介護福祉士資格の修学資金の貸付を無利子で行う
介護の現場で働きたいと思えば、資格や経験がなくてもボランティアやパートなら今すぐ働くことは可能です。
しかし、将来を見据え、長く介護の世界で活躍したいと思うのなら、資格取得は避けて通れないでしょう。
介護の仕事で必要な資格は数多いですが、最も取得しやすいのが介護職員初任者研修です。
この資格があれば、業務で高齢者の食事や着替え、入浴などの介助ができるようになります。
さらに専門的なスキルを身につけるなら介護福祉士実務者研修を受講し、修了したのちに3年以上の実務を経験すれば、国家資格である介護福祉士試験を受験することができます。
岩手県では、この介護福祉士の養成に力を入れており、「介護福祉士修学資金等貸付制度」を設けて資格取得のバックアップをしています。
具体的には、介護福祉士の指定養成施設に在学している、介護福祉士の資格取得を目指す学生を資金面で支えるために無利子で修学資金の貸付を行っています。
この制度は社会福祉士にも適用されるため、介護分野のみならず、低所得者や子どもなど幅広い方を対象に仕事をしたいのなら、同じ国家資格である社会福祉士を目指すのも良いでしょう。
また、岩手県では2015年から、働きながら介護福祉士を目指す方を支援するために「介護福祉士実務者研修受講資金貸付」、2016年から介護の現場への再就職を目指す方を支援するために「離職した介護人材の再就職準備金貸付」をスタートさせました。
どちらも経験やスキル、年齢などを問わず、介護職として長く働きたい方の最初の一歩を支える制度として、介護福祉士および社会福祉士の育成に一役買っているのです。
なお、これらの制度を利用して資格を取得した方は、岩手県内の介護施設で働く必要があります。
このように岩手県では介護福祉士および社会福祉士の有資格者を増やすことで、すべての県民が安心して暮らせるような福祉サービスの充実を図っているのです。
また、岩手県では「介護人材新規参入促進事業」として介護職員初任者研修の受講者に対して補助金の交付を行っています。
介護職員初任者研修というのは冒頭でもふれたように介護の資格のなかでも取得しやすく、最もポピュラーな資格です。
研修修了後、3ヵ月以内に岩手県内の介護事業所に就職することなど、交付条件は決まっていますが、介護職を目指す方のすそ野を広げる意味でも、今後もこの事業が継続して行われることが期待されています。
岩手県の介護関連職の有効求人倍率は右肩上がり
※福祉人材センター・バンク「令和4年度 福祉分野の求人求職動向」、厚生労働省「一般職業紹介状況」を元に作成
※統計ごとに母数は異なる
福祉人材センター・バンク によると、2022年の岩手県における福祉関係職の有効求人倍率は4.54倍でした。これは全国平均の4.28倍とほぼ同じ数値です。
2022年2月の岩手県の一般職業全体の有効求人倍率は1.37倍でした。
岩手県内で働くなら、他業種よりも介護関連の職場のほうが就職しやすい状況といえます。
また、2010年の1.31倍を底に、介護関連職のここ数年の有効求人倍率は着実に右肩上がりで推移しています。
これは介護事業者が今後の高齢化率の上昇を見据え、新たな人材を積極的に採用する方向に舵を切っているからだと考えられます。
今後、高齢化率が上がることを考えると、介護職員が不足してくることは間違いありません。
ですから、もし介護の仕事に興味があるなら、できるだけ早く介護関連の資格を取り、少しでも条件の合う職場でスキルと経験を磨いておくことは、長期的なライフプランを考えたときに決して無駄にはならないでしょう。
また、有効求人倍率と合わせてチェックしておきたいのが離職率です。
全国の介護職の離職率はここ10年低下傾向にあり、ほかの職業と比べても若干高い程度にとどまっています。
2021年の「介護労働実態調査」(厚生労働省)によると、ほかの職業の平均が13.9%だったのに対して、介護職は14.3%と、ほぼ変わらない数値です。
2007年時点での離職率が21.6%だったことを考えると、大きく改善されています。
この低下傾向は当然岩手県にも当てはまり、岩手県内でも一度介護関連の職場に就職すると長く働く人が増えています。
これは超高齢社会に突入した日本において、介護職の重要性が見直されていることの現れです。
かつては「3K」「4K」といわれていた時代から、給与面や労働環境の改善が進み、介護の現場は長く働きたいと思える職場へと生まれ変わろうとしているのです。
2022年の高齢化率は34.3%!全国平均と比べてかなり高め
※総務省統計局「統計ダッシュボード」
岩手県「令和5年度 老人の日・老人週間関係資料」、日本医師会「地域医療情報システム」を元に作成
岩手県では人口減少が止まりません。
住民基本台帳によると、岩手県の2022年の人口は118万1,000人でした。
130万6,000人だった10年前の2012年と比べると約12万人も減少していることになります。
東北6県のなかでも人口流出の激しい秋田県の約11万人よりも少ないとはいえ、昭和以前からの減少に歯止めがかかることなく人口は右肩下がりを続けています。
人口減少の主な原因は若い世代の流出です。
0~14歳の人口は12万5,000人で、前年の12万9,000人と比べて4,000人の減少。
15~64歳の人口は64万8,000人で、前年の65万9,000人と比べて1万5,000人減少しています。
65歳以上の老年人口も40万8,000人と、前年の40万9,000人から1,000の減少です。
また、高齢化率は34.3%であり、全国平均の29.1%と比較しても岩手県の高齢化率がいかに高いかがおわかりいただけるでしょう。
今後、これらの高齢者がさらに歳を重ねていくことを考えると、いくら人生100年時代とはいえ、要支援、要介護の認定を受ける高齢者が増えることは間違いありません。
今後、若い世代の流入がない限り、このまま岩手県の高齢化率は右肩上がりを続け、しかも近い将来、岩手県の高齢者人口は40万人を突破すると予想されているのです。
全国の高齢者数のピークは2042年に迎えると考えられていますが、岩手県はそれに先駆けて高齢化が進んでいきそうです。
このような状況を考えると、岩手県における介護関連の仕事の需要は今後増加することが見込まれます。
早めに介護関連の資格を取得し、入職してキャリアを重ねれば、高齢者人口がピークを迎えたときには介護のプロとして活躍の場を広げることができるでしょう。