福祉人材センター主導の支援が充実
北海道では、北海道社会福祉協議会が運営する福祉人材センターにおいて、介護現場で働きたい人を対象とする求職者登録の受付、さらに求人情報の提供を行っています。
同センターは札幌市をはじめ、函館市、釧路市、北見市、帯広市、苫小牧市、旭川市の社会福祉協議会にも運営業務を委託しているので、最寄りの場所で登録し、情報収集を行いましょう。
また、北海道では介護職として働きたい人、既に介護職として働いている人を対象に、さまざまな支援を行っています。
そのひとつが介護分野での就職希望者を対象とする「介護技能習得支援事業」です。
これは、北海道福祉人材センターの「福祉人材バンク」で求職者登録を行えば、テキスト代以外の初任者研修の受講料について2分の1以内、最大4万5,000円の減免を受けることができるというもの。
ただ、これから介護職として働きたい方を対象とする事業ですので、既に介護施設・事業所で就業中の方は対象外です。
実際に減免を受けるには対象の指定研修事業者で受講する必要があり、事業者ごとに受講料の減免対象者数に上限があるほか、受講料の減免額も異なっているので、受講の際は事前に確認しておきましょう(2024年度以降の実施については、北海道保健福祉部福祉局に要確認)。
さらに、介護福祉士の資格取得を目指して実務者研修養成施設で学んでいる方を対象に、「介護福祉士実務者研修受講資金貸付事業」が2015年度から行われています。
これは、実務者研修養成施設の授業料や各種実習費、教材費のほか、参考図書や学用品、さらには交通費や試験の受験手数料などの経費に対して、最大で20万円の貸付を行う事業です。
ただし「貸付」といっても、「実務者研修養成施設の卒業日から1年以内に介護福祉士に登録し、北海道内の社会福祉施設などで2年以上の介護業務に従事した場合」(卒業日に介護職としての業務経験が3年に達していないときは、3年に達した日)に、貸付金の返還は免除されます。
貸付の対象者は、北海道内にある実務者研修養成施設で学習しており、住民登録を道内の市町村でしている方で、卒業後に道内の指定施設で介護職として勤務することを予定している方です。
しかし、実務者研修養成施設を退学した場合や、卒業後1年以内に介護福祉士としての登録を行っておらず、道内で介護職として勤務していないといった場合だと、返還の義務が発生します。
既に介護人材の不足は深刻化しており外国人人材の活用も急増中
※「令和4年度 福祉分野の求人求職動向」(福祉人材センター・バンク)、「一般職業紹介状況」(厚生労働省)を元に作成
※統計ごとに母数は異なる
第8期「北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画」「道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画」によれば、2020年度における道内の介護職員数は約9万9,000人ですが、1946~49年生まれの「団塊世代」が後期高齢者(75歳以上)となる 2025年度には約11万3,000人が必要になるとのこと。
今後2年間ほどのうちに約1万4,000人の介護職を確保することが求められます。
北海道内各地で既に人材不足は深刻化しています。
例えばハローワーク旭川(2023年9月期)の、パートを除く常勤者の求人・求職情報を見てみましょう。
「保育士、福祉相談員等」の月間有効求人数は255人(新規求人数は91人)なのに対して、月間有効求職者数は99人(新規求職申込件数は19人)にとどまっており、有効求人倍率は2.58倍に上っています。
さらに「ホームヘルパー・ケアワーカー」では、月間有効求人数486人(新規求人数は160人)である一方、月間有効求職者数は149人(新規求職申込件数は27人)のみで、有効求人倍率はなんと3.26倍。
人材不足の深刻化は常用パートにおいても同様です。
例えば、「保育士、福祉相談員等」では月間求人数が112人(新規求人数39人)なのに対して、月間有効求職者数は66人(新規求職申込件数は5人)で、有効求人倍率は1.70倍。
「ホームヘルパー・ケアワーカー」に至っては、月間有効求人数317人(新規求人数136人)に対して月間有効求職者数は99人(新規求職申込件数は20人)に過ぎず、有効求人倍率は3.20倍にも上っています。
このように、高齢化が進むなか、人手がまったく足りていない状況が続いているのです。
帯広市でも同様の状況となっており、同市のハローワークによれば、市内における2023年9月のパートを除く常勤者の有効求人倍率は1.23倍ですが、「保育士、福祉相談員等」は2.43倍、「ホームヘルパー・ケアワーカー」で3.69倍。
平均よりも1ポイント以上も高いのです。
道内の各所町村では極度の人手不足が続いており、介護施設・事業所では、少ない職員でいかにして運営するかに苦慮する状況が将来的に続いていくとみられています。
こうしたなか、外国人人材の活用に力を入れる介護施設・事業所も増えてきました。
例えば帯広市で介護施設を運営している社会福祉法人では、ベトナムなど外国人の留学生を招いて、自施設での就職を前提とした養成学校の授業料支援を実施。
日本人の人材を確保できない分、外国人の採用を積極的に行っているのです。
現在、国・厚生労働省は介護分野の人材確保のため、外国人人材の利用を推進していますが、北海道でもその動きが今後さらに活発化していくと予想されます。
2023年の高齢化率は30%を超えており今後も上昇傾向は続く
出典:総務省「国勢調査」「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」
北海道では少子化により年々人口が減少しています。
2010年では550万6,419人でしたが、5年後の2015年には約12万人減となる538万1,733人、そして2022年時点では514万人でした。
将来的にもこの傾向は続くと考えられます。
例えば、団塊の世代が75歳となる2025年には約496万人、団塊ジュニアが65歳を迎える2035年には約446万人まで減少する見込みです。
その一方で、北海道の高齢者人口は年々増え続けています。
2010年では135万8,068人だったのに対し、2015年には155万8387人、2022年には172万3083人と年々増加しています。
2025年には約172万人まで増えると予想されています。
北海道の高齢化率(65歳以上が総人口に占める割合)を見ると、2010年が24.7%、2015年では29.4%、2023年時点では32.9%と、総人口の3割に到達しています。
今後も上昇し続ける見込みで、2025年には33.5%、2040年には39.8%と、約4割に達する見込みだと試算されています。
高齢者人口自体は2025年以降に少しずつ減少しますが、総人口がそれよりも高い割合で減少するため、高齢化率自体はその後も上がっていくのです。
市町村ごとに高齢化率を見てみると、2023年1月時点で最も高いのは「夕張市」の54.1%で、以下「歌志内市」の53.9%、「松前町」の52.5%、「福島町」の51.8%、「上砂川町」の50.7%と続きます。
人口の5割以上が高齢者である夕張市は、全国的に見ても高い水準です。
一方、道内で最も高齢化率が低いのは「千歳市」の23.9%で、以下「倶知安町」の26.3%、「猿払村」の26.3%、「中標津町」の27.5%、「ニセコ町」の28.0%と続いています。
千歳市は、2023年9月時点で市民の平均年齢が44.7歳と、「全道一若いまち」として知られていますが、他の市町村と同様、高齢化の波は押し寄せています。
そんな千歳市であっても、2040年には高齢化率が29.6%に達すると予測されています(千歳市の公表している「千歳市人口ビジョン」による)。
千歳市では現在、高齢化対策の充実化に向けた取り組みを進めています。
また、札幌市は高齢化率こそ低めですが、高齢者人口数は他の市町村よりも突出して多い圏域です。