介護職志望者に対して補助が充実。育児中の方への支援も!
青森県は2016年3月、福祉・介護分野の人材定着に向けて行政や福祉・介護事業者、介護人材の養成施設などが一体的に取り組むために「青森県福祉・介護人材確保定着グランドデザイン」を策定しました。
この取り組みのなかで介護職に対する支援事業も行われており、「青森県福祉・介護人材確保対策事業」として、介護福祉士養成施設や施設等の団体、介護福祉士または社会福祉士の職能団体、さらには青森県社会福祉協議会を対象に、経費の補助を行う事業を実施。
対象となったのは、以下の事業です。
- 福祉・介護人材参入促進事業・・・小学~大学生、あるいは高齢者や主婦といった一般の方を対象にして、福祉・介護の仕事に関する魅力や大切さを伝えるセミナーや介護体験などを行い、人材参入の促進を図る事業
- 潜在的有資格者等再就業促進事業・・・資格を持ちながら、福祉や介護の分野で働いていない人などを対象に、知識や技術を再確認できる研修や、職場体験などを行い、最終行を促す事業
- 福祉・介護人材キャリアパス支援事業・・・介護施設などにおいて、キャリアパスやスキルアップを促すための研修を実施するといった人材の定着を図るための事業
また、過去に介護職として働いた経験を持つ方を対象に、再就職準備金を支給する「離職介護人材再就職準備資金」という事業も行っています。
これは、青森県に住民登録をしていて、以下の条件をすべて満たす方を対象に、最大で20万円の貸付を行う事業です。
- 以前に介護職員として介護施設で1年以上勤務経験のある方
- 離職した直近の日から3ヵ月以上経過している方
- 介護福祉士、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護職員基礎研修、ホームヘルパー1~2級のいずれかの資格を持っている方
貸付を受けた後、青森県内で介護職として2年間就労すれば、返還はすべて免除されます。
それから、介護職員が子育てと仕事を両立しやすいように「介護職員育児支援事業費補助事業」も実施されています。
これは、介護施設・事業所で働く子育て中の介護職員が、育児支援サービスなどを利用した際に発生する費用に対して補助を行う事業です。
子育てをしながらでも働き続けられる環境を整備し、介護人材の定着を図るために導入されました。
青森県在住で、育児と仕事を両立している介護職の方は、ぜひ活用したい制度ですね。
求人倍率は全国平均に比べて低いものの、やはり人材不足
※福祉人材センター・バンク「令和4年度 福祉分野の求人求職動向」、厚生労働省「一般職業紹介状況」を元に作成
※統計ごとに母数は異なる
青森県では介護人材が不足している状況が続いています。
福祉人材センター・バンク によると、2022年の青森県内の有効求人倍率は、全産業平均が1.18倍であるのに対して、 福祉職では2.91倍となっていました。
建設、製造、運輸・郵便、卸・小売、サービス業、宿泊業・飲食サービス業などの産業と比べても、突出して高くなっています。
また青森県が公表している「福祉・介護人材確保定着グランドデザイン」の資料によると、2011年(平成23年)時点における青森県の福祉関連職の有効求人倍率は1.06倍でしたが、3年後の2014年には1.70倍まで増加。
福祉分野の人手不足が、近年急速に進んでいる状況が読み取れます。
ただ、同時期における全国平均は、2011年では1.86倍、2014年では2.35倍ですので、全国の福祉関連職の不足感よりもやや軽度です。
さらに公益財団法人介護労働安定センター青森支部の「令和4年度介護労働実態調査(青森県)」によると、県内で介護サービスを実施する83施設のうち、従業員の不足感を感じている施設の割合は56.6%(「大いに不足」は10.8%、「不足」は18.1%、「やや不足」は27.7%)と過半数を超えました。
ただ、全国平均値だと不足感を感じている施設の割合は66.3%に上っていることから、県内の施設の人材不足感は、全国的にみるとやや少なくなっています。
また、経営上の問題としても「良質な人材の確保が難しい」(73.1%)との回答が最多となっていました。
就労者を増やしたいと望んでも、人材を巡る競争が激化しているため、思うように雇用できないのが現状なのです。
なお、同調査によると、青森県における介護職員・訪問介護員の離職率(1年間)は10.3%となり、全国平均の16.0%よりは少ないものの、従業員の1割強が離職している現状を考えると人材の定着率は高いとは言えません。
全体的にみると、青森県の福祉分野における有効求人倍率は高いのは間違いありませんが、全国平均よりもやや低いです。
また、不足感などのデータをみても、他県に比べると人材不足の深刻さは若干軽度だと言えます。
ただ、あくまで程度の問題であり、「介護人材が足りない」と悩んでいる介護施設・事業所が多いのは間違いありません。
2022年の高齢化率は34.8%!高齢化が急速に進みつつあり、最も高い今別町は52.2%
出典:「統計ダッシュボード」(総務省)、「青森県長期人口ビジョン(2020 年改定版)」(青森県)
青森県の総人口は年々減り続けています。
2005年では143万6,657人でしたが、2015年では130万8,265人、2022年では120万4,000人と推移しました。
現在、県の人口は出生者数から死亡者数を引いた値である「自然増減」、転入者から転出者数を引いた値である「社会増減」ともに毎年マイナスの状況が続いており、今後もこの傾向は続く見込みです。
2017年から2018年にかけては、自然増減数がマイナス9,946人、社会増減数ではマイナス5,820人、合計で1万5,766人の減少となりました。
そんななか、高齢者人口は年々増加。
65歳以上の人口数は、2005年時点では32万6,562人、2015年では39万940人、2022年では41万9,000人と40万人を突破しました。
総人口数が減るなかで高齢者人口が増えているわけですから、総人口に占める高齢者人口の割合=高齢化率は年々上昇しています。
2005年では22.73%、2015年には29.88%、2020年には33.36%と30%の大台に乗り、2022年には34.8%となっています。
同時期における全国平均値は2005年が20.2%、2015年が26.6%、2020年が28.9%ですから、全国平均よりも2~5ポイントほど高い数値で推移しているわけです。
全国的にみても、高齢化が進んでいる県だと言えるでしょう。
また、青森県では現在、出産適齢期(20~39歳)の女性人口が減少していることから、今後も少子化はより進展すると予想されています。
そのなかで団塊世代を始めとする高齢者人口が増えていくわけですから、超高齢社会の進展は避けられない状況と言えるでしょう。