最新の統計で「孤独死」の約7割が高齢者というデータが!男性高齢者は会話の頻度が低いことも原因か
孤独死した人の約71%が65歳以上の高齢者!
実態把握が困難だった「孤独死」の全容が大阪府警の調査で明らかに
今年1月、大阪府警の調査により、大阪府内で「孤独死」により亡くなった人の数が2019年の1年間で2,996人にも上ることが明らかになりました。
2019年の大阪府警検視調査課の調査では、病院で死亡するなどの「自然死」に該当しなかった1万2,309人について、遺体の状態や発見時の状況から事件性の有無を確認。そのうえで孤独死に当てはまると考えられるケースの合計を算定しました。
孤独死という言葉に対しては、法律上の定義や全国的なデータは現状ではまだありません。今回の調査では、孤独死は「事件性がなく、誰にも看取られることなく屋内で死亡し、死後2日以上経過してから発見されること」とされています。
孤独死した人のなかには、亡くなってから1ヵ月以上経過してから見つかったケースが382件もあったとのことも報告されています。
孤独死をした人の世代ごとの内訳をみると、最も多かったのが70代の34.3%(1,029人)、以下、60代の22.8%(684人)、80代の19.1%(572人)、50代の13.1%(392人)と続いています。
65歳以上の高齢者が全体の71%を占めるという結果となりました。

統計データがないことから、これまで実態把握が困難であった孤独死。しかし今回、大阪府警が都市部、郊外を含めた全域を一律の基準ではじめて調査したことによって、深刻化する実態がわかってきました。
20年あまりの間に独居老人は10倍まで増加
今回の調査では、孤独死をした人の7割以上を高齢者が占め、性別で見ると2,996人のうち男性が2,213人となり、女性の3倍近くに達していました。このことから、孤独死に直面しているのは、男性の高齢者に多いということが読み取れます。
では、なぜ男性の高齢者に孤独死が増えているのでしょうか。その大きな要因と考えられているのが、コミュニケーションの頻度です。
『平成30年高齢社会白書』によると、65歳以上で独居をしている人の数(全国)は、1980年当時は男性約19万人、女性約69万人でした。
ところが2015年には男性約192万人、女性約400万人まで増えています。
約35年間で男性が約10倍、女性が6倍も増加しているのです。
数値だけをみると、一人暮らしをしている人の数は男性よりも女性の方が倍以上も多くなっています。
しかし、男女間を比較した場合、女性よりも男性の方が地域の人たちとのコミュニケーションを苦手とする人が多く、老後に社会との接点を失う人が多いといわれています。
そのため、妻に先立たれてしまったら助けを求める相手を失い、社会的に孤立しやすいと指摘させています。男性の方が社会的孤立に陥る恐れが高く、それゆえに孤独死に陥る人が多い…というのが実情なのです。
孤独死の2割近くが40~50代という結果に
男性高齢者の約7人に1人が社会的に孤立
独居男性が社会的に孤立しやすいことを裏付けるデータも近年数多く報告されています。
例えば国立社会保障・人口問題研究所が2017年に実施した『生活と支え合いに関する調査』によると、「普段の会話の頻度が2週間に1回以下」と回答した人の割合が最も多かった世代は「高齢の独居男性」の約15%でした。

男性高齢者の約7人に1人が、2週間に1回以下の頻度しか会話していないのです。
さらに『平成30年高齢社会白書』によれば、夫婦のみ世帯や二世代世帯、三世代世帯では、9割以上の人が会話の頻度は「ほとんど毎日」となっていますが、単身世帯では54.3%にとどまっています。
そして単身世帯を男女別でみると、「ほとんど会話をしない」という人の割合は、女性単身世帯では2.2%でしたが、男性単身世帯では11.7%に上っていました。男性の方が9ポイント以上も高くなっているのです。
男性の高齢者で一人暮らしをしている人の場合、普段から人と会話すらしないというケースが多く、社会的に孤立している実情がこれらデータからも読み取れます。
身近に交流できる人がいないために、いざというときに助けを呼べる、頼れるという相手がおらず、結果として孤独死という事態を迎えてしまうのです。
40~50代でも孤独死?若年化する社会的孤立
しかし、孤独死の問題に直面しているのは高齢者だけではありません。冒頭で紹介した大阪府警の調査では、若い世代でも孤独死が多い実情が明らかにされています。
同調査では65歳未満で孤独死をしていた人も全体の29%(868人)いることが明らかにされており、このうち「働き盛り」とされる40代は159人、50代が392人と合わせて18.4%に上っていました。
全体の2割近くが40~50代であり、孤独死は高齢者の問題だけではなくなってきていることがわかります。
40~50代で孤独死が多いことの背景として、この世代における雇用の不安定さ、さらに生涯未婚率上昇による「ソロ化」を指摘する専門家・有識者は多いです。
現在の40代では、バブル崩壊後の就職氷河期の影響により新卒で正社員として就職できず、アルバイト・パートや派遣社員といった非正規雇用での就労を長年余儀なくされてきた人が多くいるとされています。
また、バブル期に採用された50代は、その後リストラの対象となって収入が激減したというケースが少なくありません。
さらに近年、日本人の生涯未婚率も上昇。国立社会保障・人口問題研究所が2015年の国勢調査をもとに算出したところ、生涯未婚率は女性で約7人に1人、男性だと約4人に1人に上っています。

中高年世代であっても社会的に孤立してしまうと、1人でいるときに体調面で急変がおきたとき、すぐに助けを呼ぶことは難しくなるでしょう。孤独死のリスクに直面しているのは高齢者だけではなく、中年世代においても同様のことがいえるわけです。
「孤独死」には全国的な統計データがない
では、こうした高齢世代、さらに中年世代における孤独死の増加に対して、国はどのような対策を講じているのでしょうか。
高齢者の社会的孤立への対策としては、既に10年以上前の2008年に、厚生労働省にて「高齢者が一人でも安心して暮らせるコミュニティづくり推進会議」が開催され、孤立死を予防できる地域社会づくりへの取り組みに向けた提言を行っています。
また、2011年には内閣府において「社会的包摂政策」が推進され、社会的孤立問題に対応する「一人ひとりを包摂する社会」特命チームを設置。高齢者の社会的孤立に関する問題をはじめ、国民の中に潜む社会的排除の解消に向けた取り組みを進めていました。
ほかにも2009年~2011年には、「地域福祉推進市町村」に指定された全国58市区町村に対して、「悲惨な孤立死、虐待などを1例も発生させない地域づくり」を目的とする安心生活創造事業をモデル的に実施しています。
しかしこうした政府の試みも政策が断続的なものにとどまり、実際には大きな防止効果を生みだしていないとの声もあります。
国には今後さらなる有効な孤独死対策が求められますが、現状ではそもそも全国的な統計データがありません。
厚生労働省は、「孤独かどうかは個人の内面の問題を含んでおり、孤独死をどのように定義するかが難しい」としています。
しかし、大阪府警がすでに大々的な調査を行っているように、一定の客観性を有した孤独死に関する実態調査は、国レベルでも実施できるのではないでしょうか。
今回は高齢者の孤独死の問題について考えてきました。今後、高齢化の進行により、孤独死問題はさらに深刻になっていくことが予想されます。国は孤独死に関する全国的な実態把握を急ぎ、早急の対策を打ち出していく必要があるでしょう。
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2020年9月7日 制定