
医療・福祉分野の外国人労働者は4万人を突破!コロナ禍で失業した外国人の受け入れも進む
医療・介護分野が外国人労働者の活躍の場に
昨年の外国人労働者数は過去最多
1月29日、厚生労働省は2020年10月末時点における外国人労働者数が前年比4%増となる172万4,328人であったことを発表しました。これは外国人を雇用した際の届け出が義務化された2007年以降、過去最多の数字です。
労働者数を国籍別にみると、最も多いのはベトナムの44万3,998人。以下、中国の41万9,431人、フィリピンの18万4,750人と続いています。ベトナムが中国を抜いて最多となるのは初めてのことです。一方、ブラジルやペルーなどは前年比で減少しています。
産業別にみると、最も外国人労働者数が多いのは全体の28%を占める「製造業」(48万2,002人)。以下、「(宿泊・飲食・教育・学習支援・医療・福祉などに分類されない)サービス業」の16.1%(27万6,951人)、「卸売業・小売業」の13.5%(23万2,014人)などが続いています。
介護分野を含む「医療・福祉」の外国人労働者数は4万3,446人で、全体に占める割合は2.5%。「医療・福祉」分野で働く外国人は割合としては少ないものの、昨年の労働者数に比べて9,000人以上も増加。外国籍の労働者数が急速に増えつつある分野となっています。

高齢化が進む日本では、介護領域における人材が極度に不足しています。近年、介護施設では人手を補うために外国人労働者を雇用するケースが見受けられます。実際のところ、事業所レベルでは、どの程度外国人の雇用は進んでいるのでしょうか。データをひも解いて詳しくみていきましょう。
人材不足の介護分野で外国人労働者の活用が進む
介護労働安定センターの『介護労働実態調査(2019年実施)』によると、介護事業所(n=9,126)に人材不足感の有無を尋ねたところ、「大いに不足」「不足」「やや不足」のいずれかを回答した事業所は全体の65.3%。約7割の介護事業所が不足感を感じているわけです。
一方、外国人労働者を受け入れている事業所の割合は、全体の6.6%。介護事業所が感じている人材不足感を補えるほどの割合ではありませんが、昨年度の調査で2.6%であったことをふまえると、急速に活用が進んでいる状況だと言えます。
また、外国人労働者を受け入れている事業所に受け入れ方法を尋ねたところ(n=600・複数回答)、「技能実習生」が22.2%、「留学生」が22.2%、「在留資格「介護」」が21.5%、「EPA(経済連携協定による受け入れ)」が11.7%、「在留資格「特定技能1号」」が2.5%です。技能実習生、留学生、在留資格「介護」の割合が多くなっています。
外国人労働者の活用に関する評価については、実際に受け入れを進めている介護事業所では「労働力の確保ができる」「職場に活気が出る」といった好印象の回答が多くなっていました。一方、外国人労働者を受け入れていない事業所では「利用者などとの意思疎通に不安がある」「生活、習慣などの違いに戸惑いがある」などの回答が多数を占めています。
外国人労働者の就業がコロナ禍で困難に
外国人労働者の受け入れに影響
人手不足が続く介護業界ですが、昨年来から続く新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、介護現場では職員の採用が思うように進んでいません。
全国老人福祉施設協議会が行ったアンケート調査(2020年5月実施、介護分野の77法人を対象)によると、「コロナ禍の中で介護施設に職員の採用に変化があったか」との質問に対し、「厳しくなった」との回答は14%、「やや厳しくなった」との回答は12%を占めていました。26%もの施設が採用は難しくなったと感じているのです。
さらに外国籍介護人材の採用状況について尋ねたところ、受け入れが「中止になった」との回答が9%、「延期になった」が70%、「連絡がない」が3%となり、8割以上の法人で影響が出ていました。

コロナ禍で、海外から日本に来ること自体、困難なのが現状。予定通り外国人労働者を受け入れることは難しくなっているわけです。
他分野でも解雇が相次ぎ、支援が急務に
新型コロナ拡大が原因となり、業界を問わず外国人技能実習生が解雇される事態も生じています。
厚労省の調査によると、新型コロナの影響を受けて解雇された外国人技能実習生は、2020年9月25日時点で約3,700人。解雇された技能実習生は最大1年間、別の業種で働けるように国が特例措置を設けています。
しかし、外国人労働者の支援団体によると、実習生の受け入れを担っている「監理団体」が再就職支援を行わないために、生活費が得られず、行き場を失うケースが相次いで起こっています。
2020年11月には支援団体のメンバー約30人が、解雇された実習生の再就職・生活状況の実態調査を行うこと、実習生をサポートすべき「監理団体」の責任を明確化することなどを厚労省に要請しました。監理団体側としては、外国人実習生を十分にサポートしたくても、コロナ禍のために難しいという状況もあるでしょう。再就職を問題なく行えるように、国や政府には適切な制度的対応が求められます。
失業した外国人実習生を介護業界で受け入れへ
特例措置として「特定活動」への在留資格変更が可能に
2020年4月20日から、コロナ禍により就労が困難になった外国人技能実習生に対して、最大1年間の「特定活動(就労可)」の在留資格が認められるようになりました。
技能実習生とは本来、特定の分野における技能を身につけるために日本の企業などで就労を認める制度です。しかし新型コロナ拡大の影響によって、その継続が困難になるケースが多発。あるいは、実習を終えて間もなく帰国という段階で新型コロナが蔓延し、退職後に母国に戻れないという事態も起こっています。
こうした問題に対応する目的で政府が設けたのが、「特定活動(就労可)」という在留資格です。この在留資格が認められれば、それまで勤務していた場所で働けなくなっても、再就職という形で別の業界・職種で技能を身につけることができます。
「特定活動(就労可)」の在留資格を得るには、技能実習生本人が新たな業務に必要な技能を身につけることを希望していること、受け入れ機関が業務に必要な技能を身に付けられるように指導・支援(日常生活支援も含めて)することなど、複数の要件を満たすことが必要です。
約7割の介護事業所が特定技能の外国人の受け入れに好意的
就労先を失った外国人労働者・技能実習生が「特定活動(就労可)」の在留資格で再就職するには、まずは受け入れ機関(法人)を見つけなければなりません。先述の通り、本来であれば「監理機関」のサポートを受けてスムーズに再就職を実現すべきですが、コロナ禍の影響もあってそれがうまくいかず、支援団体から抗議の声が上がっているのが現状です。
そうした中、再就職の受け入れ先として注目を集めているのが「介護業界」。全国各地の介護施設・事業所では深刻な人材不足が生じているため、外国人の働き手を歓迎する傾向が見受けられます。
例えば、大分県が県内の介護事業所を対象に行った調査(n=374)では、ベトナムからの「特定技能」介護人材の受け入れを「希望する」または「したい気持ちはある」との回答割合は、約半数の48%に上っていました。しかも、受け入れに前向きな回答した介護事業所のうち、72%が3年以内の受け入れを希望しています。

受け入れをしたくないと回答した介護事業所にその理由を尋ねると、「受け入れ体制が準備できない」(37%)、「コスト面での不安」(21%)といった回答が多く見受けられました。行政の支援などでこれらの課題が解消に向かえば、受け入れに前向きな事業所はさらに増えるでしょう。
今回は介護業界における外国人労働者について考えてきました。コロナ禍で職を失った外国人労働者の再就職先として、人手不足の介護業界は十分に受け皿となり得る職場です。スムーズに再就職できるよう、国によるさらなるサポートが望まれます。
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2020年9月7日 制定