高齢者のペット離れが進む!飼育ができなくなる前に、保険外サービスやペット保険の活用で対策を
動物とのふれあいは高齢者の健康にいい効果が
犬や猫などペットの平均寿命は伸びている
今やペットは、大切な家族の一員となりました。近年では、50代から60代で犬や猫を飼う人の割合が減少傾向にあることがわかっています。
一方、70代で「ペットを飼っている、飼いたいと思っている」人は横ばいというデータもあり、子育てや仕事も一段落して、第二の人生をペットとともに歩みたいという希望が薄れているわけではなさそうです。
ただ、鳴き声によるトラブルが起きたり、散歩が必要だったりする犬の飼育率は、すべての年代で低下しています。かつてペットの花形だった犬の人気が揺らぎつつある様を象徴しています。
さて、社会的なペット人気は加熱しているにもかかわらず、ペットを飼う高齢者が減っているのはなぜでしょうか。
その理由として、ここ最近のペットの平均寿命の伸長があります。
犬・ネコの平均寿命の調査結果によると、2017年で犬14.2歳、猫15.3歳。特に2010年と2015年の平均寿命の伸び率が大きく、犬1.0歳、猫1.3歳も長生きするようになりました。
ペットが高齢化している理由には、ペットフードの質が良くなったこと、動物医療が発達したことなどが挙げられます。また、室内で飼う品種の犬や猫が増え、ペットが衛生環境の整った状態で生活するようになったことも挙げられます。
同時に、人間も高齢化しています。70代から80代、そして90代となってから、老化や病気の世話が増える高齢のペットを飼い続けるのは難しくなるため、高齢者も犬・猫の飼育を諦めるケースが増えていると考えられます。
高齢者の心を癒やす効果も
近年、介護や福祉の現場では、高齢者にペットと触れ合う機会を増やす取り組みが進んでいます。
なかには、「アニマルセラピー」として高齢者の健康をサポートする企業も登場。老人ホームに犬などの動物を連れていって、普段ペットと触れ合う機会がない高齢者と遊んでもらい、気持ちを和やかにしてもらうのです。
アニマルセラピーは、とくに認知症の高齢者のケアとしても注目されています。犬や猫などのペットと触れ合うと、人間の体内にに「オキシトシン」という幸せホルモンが分泌されるという研究結果もあります。
また、笑顔になって気持ちが落ちついたり、動物と遊ぶなかで、楽しみながら軽い運動効果も生まれたりする効果も期待できます。
実は、犬猫をペットで飼っている高齢者の4割が、自分自身がとても健康であると自信を持って暮らしている傾向があります。生活が充実している感覚が強いこと、趣味を楽しんでいる割合が大きいことも、犬猫を飼育している人に多い特徴です。
さらに、次のような研究結果も出ています。犬猫を飼っていない人の2年後の生存可能性は97.8%であるのに対して、飼っている人は98.2%となりました。わずかな差ではありますが、ペットと暮らすことと長生きには、関連性があると考えられます。

そうした背景もあって、医療機関や福祉施設では、積極的にアニマルセラピーを高齢者の生活に取り入れるところが増えています。
ペットの飼育にはデメリットも
ペットの長寿化で治療費など金銭負担が増加
ペットの飼育は、高齢者の心と体にプラスになって、健康効果が期待できます。しかし、生きた動物を飼育するため、さまざまな問題も発生しています。
金銭的な理由もあります。ペットの長寿化によって、以前よりお金がかかるようになっています。
大切なペットが長生きするのは素晴らしいことですが、寿命が延びればその分、老齢化した犬猫のケガや病気の治療に関する費用が必要です。体調の悪いペットを診てもらうために、動物病院に連れていく機会は多くなるのです。
さらに、動物医療が進歩したことで、ハイレベルの医療も受けられるようになりました。
それまでは治療が難しかった重いケガや病気でも手術方法や医薬品の発達で助かる命が増えています。人間用のCTによる検査や内視鏡を使った複雑な手術なども登場しています。
それにともなってペットの診療費も増大。健康保険がない動物医療はすべて自由診療のため、手術や検査によっては高額な治療費になることも珍しくありません。
飼い主の高齢化によって現役時代のようにペットにお金を掛けられなくなったり、飼い主自身が入院や介護施設に入所してペットを飼育できなくなったりするケースも目立つようになりました。
ペットに使うお金は年間で犬は10万円台、猫は5万円未満というデータがあります。ペットの長寿化で毎年支払うエサ代や治療費は増え続け、高齢者が金銭的に犬猫を飼い続けるのが難しくなる可能性があります。
老後のリスクに備えているのは飼い主の2割
ペットを飼うことには、金銭的な負担増などの問題をはじめ、飼い主自身が飼育を続けられなくなるなどのリスクが伴います。
さらに、毎日の世話、ケガや病気になれば病院に連れて行くなど、家族の一員としてのケアを欠かすことができません。
そんな手間や金銭的な負担がありつつも、60代以上のペットを飼っている人を対象にしたアンケート調査によると、そのうちの9割近い人がペットを飼って癒された、ずっとペットを飼い続けたいと思っています。
一方、「ペットの世話ができなくなったときにどうするか」という問いに対し、6割が「まだ考えていない」、2割が「考えているが準備はしていない」と回答しています。
つまり、シニアでペットを飼う人の8割は、将来の準備ができていないのです。

年齢とともにペットの世話が難しくなるのは、どんな理由からでしょうか。
ペット相談の事例を見ると、以下のような理由が並びます。
1 | ペットを世話する体力がなくなった |
---|---|
2 | ペットがいるから必要な入院ができない |
3 | 視力や握力の低下のせいでペットの爪切りが難しくなった |
4 | ペットを動物病院へ連れて行くだけの金銭的余裕がなくなった |
しかし現在では、もし飼い主が高齢を理由に世話ができなくなっても、最後まで飼育してくれる犬猫用の養老施設があります。
ただ、高額なケースがほとんどです。ペット同居もできる老人ホームもありますが、飼い主本人が急に入院が必要になったり、順番待ちで入所まで時間がかかったりするなど、スムーズにいかないことが多いのも確かです。
終生飼い続けること、難しければ預け先を考えること。高齢者がペットを飼うには、ペットと飼い主それぞれの将来をイメージしておく必要があります。
安心してペットと暮らすためには事前の対策が必要
訪問介護で保険外サービスの利用が可能に
飼い主が高齢になり、自分でペットの世話ができなくなったとき、一体どのように対処したらいいのかでしょうか。
2018年9月に厚生労働省が示した介護保険制度に関する指針で、ペットの世話といった介護保険外のサービスをこれまでの介護保険サービスと組み合わせて利用することが正式に認められました。
いわゆる「混合介護」の問題は、長らく「自治体によって判断が異なるため統一すべき」という声が高まっていたからです。
これまでの介護保険制度でも、混合介護は認められていました。しかし、自治体によって規定が異なることや、別々の訪問介護員が必要なこと、同じ訪問介護員の場合は再訪問が必須になるなど、利用するにはハードルが高く、実際にはほとんど利用されていませんでした。
今回の厚労省の指針によって、家族の部屋の掃除や買い物、食事提供、草むしりやペットの世話といった保険外サービスを訪問介護の前後や途中に行えるようになっています。

ペットの散歩や掃除、餌やりといった犬猫の世話は保険外サービスのため、利用料は全額負担となります。しかし、介護ヘルパーに依頼できるようになることで、自宅でペットと暮らし続けられる可能性は高まります。
老後の飼い主向け新サービスもうまく活用して
ペットを飼う高齢者には、「もしペットより自分が先にいなくなってしまったら」という将来の不安ものしかかります。「残されたペットはどうなるのだろう」「ちゃんと誰かに面倒をみてもらえるのだろうか」…そう考える人も多いのではないでしょうか。
ペットが最期まで幸せに暮らすために、最近では、飼い主の死後、本人に代わってペットの世話をするサービスが登場しています。
その代表例は、「ペット信託」です。飼い主が認知症になったり、突然亡くなってしまったりしても、前もって飼い主が専任した飼育者にペットの世話をしてもらえます。後を託された飼育者は、信託財産からペットの世話をする費用を受託者から受け取るシステムです。
きちんとペットの世話をしてもらうために、飼育者と財産管理をする受託者が信頼できることも重要。ペット信託を専門に取り扱う行政書士も登場していて、費用はかかりますが、契約書面を交わすこともできるので安心です。
このほか、飼い主が最期まで自分で犬猫の世話をできるペット可の介護施設を探す、飼い主に代わってペットを引き取るペット互助会に入会するなど、愛するペットの将来を守る方法も増えています。
高齢者の心身の健康維持に役立つペットの飼育…犬や猫の力を借りれば、より健康的で幸せな毎日を送れることでしょう。
しかし、飼い主本人の将来も考えながら、飼うことをしなければなりません。ペットの長寿化と、飼い主の高齢化という2つの問題を、早めにクリアにする方法を考えておきましょう。
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2020年9月7日 制定