アルコール依存症の高齢者がコロナ禍で急増!アルコール性認知症発症の危険性も
自粛生活でアルコール依存に拍車がかかった
高齢者のアルコール依存症患者は増加傾向
近年、アルコール依存症の高齢者が増えています。
久里浜医療センターの調査によれば、65歳以上のアルコール依存症患者は過去20年以上に渡って増加傾向にあります。
アルコール依存症患者の全体に占める高齢者の割合は、1990年代は10%未満でしたが、2011年には20%以上に達しました。

同様の結果は、久里浜医療センターだけでなく全国11ヵ所の専門病院におけるデータでも見られており、アルコール依存症患者の全体における高齢者の比率は約27%でした。
厚生労働省によると、2013年におけるアルコール依存症患者は約109万人で、その予備軍が980万人。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴って外出する機会が減り、高齢者のアルコール依存に拍車がかかっています。社会全体で注意喚起すべきと指摘する専門家も多く存在します。
家飲みの習慣化が依存症を招く
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく、社会全体で外出を控える動きが広まりました。
家族と同居している人であれば、出かけなくても人とコミュニケーションを取ることができます。ですが、1人暮らしの場合はそうはいきません。どうしても孤立感や孤独感を感じやすくなってしまいます。
現在、特に高齢の単身者が増えています。内閣府の『平成30年度高齢社会白書』によると、1人暮らしをしている65歳以上の人の割合は2015年時点で男性が約13%、女性が約21%に上っています。
単身高齢者が外出自粛中に社会的に孤立し、酒で寂しさをやわらげようとして飲酒量が増えてしまうケースが増えてきます。
また、高齢者は年金収入があるため、若い世代に比べて経済的に余裕があり、際限なく酒を購入してしまう人もいます。さらに、人の目が届かないと飲酒量が増えアルコール依存症になってしまうのケースもあります。
アルコール依存を断ち切るためには早期に相談を
飲酒量がコントロールできないアルコール依存症
そもそもアルコール依存症とは、「以前よりも飲酒量が大幅に増えた」「何をしていても酒のことが頭に浮かぶ」「酒がきれると手が震える」「朝から飲み続ける日もある」といった症状や依存行動のことを言います。
覚せい剤や麻薬、睡眠薬などと同様に、アルコールは「薬物」の一種です。飲量が不適切だと、以下のようなプロセスで依存症になります。
- 摂取を続けることによる「耐性」の形成
- 常に酒が欲しくなるという「精神依存」の症状が発生
- お酒がきれると手の震えや血圧上昇、不安、いらだち、発汗、不眠などが起こる身体依存の症状が発生
- 症状を抑えるために飲酒量が増え、アルコール依存症が発症
アルコール依存症は、早期に治療すれば治療効果が期待できる病気です。特に、「プレアルコホリズム」という、依存症になる前の段階で対策を取れれば心身に大きなダメージを与えずに回復すると言われています。
プレアルコホリズムとは、何らかのアルコール関連の問題を有することや、連続飲酒、離脱症状の経験がないことの3つの条件を満たす場合を示す概念です。
プレアルコホリズムの段階であれば、断酒や禁酒ではなく減酒で依存症を回避できることも多いです。
全国に設置されている専門機関
親族や知人に1人暮らしの高齢者がいて、アルコール依存症が疑われる場合は、最寄りの「保健所」や「精神保健福祉センター」に相談しましょう。
保健所は、アルコールや薬物、ギャンブルなど各種依存症の相談にも応じています。保健師や医師などの専門職員が相談に乗ってくれるので、具体的な解決策を提案してくれるでしょう。
精神保健福祉センターは、「こころの健康センター」などの名称でも呼ばれています。こちらも医師や看護師、精神保健福祉士、臨床心理技術者、作業療法士などの専門職員がアルコール依存症に関する相談に対応してくれます。
厚生労働省によると、2020年3月末、39の都道府県がアルコール依存症の相談拠点を設置し、28道府県が治療拠点機関、37道府県が専門医療機関を設置済みとのことです。

お住まいの都道府県にはどのような相談機関や治療拠点、専門医療機関があるのか、下記のサイトでチェックしてみてください。
大量飲酒はアルコール性認知症も招く
大量飲酒と認知症の関係
さらに、大量飲酒を続けることが、「アルコール性認知症」発症の要因にもなり得ます。
アルコール性認知症とは、飲酒が原因と考えられる認知症のことです。発症のメカニズムについてはいまだ不明点もありますが、飲酒量が増えるほど脳が委縮し、認知機能が低下するということが各種研究により明らかにされています。
実際、認知症を発症している高齢者で、「アルコール以外に認知症の原因がない」と考えられる人もいます。
調査によると、介護施設に入所している認知症患者の約30%が、大量飲酒が原因で認知症を発症したとされています。

また、5年以上大量飲酒を続けてきた高齢男性は、飲酒をしない男性よりも認知症を発症する危険性が4.6倍、うつ病の危険性が3.7倍高いという調査結果もあります。
ただし、少量の飲酒であれば認知症予防になるとの見方が広まりつつあります。どういうことなのか、続けて説明します。
減酒外来の利用も視野に入れる
近年、アルコール依存症を治療する方法として、「減酒外来」に注目が集まっています。
減酒外来とは、「酒の量を減らす」「健康に問題のない飲酒をする」といったことを含め、受診者ごとに多様なゴールを設定し、患者の酒との付き合い方を支援する外来のことです。
減酒外来を取り入れる医療機関は各地に現れ始めています。
いきなり断酒する自信がない人でも、「減酒」であれば達成しやすいでしょう。ハードルの低い目標を設けることで、潜在的なアルコール依存症患者対策の役割を果たすことが、減酒外来には期待されています。
今回は、高齢者のアルコール依存症の問題について考えてきました。
新型コロナの影響は多方面に表れていますが、高齢者のアルコール依存症の問題もその1つです。問題解決に向け、行政や医療分野における迅速な対応が望まれます。
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2020年9月7日 制定