介護福祉士志望者や再就職志望者は貸付制度を利用できる
愛知県では、社会福祉協議会が中心となってさまざまな形で介護職員への支援が行われています。
ここでは、そのなかでも代表的な制度を紹介します。
まずは、介護福祉士等修学資金貸付事業です。
これは愛知県内にある介護福祉士または社会福祉士の養成施設へ通学する方に、入学準備金として20万円以内、学費として月額5万円以内、受験対策費用として4万円以内、就職準備金として20万円以内の貸付を行うという制度です。
支給の際は貸付という形ではありますが、試験に合格して卒業した後、1年以内に介護福祉士または社会福祉士として登録を行い、愛知県内で福祉・介護職として5年以上継続して勤務すれば、全額返済免除されます。
なお、貸与にあたっては養成施設長の推薦も必要です。
次に、介護福祉士実務者研修の受講資金貸付事業を紹介します。
現行制度では、介護職として3年以上の実務経験を持ち、介護福祉士実務者研修を受講することで介護福祉士試験の受験資格を得られます。
介護福祉士実務者研修の受講資金貸付制度は、その実務者研修を受講する際に必要な費用(受講費用、参考図書費用など)について、最大で20万円まで貸付をするという制度です。
貸与対象となるのは、国や愛知県の指定する介護福祉士実務者研修施設に在学中の人。
卒業後1年以内に介護福祉士の登録をし、愛知県内の介護施設・事業所で2年間、介護職として勤務すると貸付金の返済は全額免除されます。
最後に、離職した介護人材の再就職準備金貸付金を紹介します。
これは過去に介護職として勤務経験のある人が離職後に再び介護職として働く際、再就職のための準備金として最大40万円を1人につき1回まで貸し付けるという制度です。
対象となるのは居宅サービスを提供する施設・事業所に1年以上勤務した経験のある人で、介護福祉士あるいは実務者研修、介護職員初任者研修、介護職員基礎研修のいずれかの研修を修了した人、もしくは訪問介護員(ホームヘルパー)1級または2級の課程を修了したひとです。
愛知県内の施設・事業所に再就職後、2年以上継続して介護職員として勤務すると、返済は全額免除されます。
これは出産・育児を機に離職した女性の介護職員が子育てを終え、再就職を考える際に便利な制度だといえます。
上記の制度はいずれも貸付制度ですが、愛知県内で一定の期間以上勤務することで返済はすべて免除されるので、長く勤務を考えている方には活用する価値のある制度でしょう。
介護職員の人手不足が続き、どの施設も人を求めている
※福祉人材センター・バンク「令和4年度 福祉分野の求人求職動向」、厚生労働省「一般職業紹介状況」を元に作成
※統計ごとに母数は異なる
愛知県では恒常的に介護職の人手不足が続いています。
厚生労働省愛知労働局の調査によると、愛知県における全産業の有効求人倍率は2022年度平均で1.37倍だったのに対して、「介護サービスの職業」に絞って数値をみると、なんと3.93倍以上にものぼっています(2023年8月時点)。
この状況から、求人に対して求職者数が思うように集まらず、人手不足が続いている状況が推測されます。
実際、県内ではこれまで福祉・介護職に就労を希望する人、福祉の仕事に関心を持っている人を対象に就職フェアを開催してきましたが、新卒予定者よりも再就職希望者が多く、参加人数も多いとは言えない状況が続いているのが現状です。
公益財団法人介護労働安定センターが実施した「介護労働実態調査(2022年度実施)」によると、県内の介護施設・事業所の66.3%が従業員に不足感があると回答しています。
特に、訪問介護員の人手不足は深刻で、当該職種のいる事業所の85.3%が不足感を持っていました。
採用率は前年よりも1.2ポイント減少しており、離職率は上がっている中で、採用面での厳しさが垣間見えます。
ただでさえ介護分野への就職希望者が少ないにもかかわらず、その人材を多数の介護施設・事業所で取り合うので、必要な人材を確保するのは困難な状況であると言えます。
一方で介護職の離職率を見てみると、やや高めの値を示しているのが愛知県の特徴です。
介護労働実態調査によれば、愛知県内で1年間のうちに離職する介護職の割合は17.0%。
全国平均は16.2%ですから、それよりも0.8ポイント高い数値です。
早期離職の防止、定着促進のためにどのような取り組みをしているかを尋ねたところ、最も多かったのが「労働条件の改善への取り組み」で、全体の77.5%を占めています。
働きやすい環境を整備すべく努力している施設は少なくありませんが、なかなか実を結んでいない状況が続いているのが実情。
同調査では介護関係の仕事を辞めた人にその理由を尋ねるアンケートも行われていますが、最も多かった回答が「法人や施設・事業所の理念、運営のあり方に不満があった」が22.8%を占め最も多くなっていました(複数回答)。
労働条件の改善に加えて、施設としての運営方針や組織のあり方なども見直していくことが、離職者を減らし、定着率を上げるうえで重要になると考えられます。
愛知県では今後も高齢化が進展していくのは確実であるため、介護人材をいかにして確保するかは県を挙げて取り組むべき課題と言えるでしょう。
高齢化率が特に高い地域で介護人材の獲得は待ったなし
出典:「統計ダッシュボード」(総務省)
「日本の地域別将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)
愛知県の人口は、高度成長期から2019年までは増加し続けていましたが、2020年から3年連続減少中、 2022年には749万7521人となり、前年と比べ、1年間で1万8487人減少しています。
0~14歳人口は1985年以降、15~64歳人口は2000年から減少が始まっています。
2010年代に至るまで人口が増え続けたのは、高齢者人口の増加数が64歳以下の人口減少数を補っていたからです。
人口減少は今後も続く予想です。
試算によると、2040年頃までには、約720 万人と、2020年頃の人口(756 万人)と比較して36 万人程度減少する見込みです。
高齢者人口は、1960年代には約22万人ほどでしたが、1980年には約46万人と2倍以上に増加。
2000年にはさらにその2倍以上となる108万人となりました。
その後もさらに増え続けて 2010年では149万人となり、今後は2030年には約201万人、2040年には約224万人まで増加すると試算されています。
ただし、大都市「名古屋」を擁する愛知県には、他県から若い世代が多く移住してくるため、少子化が進むなかでも高齢化率は低めです。
2020年時点における愛知県全体の高齢化率は25.4%でした。
同時期の全国平均は28.8%なので、それよりも3ポイント以上も低くなっています。
2040年には県内の高齢化率は31.6%まで上昇する見込みですが、その頃の全国平均は35.3%と予想されており、全国平均よりも高齢化率が低めに推移するという状況は、今後も続くとみられています。
県内の市町村における高齢化率をみると(2021年時点)、最も高いのは「豊根村」の52.4%です。
以下「設楽町」の51.2%、「東栄町」の50.8%と続いています。
県内の地域ごとにみた場合、名古屋市を中心とする「名古屋地域」は25.0%ですが、県東部の「東三河地域」は39.1%となっています。
このように、地域によって高齢化の進展状況に大きな差があるのが愛知県の特徴です。
一方、高齢化率が最も低いのは「長久手市」の17.4%で、以下「みよし市」の18.6%、「高浜市」の19.6%と続いています。
市町村単位でみても、最も高齢化率の高い豊根村と最も低い長久手市の差は、なんと35ポイント。
自治体間においても、高齢化の度合いに大きな差がみられます。
なお、中心都市である名古屋市の高齢化率は25.3%です。