「多重介護」に苦しむ家族介護者は20万人以上!多重介護と介護離職で二重苦に
介護を受けている人(要介護者)の半数以上が、同居の配偶者や子、子の配偶者などに面倒を見てもらっています。しかも、介護者の5人に1人が複数の要介護者を同時に見なくてはならない「多重介護」です。
介護者の中には勤め人も多いため、介護に割く時間が増えていけば、仕事と介護の両立も困難になってきます。
日中、介護サービスを使っても、保険の点数内に収まらず、自己負担分が追加されていく。
何とか介護費を節約しようと、介護者自身が仕事を辞め、介護に専念するケースも……。
こうなると介護者1人がどんどん追い込まれるようになってきます。今後さらに増え続ける「多重介護」がどれほど切実なものなのか、問題の核心に迫りながら、解決の糸口を探ってみました。
介護者の2割以上が多重介護!? 在宅介護でも介護の担い手不足の問題が深刻に…
核家族化と少子化の影響か…老々介護に次いで多重介護の問題が勃発!
最近、高齢者が高齢者の介護を行う「老老介護」に加えて問題になっているのが「多重介護」です。「多重介護」とは1人の介護者が2人以上の要介護者を介護することを指します。
現在、多重介護の人はおよそ20万人おり、NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジンの調査によると、「介護者全体の約21%」と報告されています。これは5人に1人が多重介護を行っている計算になります。
また、介護者と要介護者の関係を見ると、介護者の約36%が子や子の配偶者で、介護者全体の64.1%が同居による在宅介護です。多重介護の場合でも、子が親の介護を行うケースは多いですが、別のケースも考えられます。
たとえば子が障害者で母親、もしくは父親が介護者となり、さらに配偶者の介護を行う。
ほかには、自分の親に加えて、祖父母の介護を行っているケースもあり、1人で3人以上の面倒を見ている人たちもいるのです。
「老々介護+多重介護」となれば、介護者の体力面や精神面での負担はますます大きくなり、共倒れになるリスクも高まります。
介護者の健康も心配…負のスパイラルに陥りやすい「多重介護」の2大不安とは?
多重介護の担い手は50代が中心!? 介護者も自分自身の身体が心配になってくる年頃!
ただでさえ1人の人間を毎日、自宅で介護するのは重労働です。それが2人、3人と要介護者の数が増えていけば、いずれ体力的にも精神的にも限界を感じることがあるでしょう。多重介護が大変なのは、要介護のレベルや症状が1人ひとり異なる点にもあります。
頼りにしている介護サービスを利用しても十分にカバーしきれない部分が出てきます。特に夜間はトイレや排泄介助に追われ、休みたくても休む暇もない状況だといいます。
しかも、多重介護を担っている人たちの大半が50代。そろそろ体力が落ち始め、健康不安も出てくる年齢に思われます。
ここで杉並介護応援団が50歳以上の介護者110人に行った、下記のアンケート結果をご覧ください。多重介護だけが調査の対象ではありませんが、約半数の人が「介護上の苦労で自分の健康不安」があると答えています。
もし、自分1人だけが介護の担い手となった場合、疲労が重なった末、病に倒れることがあるかもしれません。精神的な不安が募っていけば、ストレスから介護うつや虐待に向かう可能性もゼロではないのです。
介護食やおむつが必要なら、在宅でも要介護者1人につき約7万円…?大きな家計負担は避けられない!?
「施設に入れたいけど毎月の利用料が高いから」と経済的な理由で、在宅介護を行っている人たちが多いのも事実です。
ただ、在宅でも介護度が上がっていけば保険の適用内では収まらず、自己負担分の方が多くなります。
実際に居宅介護サービスの平均利用額を見ると、介護保険の適用分が約1万3,000円、自己負担分が約2万5,000円で、1か月の介護費用は3万8,000円程度になります。
これらの費用に加え、必要な人であれば介護食やオムツ代などの介護用品代が平均1か月3万円前後かかってくるため、1人の介護につき毎月、最低7万円程度の出費が予測されます。
介護費用はたいてい要介護者の年金や預貯金でまかなわれますが、不足する場合は介護者が出費するか、最後のセーフティネットは生活保護になってきます。介護は終わりが見えないだけに、健康不安とあわせて経済的な問題が多重介護の2大不安といえるでしょう。
在宅介護は本当に理想といえるのか?多重介護による負のスパイラルを止めるには
多重介護で共倒れをする前に地域包括支援センターに相談を!
日本の介護サービスは、もともと介護される人を中心に考えられたものです。そのため介護者のケアに関しては今ひとつ遅れ気味です。
中には横浜市のように、介護に関わるケアマネージャーや介護ヘルパー、看護師、医師などに加え、弁護士、市民後見人などが集まって、多重介護者の負担を軽減する目的で支援を行っている自治体もあります。しかし、多くの自治体において介護者の支援は手薄状態です。
住み慣れた自宅で介護を受けるのは確かに理想ですが、介護する側にとっては苦痛以外の何物でもないかもしれません。
多重介護の壁に突き当たったら、1人で悩み苦しむ前に、まず地域包括支援センターに連絡し、解決策を話し合うことです。
経済的な問題に関しては、「いくらまでなら費用をかけられるのか?」など、毎月の収支バランスを見て相談することが大切です。
介護といえども所詮、経済力が物をいう!? 多重介護による“介護離職”は二重苦を招きかねない!
現在、多重介護を行っている人たちの中には、仕事と介護の両立に悩んだあげく、介護離職をするケースも増加。介護者の収入が途絶えてしまうと、負のスパイラルは一気に加速していく傾向があります。
特に50代以上の介護者は自分の老後も視野に入れて考えなくてはなりません。
介護の問題とは別に、自分の生活を維持する経済力も蓄えておく必要があります。
中高年の場合、一度離職してしまうと再就職が非常に困難です。
お金もない、仕事もないといった状態では、後々、二重の苦しみを招くことになります。
そこで国が推し進めているのが「介護休業制度」です。
ただ、介護休業制度の利用率は2013年の時点で3.4%と非常に低い数字で、思ったほど普及していません。
「実際に使いづらい」といった指摘もあり、制度自体の見直しも検討されています。
職場によっては周囲から理解が得にくく、介護休業制度を取りづらい場合もあるようです。
しかし、このまま少子化が進み、未婚率の上昇が拍車をかけると、多重介護は2030年に28万3,000人、2050年には43万人まで増えると推計されています。
将来的に多重介護がレアなケースでなくなってくることを考えると、国も介護者のための支援策にもっと力を入れていく必要があるのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定