ケアマネの給料アップが次の介護報酬改定の焦点に!でも月収48万円ないと「普通の生活」は送れない?
ケアマネ給与アップが2021年の介護報酬改定で実現か
ケアマネの処遇改善が議論の焦点に
厚生労働省は、2021年に行われる介護報酬改定に向け、社会保障審議会の部会で協議を続けてきた内容について、今年中にも報告書をまとめる方針です。
その中では、今まで数回にわたり処遇改善が行われた介護職員だけではなく、ケアマネージャーについても焦点が当てられ、その役割や処遇についても検討されることがわかりました。
報告書には、ケアマネージャーが効果的に自身の役割を果たしながらも、ケアマネジメントの質を高めることができる環境の整備を進めるという内容が明記される予定となっています。
また、ケアマネージャーに求められる役割の明確化や、事務負担の軽減などについても、同じく必要性が強調される見通しです。
これは、今月の19日に社会保障制度調査会・介護委員会がまとめた提言の中に、「ケアマネージャーの環境を整備するべき」とあることが背景になっています。
加えて、この提言ではケアマネージャーについて、公的資格である専門性に見合った処遇になることを要求。これが、今回の報告書でケアマネについて言及したことにも影響を与えていると考えられます。
今後、来年の夏から年末にかけて、このテーマに関する具体策の検討が進んでいくとみられています。
ケアマネ志願者がたった1年で6割超も激減した
今回、ケアマネージャーについての処遇改善に関する提言が行われたのことには理由があります。それは、本来、介護業界の人気職業のひとつであったはずのケアマネージャーの人気が、急激に落ちたことです。
2017年のケアマネ試験の受験者数は13万1,432人でしたが、昨年度は4万9,312人と一気に6割以上も減少しました。
こうした事態に陥った最も大きな理由は、受験資格の厳格化です。
以前はヘルパー2級や初任者研修を受けた人も、現場での実務経験を5年以上積むことで受験資格を得ることができました。

しかし、2018年からは「社会福祉士や介護福祉士の資格を取得してから5年」と受験資格を得ることが難しくなったのです。
さらに、ケアマネージャーの処遇改善が進まないことも理由のひとつと考えられます。
介護士の処遇改善がたびたび行われたのに対し、ケアマネージャーには手つかずであったことから、その給与の差がかなり埋まってきているのが現状です。
厚生労働省の調査によれば、2018年9月におけるケアマネージャーの平均基本給は21万7,690円。
同時点での介護職員の平均は18万1,220円となっており、給与面においては上回っていますが、需要増から年々業務の肥大化が進み報酬が見合っていないと判断する人が多くなってきています。
「報酬と業務量が見合っていない」との厳しい意見も
ケアマネ52%が給与等待遇の改善が必要と回答
実際、現役のケアマネージャーの中では、こうした給与をはじめとした待遇の問題を感じている人は少なくないといわれいます。
兵庫県の自治体が、ケアマネージャーを対象にしたアンケート調査結果を公表。
ケアマネージャーとして自身の事業者に望むことについてのアンケート調査では、「給与等待遇の改善を図る」という回答が52.2%。
「事務職員や介護支援専門員の増員」の39.1%や、「ケアプラン作成について助言」の30.4%をおさえて最多となりました。

2018年9月時点でのケアマネージャーの平均月給は、手当なども含め35万320円となっています。
これは、介護職員の30万970円に比較すると5万円近くも高くはなっているものの、2017年度の全産業平均月給が36.6万円であることを考えると、それよりも少ない額となります。
受験資格が厳格化されるなど、取得への難易度が高くなっているにもかかわらず、一般的な産業の水準に給与が追い付いていないとなれば、なり手が少なくなるのは当然です。
さらに、介護職員の待遇が上昇している状況の中では、資格を取ろうとする人が減ってしまうという流れができているのです。
ケアマネ1人で25人の利用者を担当し、残業時間は1日3時間以上に!
また、ケアマネージャーの仕事が激務とされていることも、担い手不足の状況を作り出している一因だとされています。
三菱総合研究所が公表した資料によれば、ひとつの事業所あたりの平均の利用者数は72.2人であるのに対して、常勤職員のケアマネージャーは平均2.8人しかいないということが判明。
厚生労働省が行ったケアマネージャーの状況に関する調査でも、3人以下の小規模事業所が全体の80.6%で、28.0%の事業所がケアマネージャーを1人しか配置していないとされています。
このことからも、ケアマネ1人あたり24~25人程度の利用者を担当しなければならない状況に、陥っているという事実がわかります。
さらに、今年追加された特定事業所加算をはじめとして、加算要件などが追加されることにより、書類業務や申請作業などの負担は、制度がスタートした当初よりもさらに大きいものとなっています。
こうした状況の中で、みんなの介護がに行ったアンケート調査では、ケアマネージャーの1日の残業時間について、3時間以上との回答が65.1%にのぼりました。
こうした激務が、ケアマネージャーを志す人々にとって、ハードルのひとつとなっていると指摘されています。
20年間、低賃金化が進行し続ける日本
家族と暮らす「普通の生活」には、月収48万円も必要に
12月5日に発表された京都総評の調査報告によれば、夫婦と子供2人という家族のモデルケースで、普通の生活をするためには、30代なら月48万6,900円が必要と試算されました。
さらに、40代の場合は54万9,800円、50代では70万7,500円が必要だとされています。
もちろん住む場所などでも必要な額は変動すると考えられますが、現在のケアマネージャーをはじめとした介護業界の給与水準は、試算金額を満たす基準にはありません。
この調査を監修した静岡県立大学の中沢淳教授は、この状況は非正規労働者の増加に従って賃金が低下した結果だと指摘。1990年代は、平均賃金が必要額にほぼ達していたものの、現在では大企業に勤務するなどの一部の人しか達成できていないと指摘しています。
また、日本の平均賃金自体が低下しているというのも問題です。経済協力開発機構が発表した統計によれば、1997年から2018年までの20年間で、日本は時間当たりの賃金が8.2%減少したことが明らかになりました。

アメリカやイギリスなどでは実質賃金が軒並み上昇しているなか、先進国の中で日本だけが10%もマイナスとなっています。介護業界の低賃金問題は、いまや日本の産業全体が陥っている低賃金化でもあります。これは早急に解決すべき日本社会の問題なのです。
加算対象にならなかったことにケアマネの53%が「納得できない」
今年の10月に行われた社会保障審議会・介護保険部会では、市町村などの地方自治体の代表として参加した香川県高松市の大西市長が、ケアマネージャーの処遇について言及。
さらに、日本介護福祉士会の石本会長も、ケアマネージャーの人材不足が深刻になったと見解を示すなど、ケアマネの現状に対する危機感を持つ有識者は増えています。
こうした状況のなか、政府は主任ケアマネージャーのみが事業所の管理者となれるという運営基準の厳格化について、20年度末の時点でその他の職員が管理者を担っている事業所に対しては、経過措置を延長することを発表。
さらに、介護福祉士の養成学校出身者について、国家試験の義務付ける変更に対しても、経過措置を延長することなどを発表するなど、ケアマネージャー不足に対策を打ち出しています。
しかし、民間のアンケート調査によれば、今年の10月から実施されている介護職員等特定処遇改善加算について、居宅のケアマネージャーが対象とならないことに「納得できない」という回答をしたケアマネージャーは53%と過半数を超えています。
現状の待遇や、たびたび待遇改善の対象外となったことについて不満を持つ人が多くいることが判明しています。
ケアマネージャーを資格取得に見合うだけの魅力を持った職業にするためにも、処遇改善を行うことは待ったなしの状況だと言えるでしょう。
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2020年9月7日 制定