状態や認知症になるリスクは1.4倍も高くなるという結果が出ました。
これは、さまざまな人と絶え間なくコミュニケーションを取っていれば、高齢者は、認知症になりにくいということでもあります。
さらに、2013年の『国民生活基礎調査』によると、会話する頻度が、1週間に1回以下という高齢世帯の割合は、夫婦のみの世帯の場合、男性が8.4%、女性が7.4%であるのに対して、単身世帯の場合は、男性が28.8%、女性が22.0%となります。
単身世帯になればなるほど、喋らなくなる傾向があり認知症発症リスクが高まってしまいます。

そして、その対策としてシェアハウスという居住形態は、これまで以上に今後はクローズアップされていく可能性があります。
同性代の高齢者や若者とともに住むシェアハウスは、単身の高齢者が孤立しない住居の選択肢として期待されています。
通常の7割ほどの家賃で入居ができる
現在、高齢者向けのシェアハウスは、欧米では既に広がっている居住形態であり、非常にメリットが大きいと言われています。
まず、シェアハウスは一般にキッチンやトイレを共同で使うため、通常の賃貸住宅よりも家賃が低く定められています。
同じ条件を持つワンルームマンションに比べても、7割から8割ほどの家賃で住むことができることが多いため、収入の少ない高齢者にとっても入居しやすくなっています。
孤独死や孤立が懸念される高齢者にとっては、孤独感が緩和されるのも大きな利点。仕事などで社会とかかわることが少ない単身の高齢者には、シェアハウス自体がセーフティーネットとして機能します。
また、お互いの安否確認や健康を気遣うなど、高齢者にとって必要な支え合いが自然に生まれやすいとされています。
もちろん、他人同士が居住空間をシェアすることで問題も起こります。たとえば、高齢者一人ひとりでは生活のスタイルが異なることから、騒音問題や家事をどこまで分担共有するか、などのトラブルが発生する可能性が考えられます。
しかし高齢者にとっては、共同で生活する人が常に一緒にいることにより、治安面における安心や認知機能の低下予防というメリットが大きいことも確かです。
「終身建物賃貸借制度」改正がシェアハウス増加を後押し
住まいを失う高齢者の受け皿に
シェアハウスは、高齢者の住宅難の解決策としても注目されています。現在、低収入の高齢者の多くが高度経済成長期に作られた共同住宅に家賃の安さから長年住んでいるといわれています。
ですが、近年は、老朽化によって建て替えが必要になったという理由から、立退きを迫られることも増えてきました。
ところが、こうして住居を追われた高齢者が新しく部屋を借りたくても、家賃の高額さから転居が困難になるケースや、孤独死や家賃の滞納を恐れる不動産会社と大家から入居を拒否されることも少なくないのです。
こうした事態を受けて、国土交通省は、亡くなるまで高齢者が住むことの出来るような賃貸住宅の供給を増加させるべく、「終身建物賃貸借制度」についての省令を改正しました。

改正によって、床面積やバリアフリー基準などが大きく緩和されています。この事業は、60歳以上の高齢者を対象に、25平方メートル以上の床面積を確保した物件を提供し、一代だけの借家契約を結ぶというものです。
しかし、2001年に創設されて以来、認可実績は193事業者9,733戸(2016年度末)にとどまっており、住まいを失った高齢者の受け皿としてはまだまだ普及への課題が存在しています。
空き家活用で家賃問題が緩和される
今後、ライフスタイルの多様化とともに、年金で生活する高齢者の経済力に合わせた、さまざまな形態の住まいが必要となっていくことは間違いありません。
厚労省の調査ではサ高住の平均家賃は平均14万円(共益費、サービス費含む)となっており、これに対して、2017年の総務省の『家計調査報告』では無職の高齢単身世帯における年金収入は10万7,171円ですから、低収入の高齢者が住むには難しい面があります。
そこで、一般の賃貸住宅の家賃を下げるための政策として、前項で述べた改正「終身建物賃貸借事業」において、キッチンやバスなど共同で利用出来るような9平方メートルのシェアハウスも新たに追加されたのです。
全国では空き家問題が深刻さの度合いを増しており、これを受けて東京都は、空き家活用策の一環として、安く空き家を高齢者に貸し出す事業を始めています。
さらに、2016年から国は空き家対策のための特別措置法を施行していますが、これらの空き家をシェアハウスとして活用していけば、さらに安い家賃で高齢者が住める環境が整備されることになるとみられており、この取り組みが全国に広まることに期待が寄せられています。
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2020年9月7日 制定