福岡県は介護職志望者への支援が充実。介護福祉士養成施設を毎月最大5万円貸し付けも
福岡県には、県内在住で介護福祉士を目指している人や、介護職として働いた経験があって再就職を望んでいる方に対する支援制度が充実。
いずれも貸付制度ですが、条件を満たせば返済は全額免除されます。
複数ある制度のなかから、まずは「介護福祉士修学資金貸付制度」をみていきましょう。
介護福祉士養成施設に在学中の方を対象とする貸付制度で、貸付額は毎月の資金として5万円以内、入学準備金が20万円以内(初回の送金時)、就職準備金が20万円以内(最終の送金時)、試験対策の費用が4万円以内(1年度あたり)です。
また、送金されるのは6月、9月、12月そして3月の年に4回で、貸付対象となるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 福岡県に住んでいる(県外居住者であっても、県内の養成施設等に通学していれば対象)
- 厚生労働省が指定する養成施設(県内の施設および県外の養成施設通信課程でも可)に通学している
- 修学のうえで、経済的な援助が必要
- 養成施設長が推薦している
- 養成施設を卒業したら、福岡県内で介護職に就く
養成施設を卒業してから1年以内に介護福祉士の登録をして、福岡県内で5年間介護業務に従事すれば、貸付を受けたお金の返済は不要です。
申請は各養成施設を通して行います。
次に、介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度を解説します。
これは介護福祉士資格の取得を目指して実務者研修を受講している方を対象とする制度で、貸付額は20万円以内(1回のみ)です。
貸付を受けるには以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 福岡県に住民登録をしている、もしくはしていた
- 厚生労働省が指定する実務者研修施設(県内の施設および県外の養成施設通信課程でも可)に通学している
- 修学のうえで、経済的な援助が必要
- 施設長が推薦している
- 卒業後は福岡県内で介護職に就く
この制度も研修の修了日から1年以内に介護福祉士の登録をし、福岡県内で2年間介護業務に従事すれば返済は不要です。
最後に、再就職準備金貸付を確認しましょう。
2016年12月から行われているこの制度は、福岡県内で以前介護職員として勤務した方を対象に、再就職を行う際の準備資金を貸し付けるというもの。
貸付対象となるのは、以下の条件をすべて満たしている方です。
- 介護職としての実務経験が1年以上ある
- 介護福祉士、介護福祉士実務者研修の修了者、介護職員初任者研修または介護職員基礎研修の修了者、ホームヘルパー1級または2級の修了者、のいずれかの条件を満たす
- また、離職した日から再就職の日まで3ヵ月以上経過している
- 県内に所在する事業所または施設に介護職員等として週20時間以上勤務する方
貸付金額は 40万円以内(1回のみ)で、再就職後に2年間介護業務に従事することで返済が免除となります。
福岡県介護人材の有効求人倍率は全国トップの数値、13倍超え
※福祉人材センター・バンク「令和4年度 福祉分野の求人求職動向」、厚生労働省「一般職業紹介状況」を元に作成
※統計ごとに母数は異なる
厚生労働省の福岡労働局によれば、福岡県の全産業の有効求人倍率(2023年11月)は1.11倍。
一方で、福祉人材センター・バンクなどによると、県内の介護関係の職種における有効求人倍率は13.02倍(2022年)で、全産業平均に比べると10倍以上の高い数値で推移しています。
同時期の全国平均は4.23倍で、福岡県が全国で最も高い数値となりました。
同じ大都市である東京都が2.84倍、愛知県が3.93倍、大阪府が4.81倍であることを考えると、福岡の介護人材の不足は深刻的な状況と言えるでしょう。
一方で、公益財団法人介護労働安定センターの福岡支部が公表している「令和4年度介護労働実態調査結果」によると、福岡県内の介護施設・事業所に従業員の過不足について、「不足感」を感じている施設・事業所の割合は65.9%でした。
同じ質問に対する全国平均66.3%と比較すると、同じくらいの値です。
また、「適当」だと感じている施設・事業所の割合は、全国平均が33.3%であったのに対して、福岡県は34.0%と若干ではありますが、高い数値となりました。
福岡県は西日本でも屈指の人口集中地域で、介護関連職の有効求人倍率は高い状況ですが介護人材の不足度は全国平均並みであると言えるでしょう。
ただし、これはあくまでほかの都道府県と比較した場合にいえることで、実際には6割を超える介護施設・事業所が不足感を感じているのは事実。
つまり、過半数の施設で人手が足りないと感じている状況が続いているのです。
今後県としては、この状況に対して介護職員の職場定着率を高めること、スキルアップ・資格取得を目指そうとする職員をサポートする体制を充実させることなどに力を入れていく必要があるでしょう。
福岡県にも高齢化の波が押し寄せ、介護職員の充当は喫緊の課題となっている
出典:「統計ダッシュボード」(総務省)
「日本の地域別将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)
福岡県の人口は2020年時点で513万5,214人。
大都市であるため近隣の都道府県から若い世代が転入してくることが多く、高度成長期以降、人口も少しずつ増えてきました。
しかし、今後は人口減に転じる見込みで、2030年には495万5,000人、 2040年には484万1,000人と、現在よりも30万人以上も減少する見込みです。
高齢者人口の推移をみると、2010年時点では110万4,997人でしたが、2015年には127万6,259人、2020年には139万5,142人と急速に増え続けています。
その要因は、第一次ベビーブーム(1947~49)の頃に生まれた「団塊の世代」が2015年に65歳以上になったことです。
65歳~74歳の前期高齢者の年代はまだ元気な方は多いですが、75歳以上になると加齢による衰えが目立ち始め、要介護状態になる人の割合が一気に高まります。
団塊の世代が75歳以上を迎える2025年以降、医療・年金・介護などの社会保障費が急増することが懸念されていますが、福岡県もその影響を強く受けることになりそうです。
最後に、福岡県の高齢化率をみてみましょう。
2010年時点では21.8%、2015年で25.0%、 2020年では27.2%と推移しています。
同時期の全国平均は、2010年が23.0%、2015年が26.4%、2020年が28.8%なので、それに比べると福岡県の高齢化率は低めです。
ただし、上昇率は高く、2010年から2020年までの10年間で5ポイント以上も上昇しています。
市区町村別の高齢化率をみると、2023年10f月時点の県内で最も高齢化が進んでいるのは「東峰村」(47.37%)です。
以下「添田町」(39.6%)、「香春町」(38.2%)、「小竹町」(38.2%)、「みやこ町」(37.5%)と続いています。
一方、高齢化率が最も低いのは「新宮町」(16.8)%。
以下「粕屋町」(17.4%)、「春日市」(20.4%)、「大野城市」(20.5%)、「福岡市」(20.9%)となっています。
このように、高齢化が進んでいる自治体と若い世代の多い自治体との差が大きいのが福岡県の特徴と言えるでしょう。
高齢化率の高い自治体も多い福岡県ですが、高齢者保健福祉計画を更新し続け、進展する高齢化に備えています。
高齢者が社会の一員として活躍できる社会づくりを目指して、70歳現役社会づくり、安心して住み続けられる地域づくり、さらには医療・介護サービスの確保などがその一例です。