熊本市では介護職員が働く環境を改善した企業に助成金が支給される
熊本市では高齢者人口の増加に伴い、その層を支える介護職員の質の向上に取り組んでいます。
介護の質を向上させるには、スキルアップのサポートや、介護職員の方が気持ち良く働ける環境の整備が必要で、介護施設や介護事業所への支援は欠かせません。
そのため、熊本市では「介護職員処遇改善加算」の計画などの提出を積極的に推奨しています。
介護職員処遇改善加算とは、介護職員向けにキャリアアップの仕組みを作り、職場環境の改善を行った介護施設や事業所に対して介護職員の賃金改善のための資金を支給する等の制度です。
ちなみに、介護職員処遇改善加算には5種類あり、それぞれに応じて加算金額が変わります。
介護職員処遇改善加算の算定要件は「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」の2種類があり、どれだけ要件を満たしているかによって申請できる加算が変わります。
キャリアパス要件はさらに3種類に分けられ、①職位や職務内容による賃金体系の整備、②外部研修への参加の機会の設定、③勤続年数や経験年数などに応じて昇給する仕組みの構築と定まっています。
職場環境等要件は賃金の改善以外の処遇改善の取り組みを行うことで満たされます。
以上のような国が定めた制度を介護事業者がスムーズに受けられるように、熊本市は支援しているのです。
また、熊本県の取り組みになるのですが、「介護職員確保支援事業補助金」の事業も行っています。
介護人材の確保は県の課題として捉え、介護職員が働きやすい環境を整えた事業者に対して助成金を支援するものです。
介護職員確保支援事業の対象は、「新たな人材確保の取組み」「介護人材定着の取組み」「人材育成の取組み」「地域連携の取組み」が挙げられる。人材育成の取り組み例で言うと、介護職員の資質向上及びキャリアアップ研修、メンタルケア(心の健康)研修、ケガや病気(職業病)の予防研修、介護現場のマネジメントを担うリーダー養成研修、(施設の種類や職位を区分しない横断的な)介護職員のグループ検討会等がある
このように熊本県全体で、介護事業者をサポートしています。介護の現場を働きやすい職場にすることを目的とし、介護職員が気持ち良く仕事に打ち込める環境づくりに取り組んでいます。
介護職を長く続けていくために職場環境の改善は欠かせず、介護職員にとって熊本市は職務に集中できる環境が整っていると言えるでしょう。
熊本市は高齢者単身世帯が増え、介護職を含めた地域包括ケアがカギとなる
出典:「統計ダッシュボード」(総務省)
「日本の地域別将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)
熊本市は、 2010年10月に総人口が73万4,474人となって70万人を超えたことから、2012年に政令指定都市になりました。
その後、2013年に73万9,554人を記録して以来、総人口は74万人前後を推移しています。
将来的には緩やかに減少すると見込まれ、2040年には65万9,000人、 2060年には55万人にまで落ち込むと予想されています。
ここで、総人口を0歳から14歳までの年少人口、15歳から64歳までの生産年齢人口、 65歳以上の高齢者人口の3区分に分けて状況をみてみましょう。
年少人口は、第2次ベビーブームの影響によって1975年から1985年頃には増加したものの、その後は減少に転じており、しばらくは減少傾向が続くと考えられています。
生産年齢人口は戦後になってから年々増加を続けてきましたが、1995年から2000年頃を境に減少が続いていて、生産年齢人口率も低下傾向にあるようです。
年少人口と生産年齢人口が減少に転じている一方、高齢者人口は増加を続けています。
2010年には高齢化率が21%に達したことから、熊本市は世界保健機関(WHO)が定義している「超高齢社会」に突入しました。
団塊の世代も高齢者人口に加わり、また平均余命も長くなっていることなどを考えると、このまましばらく高齢化率は上昇し続ける見込みです。
熊本市が抱える懸念材料は高齢化率の上昇だけではなく、高齢者のみの世帯が増えていることも挙げられます。
熊本市の世帯構成は、2022年には約32世帯を超えていますが、その内約10分の1の世帯で同居者がいない高齢者単身世帯という状況です。
そのなかで約35%にものぼる65歳以上の高齢者単身世帯は女性の単身世帯が多く、75歳以上に関しては女性の高齢者単身世帯が全体の約80%になっています。
夫婦と子どもからなる世帯の割合は減り続ける一方で、単身世帯の割合は増え続けることが予想されています。
熊本市の合計特殊出生率は2017年の時点で1.51と全国平均値の1.43よりも高くなっているとはいえ、それにも増して高齢者人口が上昇していることから、しばらく高齢化に歯止めが掛かりそうにありません。
そのため、介護職員の需要も年々高まっていくと考えて良いでしょう。