皆さんは介護施設の介護士と看護師は仲が悪いと聞いたり、または思ったりしたことはありませんないですか? 私は施設で働いてみて「仲が悪くて働きにく難い」と感じたことがあります。仲が悪いと仕事にも影響が出てしまいますよね。 現役介護士の夫の意見も聞きながら「介護士と看護師のすれ違い」をテーマに、若手介護士または施設に就職を希望される看護師の皆さんの役に立つような記事をお届けしていければと思います。

更新

事故発生

発見してしまいました


「事故報告書」と聞いてあまりいいイメージはないと思います。しかしどの職種・職場でも付きまとう書類です。当事者となった時には気分がダダ下がりです。もちろん私も病院勤務時代に書いたことがあります。「ヒヤリハット」「事故報告書」聞いただけでため息が出ます。

では今回も特養に勤めていた時のお話です。

ある日ふと、「そういえば、この施設で事故報告書の用紙って見てないなぁ」と思いました。

はい、ここでフラグが立ちました。

 

その日の午後、フロアから「薬を発見してしまいました。」との連絡が入りました。

薬を発見?どういう事?

意味が分からずフロアへ向かい詳しい状況を聞きに行きました。

 

フロアではパートのヘルパーが「これが床に落ちていたんです。」と白い錠剤を1錠渡してきました。昼食後に食堂の床を掃除していたら発見したとのこと。

この時点ではどの利用者がいつ内服している何の薬なのか、一切分かりません…。

捜索案件です。

詳細が分からないと医師への報告や、その後の対応指示が貰えません。

私はひとまず発見現場の確認をすることにしました。

名探偵捜索開始

 

フロアの食堂では利用者の食席は決まっています。発見現場は、食堂中央の6人掛けテーブルの下でした。錠剤に記載されている番号から薬を調べ、そのテーブルを使用していた6人の中に該当者がいるか調べました。作業を行っているとヘルパーが「そこまでしなくちゃいけないの? 薬を見つけてしまったばっかりに手間掛けちゃってごめんなさいね。」と言ってきました。

「必要なことだから大丈夫ですよ。大切な薬ですから。でも事故報告書は書いて下さいね。」と事故報告書の依頼をすると、パートのヘルパーが事故を起こした場合は、常勤のリーダーが記入することになっているのだとか。

リーダー介護士へ報告し事故報告書を作成してもらうように依頼しました。

認識の違い

 
薬と該当者を調べた結果、6人中の1人が朝に服用している降圧剤であるということがわかりました。降圧剤を服用している方は沢山いらっしゃいますが発見された薬剤を使用しているのは運よく1人だけでした。


医師に状況を報告しました。血圧を昼・夕・明朝に測定し上昇がなければ経過観察、異常があれば医師へ報告をと指示がありました。

リーダー介護士へ医師指示を報告すると「事故報告書は忙しくて書けてないよ。あの利用者は最近薬を落とすことが多くなってたんだよね。」と返答がありました。


「今までも落としていたんですね。ヒヤリハットが上がっていたのでは?」と私が問うと「忙しくていちいち書いてられないよ。例えば、下剤程度だったら書かなくてもいいでしょ」と介護士は作業を続けながら答え、居室へと入って行ってしまいました。

 

業務は忙しいかもしれないが、事故報告書記入も業務だぞ。事故が起きないことに越したことはないが。

それに下剤だって必要があって医師が処方した薬です

事故報告書の目的


実際の現場で働いている方々には耳が痛い事ではありますが、事故報告書は重要な書類です。事故に至る前にヒヤリハットがあります。その言葉の通り「ヒヤッと」「ハッと」したことを書類として報告し、職員で周知することによって事故に至らないよう予防するために書きます。
 

報告書を書く上で「誰がやった」ということは問題ではありません。誰でも起こりうることなので犯人捜しをする必要はありません。起きた内容が重要です。沢山のヒヤリハットを挙げることによって事故を防ぐことが出来ます。

ただし、個人的に知識や技術不足によって起きてしまった事柄については指導が必要となるため当事者の確定をしなければならないと思います。

豆知識  事故が起きた時の対応

介護の現場で事故が起きた場合、ご家族や医師への報告、病院への連携など行うことは沢山あります。

さらに死亡事故や医師の診断を受けて治療が必要となった場合、事業所が所在する区や市町村の保健福祉センターへ速やかに報告しなければなりません。第一報は事故発生から5日以内に行います。

現場で業務に追われて記録作業が後回しになりがちな状況だと、突発的に起こる事故に対しての事故報告書も後回しになりがちです。
 

施設では、毎月リスクマネジメント委員会を開いています。

事故報告書とヒヤリハットの統計を取り、第三者から見た事故内容や対策にたいして再検討を行い、議事録を作成し職員に周知しています。

また、内部研修ではKYT(危険予知トレーニング:職場や作業場面に潜む危険要因(問題点)とそれが引き起こす現象(事故等)を職員で話し合い、そういった場面が発生する前に解決する訓練)をおこないます。

 

 

委員会に出席しました


私はリスクマネジメント委員会に出席するようになりました。今まで看護師は人員が少なかったり委員会時に処置が重なったりで出席はまちまちでした。はじめは介護士同士の話し合いや報告を聞いていましたが、この委員会に看護師が出席する意味・役割とは何だろうと考えました。
 

看護師が記入する事故報告書の記入項目に「受診の有無」があります。医療の介入が必要か、医師へ報告が必要か、必要であればそれは何故か、その後の経過・対応はどうなるのか等を記入します。委員会で挙げられている事故報告書の「受診の有無」欄をもっと深く解説したり、受診が必要なかったケースでも「もしも医療介入になった場合」のリスク等を伝えたりしました。

そうすることで危機感が高まり介護士同士の意見交換や、看護師への質問が活発になりました。

医療介入事故の内容で多いのは、転倒・転落や誤薬・落薬です。介護士から「もしもこうなったら、どうなるの」と色々なケースでの質問があり、その中には「下剤だったら書かなくてもいいでしょう?」もありました。必要だから服薬しているのであって「○○の薬だったら書かなくても良い」なんて薬はないことを説明しました。

委員会に出席する事によって事故予防に対して介護士がどのように対処・工夫をおこなっているのかを知ることもできました。

介護士(夫)からの意見


事故が起こると忙しい業務がさらに大変になる。利用者のその後も気になるし、再度起きないように対策も練らないといけない。事故報告書の必要性は理解している。しかし現実は「書かないといけないよなぁ」と苦痛な面も正直あるよ。

職場では事故報告書よりヒヤリハットが少ない。本来はヒヤリハットが何倍も多く挙げられるはずなのに。ヒヤリハットが挙がって来ないのと事故報告書が多いのは、その施設自体での取り組み方や考え方から変えていかないと難しいと思う。

まとめ

事故報告書の運用フロー改善


私のいた施設では事故報告書を書く負担を減らすことは出来ないか? とリスクマネジメント委員会で話し合い、書式の変更を検討するようにしました。

大きな問題点として、文章を書く時間が取りづらいと言う意見がありました。対策として、まずは選択式でレ点チェック形式にしてみました。

結果、項目の選択に迷いがあり「その他」にチェックしてしまうケースが多く本採用には至りませんでした。
 

簡易的なメモ形式で提出して、あとから詳しく書くという方法も導入してみましたが、二度手間だと苦情があがり却下となりました。

書式を変更するのは難しいことが分かり、結局は業務中に事故報告書を書く時間を確保することになりました。

報告書を書く職員の業務を他の職員が分担し、記入を優先して行う方法です。

人手が足りない中で行うのはなかなか大変ですが、職員がお互いに協力し合うことで事故への認識も高まったように思います。

委員会からの通達で介護士だけではなく、看護師も協力し事故報告書の運用方法の改善を周知したことで、以前より他職種連携が取れるようになり、今まではなかったやり取りが聞こえてくる職場へと変化している! と感じたことを覚えています。

委員会を中心に事故報告書に取り組みやすく活動した結果、介護士と看護師が事故防止について話し合い協力するケースが増えて、お互いの距離が少し近づけたように思いました 。