厚労省がノーリフティングケアを行う事業所の評価を検討!腰痛が離職理由の1つに!?
厚労省、ノーリフティングケアを行う事業所の評価を検討
2021年4月の介護報酬改訂に向けて介護現場の腰痛予防が議題に
11月9日に開催された厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会において、来年4月の介護報酬改定で「ノーリフティングケア」に取り組む介護事業所への評価が検討されたことが明らかになりました。
今回検討されたノーリフティングケアへの評価は、腰痛を抱えることが多い介護職員の負担を減らす取り組みを行った事業所が対象。既存の加算の仕組みを活用しながら対象サービスや要件の調整が進められています。
「抱えない介護」を実践するノーリフティングケア
ノーリフティングケアとは、オーストラリア介護連盟が提言した腰痛の予防方法のこと。ヨーロッパをはじめとして、海外諸国ではすでに普及・定着しています。このノーリフティングケアは、以下の5つの動作を極力行わない介助の方法です。
- 押す
- 引く
- 持ち上げる
- 運ぶ
- 体をねじる
これらの動作を行わない代わりに、福祉用具を活用します。
福祉用具と聞くと「高額な機材が必要なのでは」と思われがちですが、スライディングボード(移乗に用いられる表面が滑りやすい板)などを活用すれば、低コストでも実施が可能です。
介護職員にかかる負担が大きく削減できることや、離職率の低下など、利用者・職員双方の満足度が高まることによる介護の質の向上が期待されています。
すでに青森県はノーリフティングケアの推進事業を実施しています。
同県の事業対象となった特別養護老人ホームでは、腰痛改善を目標として施設全体でノーリフティングケアの取り組みを開始。
すると、中度以上の腰痛を抱える職員が約半分になっただけでなく、普段の姿勢や自分自身の体のケアに気を遣うなど、介護職員の意識にも変化が見られたのです。

介護職の職業病「腰痛」
社会人1年目で腰痛になりやすい職業第1位は介護系
来年度の介護報酬改定でノーリフティングケアへの評価が検討された背景に腰痛に悩む介護職員が多いことが挙げられます。
腰痛施術に特化したある整体院が男女2,403人に対してアンケートを実施。社会人1年目で腰痛を発症した職業で最も割合が高かったのは、介護系の55.6%であったことがわかりました。

また、厚生労働省がまとめた『「社会福祉施設」における労働災害発生状況と労働災害による腰痛の発生状況(年間)』によると、介護施設や在宅サービスを含む社会福祉・介護事業における労働災害で腰痛が占める割合は高く、発生件数は年々増加しています。
そしてユーピーアール株式会社が介護の現場で働く人を対象に実施した腰痛に関する調査では、 46%が「腰痛が原因で離職を考えたことがある」と回答。腰痛そのものが、介護職員の離職原因になりかねないというわけです。
通わせない整体院じゅらく金沢院が社会人1年目の20~29歳の男女を対象に行ったアンケート調査によれば、腰痛が発生しやすい5つの要因
腰痛を予防することは、介護職員にとっては業務を続けるうえで重要です。
厚生労働省は予防対策として『社会福祉施設の労働災害防止』を取りまとめています。
この中では腰痛の4つの要因と、社会福祉施設で腰痛が発生・悪化・遷延化(せんえんか:長引くこと)する要因が挙げられています。
このことから、介護を含む福祉の仕事そのものが、腰痛を引き起こしやすい状況にあることがわかります。
動作要因
人力による抱え上げや重量物の取り扱いが主。長時間の不自然の姿勢なども該当する。
環境要因
作業空間や設備配置、勤務条件、床面の状態など。いずれも業務を行う環境の安全面が腰痛発生に影響している。
個人的要因
年齢や性別、体格、筋力などが該当する。男性より筋肉量の少ない女性は負担が大きくなる。
心理・社会的要因
職場への不満や職員同士のトラブル、長時間労働といったメンタルヘルスにかかわることなど。
社会福祉施設で腰痛を発生・悪化・遷延化させる具体的な要因
上記4つの要因に加えて、社会福祉施設では立ち作業や座り作業、重量物の取り扱い、介護・看護作業などを頻繁に行うため、腰痛の発生要因となる。また、「介護・看護等の対象となる人の要因」や「福祉用具の状況」「組織体制」なども要因の1つ。
腰痛要因を減らして早期の予防を
腰の痛みを長期化させるストレス
先に挙げた介護施設を含む社会福祉施設での腰痛の要因のうち4つは、各事業所が環境改善に取り組んだり、介護ロボットの導入によって解消が期待できます。しかし要因の1つ「心理・社会的要因」はの解消には不十分と言えるでしょう。
この心理・社会的要因は、主に「ストレス」のことを指します。
人間は、刺激を受けると脳が「痛み」として認識し、「ドーパミン」という神経伝達物質を放出します。
すると「セロトニン(ストレスに対して効能がある脳内物質)」などが脳へ伝わる痛みを遮断するため、痛みが感じにくくなるのです。
しかし、ストレスはドーパミンを放出しにくくする働きを持っています。
ドーパミンが放出されにくくなると、セロトニンなどの分泌量も減少するので、痛みを感じやすくなったり長引いてしまいます。つまり、ストレスを感じていることにより腰痛の痛みが強くなり、長期間腰痛に悩まされることもあるのです。
そんなストレスへの対策として実践したいのが、「アンガーマネジメント」。1970年代にアメリカで考えられたこの方法は、「怒り」を適切にコントロールすることで、自分の感情と向き合いながら気持ちを整理します。今回はその方法を4種類紹介します。
怒りを6秒間我慢する
怒りのピークは「6秒」だと言われています。
怒りを感じたら、その感情をすぐに爆発させるのではなく、まず6秒間やり過ごしましょう。
また、怒りは最長でも30分しか持続しないとも言われているので、30分間はほかのことに気持ちを向けたり、怒りの対象を避けてみてください。
「もし」で考えてみる
「もし○○なら怒らないのでは」と仮定で考えることで、「こんなことで怒っても仕方ない」「もっと心の広い人ならこんなことで怒らない」と思えるようになります。
上記の6秒間やり過ごすことに共通しますが、心に余裕がある人を思い浮かべてみるのも1つの方法です。
怒りを記録する
怒りのピークは持続時間を過ぎてもまだ怒りを感じるときは、その怒りを記録してみましょう。何に対して怒ったのかを分析してみることも大事です。
「○○すべき」という考えを捨てる
他人に対して「○○すべき」と考えてしまうと、自分の価値観に当てはまらない場合に怒りを感じてしまいます。自分の価値観にとらわれれず他人の言動などに対する許容範囲を拡げてみましょう。
社会福祉施設の従業員の4割以上が腰痛予防をしていない
腰痛が発生・悪化・遷延化する原因として、腰痛予防や腰痛に対する十分な対策が取られていないことが挙げられます。
宮城産業保健総合支援センターが公表している『社会福祉施設における腰痛予防対策に関する調査研究』によれば、社会福祉施設で働く職員のうち、腰痛持ちではない男性43.5%、女性47.3%が「腰痛予防を何もしていない」と回答しています。
腰痛リスクが高い職業であるにもかかわらず、発生を未然に防ぐ策が講じられていない現状を見直す必要があるでしょう。

また、既出の「通わせない整体院じゅらく金沢院」の調査では、腰痛になったときに対処方法を相談したり、調べたかをアンケート。
その結果、「特に誰にも相談していないし、調べてもいない」と回答した人が42.8%にものぼっています。
腰痛の対処方法についても、病院や接骨院などで専門的で治療を受けた人の割合は39.7%にとどまっており、腰痛になっても放置している人が多いことがわかりました。
腰痛は介護の現場で起こる可能性が高く、離職率にもかかわる症状です。腰痛を感じた場合は放置せずに職場や周囲の人に相談したり、腰痛の症状がない場合でも介護職員は特に腰痛予防対策を講じることが必要でしょう。
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2020年9月7日 制定