急成長のeスポーツ!シルバーeスポーツ協会も登場
2022年には100億円規模の市場拡大
コンピューターゲームやビデオゲームなどの対戦型ゲームを競い合うeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)。高齢者のプレイヤーも増えるeスポーツの市場規模が近年、日本において急速に成長しつつあります。
ゲームメディア事業を展開するGzブレインの調査によると、国内eスポーツ市場は2017年時点では3億7,000万円でしたが、2018年は前年比約13倍増となる推計48億3,000万円まで拡大しました。
ほかの市場分野では類をみないほどの躍進を遂げているのです。
なぜこれほど一気に市場規模が拡大したのでしょうか。
その背景には、2018年2月に「日本eスポーツ連合(JeSU)」が発足し、プロライセンスが発行されるようになったこと、さらにマスコミがそのことを大々的に報道したことがあります。
その影響により、例えば各テレビ局はプロゲーマーを取り扱うeスポーツ関連番組を放送し、スポンサーシップから得られる収益が大幅に拡大しました。また、各種ゲームに課金するプレイヤーが増加したことも市場の成長につながっています。

Gzブレインによれば、2022年までは年間平均成長率は19%以上になるとし、その頃には市場規模は100億円近くになる見込みであるとのこと。
大手新聞社が主催する学生向けの選手権大会、ゲーム制作会社などが開催するリーグ大会なども次々と開催されており、eスポーツは今後さらに盛り上がりを見せていくと予想されます。
シルバーeスポーツ協会も発足
そうした中、最近では脳の活性化を図る健康スポーツとして、シニア世代にeスポーツへの参入を促す動きも出始めました。その先駆け的な存在となったのが埼玉県さいたま市に誕生した「さいたま市民シルバーeスポーツ協会」です。
さいたま市民シルバーeスポーツ協会は、「ゲーム=若者」の競技という既成概念を壊し、シルバー層に特化してeスポーツの普及振興を図る団体として2018年に発足されました。
eスポーツを高齢者の健康増進を図るための手段として捉え、130万人政令指定都市から全国に向けて新たなトレンドを発信する、というのが同協会の目的です。
シルバーeスポーツ大会の開催や市のセーフコミュニティ高齢者の安全対策委員会との提携、全国都道府県高齢者諸団体へのシルバーeスポーツ普及などを活動方針として掲げています。
今やeスポーツは世界的に普及が進みつつあり、将来的にオリンピック競技に採用されるのではないか、と見通しを立てる有識者も多いです。シニア層の中で趣味とする人が登場しても、何ら不思議ではないでしょう。
eスポーツと認知症予防の関係性
eスポーツは「脳トレ」になる?
eスポーツが高齢者の脳を活性化させることを示す研究は、近年数多く報告されるようになっています。
例えば東北大学野内教授らが行った研究では、ビデオゲームの「脳トレゲーム」を使った認知トレーニングが、高齢者の実行機能と処理速度を向上させることが明らかにされています。
ゲームで遊び、楽しむことが、高齢者の認知機能の維持・向上につながることが改めて証明されたのです。
さらにアメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校では、被験者である高齢者にカーレースのテレビゲームを4週間にわたって計12時間やってもらう、という検証実験が行われました。
ゲームのような複数の作業を同時に行う「マルチタスク能力」は、高齢になると衰えるのが通例です。しかし4週間の実験により、被験者の能力はゲームを一切しなかった20代よりも高く、マルチタスク能力は半年たっても維持されたままだったといいます。
このゲームは同大学の研究チームが特別に開発したものでしたが、この実験により、適切に設計されたゲームで訓練を行えば、加齢により衰えた認知能力を改善し得ることが示されたわけです。
社会的なつながりが多い高齢者は認知症リスクが減る
また、国立長寿医療研究センターなどの研究チームは、社会とのつながりのある高齢者ほど、認知症を発症するリスクが少ないことを明らかにしています。
同研究チームの調査によれば、高齢者のうち、
- 1.配偶者がいる
- 2.同居家族と支援のやりとりがある
- 3.友人との交流がある
- 4.地域のグループ活動に参加している
- 5.何らかの就労をしている
上記のいずれかに該当していると、認知症の発症リスクが低くなっていたとのこと。
具体的には、該当項目が0~1項目の人に比べて、5項目すべて当てはまる人は認知症の発症リスクが46%減少しており、4項目では35%、3項目でも25%が減少していたといいます。この研究により、高齢者は社会と多様にかかわることによって、認知症予防の効果が高まり得ることが分かったわけです。

eスポーツは競技であり、対戦相手とゲーム内容を競い合うのが基本です。人と交流しながら楽しむのが基本となるので、社会的なつながりを維持できるという点での効果は高いといえます。
つまり、eスポーツに取り組むことは「ゲームそのものによる脳の活性化」と「社会との関わりから得られる刺激」という2重の認知症予防効果が期待できるわけです。
eスポーツの内容理解は3割程度…高齢社会の活用に期待
市場は拡大するものの、認知度はまだまだ
上記のようなメリットが期待できるeスポーツですが、高齢者世代における認知度はまだまだ低いのが現状といえます。
eスポーツという言葉と内容の認知度について、NTTデータ経営研究所は昨年、年代別の調査を行いました。

現在50代以上である中高年世代は、若い頃にちょうどインベーダーゲームが流行った時代です。その意味で、ビデオゲームを体験したことのある人は、ある程度いるとは考えられます。
そうは言っても、「eスポーツ」という競技スポーツとしてのゲームについては、内容を知らない人が全体の7割近くいるのが現状なのです。今後、eスポーツがシニア層に普及していくには、周知活動をさらに押し進めていく必要があるでしょう。
日本企業も続々eスポーツ市場に参入
そんな中、日本を代表する大企業がeスポーツ分野への事業展開を次々と決めています。
例えばNTT東日本は、eスポーツを通じた地域活性化策推進の第一歩として、ゲームメーカーのカプコンが主催する「ストリートファイターリーグpowered by RAGE」のグランドファイナル大会に、ICT(情報通信技術)サプライヤーとして参画しました。同社が提供している「クラウドゲートウェイアプリパッケージ」により、安定的で低遅延の映像配信が実現されています。また、パソコンのマイクロプロセッサなどの製造を手掛けるインテルは、これまで「CS:GOリーグ」などeスポーツのプロリーグを支え、世界各国のeスポーツの発展をサポートしてきました。
今後も引き続き、eスポーツをけん引するテクノロジー・リーダーとして活動していくとの事業方針を固めています。
こうした巨大企業がeスポーツの拡大に貢献していけば、社会全体の認知度も自ずと高まっていくでしょう。先に挙げた「さいたま市民シルバーeスポーツ協会」のように、最近では高齢者の間でもeスポーツが取り組まれるようにもなってきました。認知症予防効果も期待できることから、今後は若い世代に加えてシニア層への普及もさらに進んでいくことが期待されます。
今回は市場が拡大しつつあるeスポーツに注目し、日本の超高齢社会とどのような関係を持ち得るかについて考察してきました。今後、高齢者の間でさらに普及が進むことで、認知症予防の新たな光が射すかもしれません。
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2020年9月7日 制定