排泄で一番大事なことは“出す”こと

排泄で一番大事なことは“どこでするか”じゃないんです。

“出す”ことなんですよ。

だから皆さんが子どもの頃、おしっこをするときにお父ちゃんお母ちゃんは手間暇かかっても喜んでいた。

逆に、出なくなったら大騒ぎ。

そうだったでしょ?

だからね、皆さんの身内が認知症になって、部屋の中や押し入れや廊下でおしっこをするようになっても、まずは「おしっこ出て良かったね!」って思ってやってくださいよ。

優先順位のナンバーワンは「おしっこは出す」なんで。

木曜和田劇場第21回のキャプチャー1

まずは「出て良かったなお父ちゃん!」と喜んで、その後に「後片付けめんどくさいけど」と思う。これで良いと思うんです。

この優先順位を絶対に忘れないでいただきたいんですよ。

優先順位がわかっていれば、認知症の方へのかかわり方が変わる

例えばご飯。

生まれてすぐのときは口に放り込まれるだけですが、やがて皆さんは月齢が上がっていくとともに、手を使って食べるようになります。

さらに月齢が上がっていくと、道具を使いこなして口に運ぶようになる。

今の皆さんはその能力があるから、道具を使いこなしてご飯を食べています。

でも、脳が病気になってその能力が下がったら、道具の使い方がわかんなくなるかもしれない。手でつかんで食べるようになるかもしれない。

だから、認知症の方がどんな食べ方をしても「食べられて良かったね」って思ってやってくださいよ。

人間にとって大事なことは、どんな道具で食べるかではありません。

栄養を取り込むことです。

木曜和田劇場第21回のキャプチャー2

皆さんが認知症の方のご家族になったりお友達になったりしたときに、そのことがわかっているかどうかで随分違ってきます。

東京都葛飾区のとある飲み屋のマスターが認知症になったお話をしましょう。

その方は注文は受け取れるんですが、誰が頼んだのか覚えられなくて、持って行く先がわからないそうなんですよ。

客はみんなそのことを知ってまして、客の方から「おーい!その秋刀魚(さんま)こっち」って呼んでくれるんですって。

全然今でも“マスター”です。

素敵ですよね。

日本の社会全体がそんなふうになれば、脳が病気になって、生活に支障が出るような状態になっても暮らしていけると思います。

ぜひ皆さんの力で、そんな社会にしていただきたいです。