孤独死をした一人暮らし高齢者の8割が男性と判明!なぜ男性の孤独死が多いのか?
孤独死が増加を続けている…死因の大半が病死
孤独死の8割以上が男性だと判明した
11月12日、大阪府監察医事務所は、2017年の大阪市内における孤独死が計1,101人に上り、そのうち約8割に当たる871人が独居の男性だったとの調査結果を発表しました。
この調査では、「自宅で遺体が発見され、かつ死亡から4日以上経過している」場合を孤独死と定義。1,101人のうち、亡くなってから1ヵ月以上経過していた人が196人で、なかには死後1年4ヵ月経っていた人もいました。
世代別で見ると、60代以上の高齢者世代が8割以上を占め、40~50代の中年世代が約2割となっています。
孤独死が女性よりも男性の方が多いという実態は、一般社団法人日本少額短期保険協会が今年5月に発表した報告書においても明らかにされています。
この調査によると、全国の孤独死者(n=3,392)における性別について、男女の人数比率はおよそ8:2。すなわち、全体の約8割が男性だったのです。

年代別にみると60代の孤独死が最も多く(男性32.9%、女性21.0%)、2番目に多かったのが70代(男性23.4%、女性20.1%)でした。
また、孤独死の死因としては、「病死(62.3%)」が最多で、以下、「不明(24.6%)」「自殺(11.3%)」「事故死(1.8%)」と続いています。
一人暮らし高齢者の増加とともに、孤独死者数も増加
今回発表された調査結果は大阪市を対象としていましたが、孤独死が増えているのは東京都心部も同じです。次は、東京都監察医務院のデータを見てみましょう。
東京23区内で一人暮らしをしていた高齢者(65歳以上)の自宅での死亡者数は、2003年当時は1,451人でした。
しかし、2016年には3,179人となっています。
わずか13年間のうちに、誰にも看取られることなく亡くなる高齢者の数が2倍以上も増えたのです。
高齢者の孤独死が増える背景には、一人暮らしをする高齢者の増加があります。
「平成30年版高齢社会白書」によると、65歳以上で一人暮らしをしている人の数(全国)は、1980年時点では、男性が約19万人に対し、女性が約69万人。65歳以上人口に占める割合では男性が4.3%、女性が11.2%でした。
ところが2015年には、男性が約192万人、女性が約400万人まで増え、65歳以上人口に占める割合では男性が13.3%、女性が21.1%まで増加しています。
一人暮らしをしている高齢者の数は、1980~2015年の間に男性が約10倍、女性が約6倍も増えているのです。
なぜ女性と比較して男性の孤独死が多いのか
一人暮らしは女性の方が多いのに、孤独死は男性が多い
内閣府の「高齢者の健康に関する意識調査」によれば、「孤独死を身近な問題だと感じる」という人の割合は、60歳以上の人全体では17.3%でした。しかし、一人暮らしの世帯に絞った場合は45.4%と、4割以上に上っていました。
同じ高齢者世代でも一人暮らしをしている人の場合、孤独死を身近に感じ、問題視する傾向にあるわけです。
ところで、冒頭で紹介した大阪府監察医事務所や日本少額短期保険協会の調査では、孤独死は高齢者世代に多く、女性よりも男性の方が圧倒的に数が多いとの結果が出ていました。
しかし「高齢社会白書」の2015年時点におけるデータを見ると、全国の一人暮らしをしている高齢者592万8,000人の内訳は、女性が約400万人、男性が約192万人と、女性の方が圧倒的に多くなっています。

一人暮らしをしている高齢者は女性の方が多いのに、孤独死をする高齢者の大半が男性なのです。
なぜこのような逆転現象が生じているのでしょうか。その原因には、女性にはない男性高齢者の特徴が大きく影響していると考えられます。
男性のほうが孤独死が多くなる要因とは
孤独死が増加している社会的要因として専門家が指摘しているのは、「近所・地域における付き合いが希薄になったこと」「核家族化が進み、夫婦だけで生活する高齢者が増えたこと」などです。
しかし男女間を比較した場合、女性に比べて男性の方が、日常的な地域の付き合いや、ご近所とのコミュニケーションを苦手とする方が多いといわれています。特に定年退職を迎えると社会との接点が大きく減少し、社会的に孤立するケースが多いのです。
老後にもし妻と死別してしまったら、夫は助けを求める相手がいなくなる恐れがあります。
そうなると、病気などで動けないなどの緊急事態が自宅で発生しても、周囲に異常が知られずに、手遅れになってしまうケースが生じるのです。
また、社会的な性(ジェンダー)の観点から男性の問題を考える「男性学」の研究分野によると、男性には周囲の助けを借りずに一人で強く自立して生きていくことが求められ、クールかつ冷静なふるまいができれば、多少共感能力に欠けていても社会的に評価される傾向があります。
こうした男性におけるジェンダー的特質が、男性の社会的孤立を招きやすくし、孤独死を増やす要因のひとつとして指摘されます。
夫婦共倒れも懸念…実態把握が急務に
夫婦ニ人暮らしでも、老老介護による共倒れのリスクがある
ここまでは、単身の男性高齢者における孤独死の多さをみてきました。では一人暮らしでなければ問題ないのかというと、決してそうではありません。
例えば夫婦ニ人暮らしをしていてどちらか一方が要介護状態になると、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」状態となってしまいます。介護する側が病気や介護疲れで倒れた場合、介護されている方も「共倒れ」して同時死する危険性があります。
実際、老老介護の状況に陥っている高齢者は少なくありません。
「国民生活基礎調査」(2013年)によると、在宅介護を行っている世帯のうち、介護する人もされる人も65歳以上である世帯の割合は49.1%、どちらも75歳以上である世帯は23.4%に上ります。

高齢者は体力が少ないため、介護負担に耐え切れずに倒れるリスクは若い世代よりも高くなります。
現に東京都では、2018年2~3月の間だけでニ人暮らしの高齢者世帯が共倒れ(同時死)した件数が6件発生しています。高齢化が進むなか、老老介護とそれに伴う共倒れは今後増加していく恐れがあります。
定義さえあいまい…行政による孤独死の把握・対策が課題
高齢者における孤独死のリスクに社会的な関心が集まる一方で、行政による対策は進んでいないのが現状です。そもそも、孤独死の発生状況について実態調査を進めている都道府県自体が、全国的に多くありません。
その要因のひとつとして、孤独死について国側が明確な定義を行っていないために、孤立状態をどのように定義づけるのかが難しいという点が指摘されています。
しかしそんななかでも、一部の自治体は独自に孤独死対策を始めています。
例えば岩手県奥州市では、「ご近所福祉スタッフ」を各地域に配置し、同じ地域住民同士で見守り、支え合う環境づくりを実施しています。
同様に秋田県藤里市でも、高齢者の孤独死を防ぐために、近隣住民が協力しながら地域で支え合いの輪を広げていく活動が広がっています。
定義づけの方法も重要ですが、まずはこうした動きを全国的に広めていくことが、目前の孤独死を防ぐことにつながるのではないでしょうか。
今回は高齢者の孤独死の問題を考えました。
2040年には一人暮らし高齢者の人口は896万3,000人と2015年の1.5倍に膨れ上がると予想されています。今後、さらなる対策や取り組みが、必ず必要になってくるでしょう。
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2020年9月7日 制定