盛岡市では介護職を対象とした奨学金返還の支援制度を実施
盛岡市では、市内の介護施設・事業所に勤務する職員を経済面で支援することを目的に、「介護職員奨学金返還支援補助制度」を導入しています。
これは、市内で介護職として勤務する人で、かつ日本学生支援機構やあしなが育英会、交通遺児育英会、岩手育英か奨学会奨学金などから本人名義で奨学金を借りていた人に対して、その返済金を代わりに負担するという制度です。
実際の支援金額は、返還月額の半額(上限は毎月6,500円)まで。
支援を受けるための条件として、介護施設・事業所と定めのない、あるいは1年以上の雇用契約を結び、週30時間以上勤務していること、自ら奨学金を返還していること、補助を受ける年度の3月31日時点で雇用継続していること、などを満たす必要があります。
なお、勤務形態は正規、非正規のどちらでもかまいません。
補助金の受け取り方は、補助を実際に受ける年度の3月末に、本人のその年度における返還実績を確認したうえで、その年度分の補助金を一括で受け取るという方法です。
その年度初めに返済を行うに前に支給されるのではなく、まずは年度分すべての返還金を支払い、市がそのことを確認したうえで、年度末に一度に補助金が支給されます。
補助金の申請をする場合、交付申請書をはじめ、就労状況の確認書類の提出が必要です。
また、実際に申し込むときは、個人ではなく、勤務先の介護施設・事業所を通して申し込みます。
雇用契約を解除したときや、雇用主は同じでも勤務先が盛岡市外になったとき、あるいは勤務時間が週30時間未満となったとき(常勤ではなくなったとき)は、支援を受ける資格を失うことになるので注意が必要です。
さらに盛岡市内で受けられる介護職への優遇措置として、介護保険の「介護職員処遇改善加算」があります。
これは、働く介護職員がキャリアアップできる仕組みを導入していたり、職場環境を改善させる取り組みを行っていたりする場合に対して、介護施設・事業所の職員が待遇アップを実感できるような加算が行われるという制度です。
もし申込みが認められれば、加算額として介護職員1人あたり1万2,000円~3万7,000円が事業所に支給されます。
そのため、事業所は加算対象となるような就労環境づくりに取り組み、支給を受けて介護職員の待遇改善につなげることで職員の定着率を高められるというわけです。
ちなみに、この加算制度はあくまで介護職員の待遇改善を目的としたものなので、看護職など、介護職員以外の職種に対する賃金改善や研修費用には原則として利用できません。
また、申請期限は加算の算定を行う月の前々月の末尾までとされており、例えば6月に算定したい場合、4月の末日までに申請を行う必要があります。
盛岡市の高齢化は着実に進行し、支え手としてのプロ介護職の数が不足
※総務省統計局「統計ダッシュボード」
盛岡市「盛岡市人口ビジョン(令和3年3月改訂案)抜粋版」、日本医師会「地域医療情報システム」を元に作成
盛岡市の人口は2000年に30万2,857人を記録して以降は減少に転じました。
2010年代前半には東日本大震災で避難者が流入してきたことによる一時的な人口の増加がみられましたが、2014年からは再び減少し、2015年には29万7,631人となっています。
そして国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2025年には総人口は28万7,099人まで減少する見込みです。
年齢区部別に人口の推移をみると、15歳未満人口と15~64歳未満の人口は1990年以降年々減少。
その一方で増え続けているのが65歳以上の高齢者人口です。
1990年では3万826人でしたが、2000年には4万8,469人、2010年には6万3,721人、2015年には7万3,729人まで増加しました。
高齢化率も年々上がり続けており、1990年では10.5%、2000年では16.0%、2010年では21.6%、2015年に25.1%まで上昇。
今後も上昇は続くと予想されており、2025年には高齢化率が約30%に、2045年には38.8%に達すると試算されています。
ただし、2022年時点における岩手県全体の高齢化率は34.3%ですが、県庁所在地の盛岡市はそれよりも5ポイントも低い値です。
岩手県は「高齢化が進んでいる地方県」とのイメージがある一方、盛岡市の場合、高齢化の度合いは比較的軽度であると言えます。
しかしながら、高齢化が急速に進行しつつあることには間違いなく、その事態を軽視すべてきではないでしょう。
例えば、高齢者世帯数の増加数などを見ても、そのことは明らかです。
盛岡市では、1990年以降に高齢者世帯が急増しました。
高齢夫婦世帯数は1990年時点で4,058世帯でしたが、2020年には1万3,510世帯にまで増加しています。
また、高齢者単身世帯は1990年時点では2,966世帯でしたが、2020年には1万4,458世帯と、30年の間に高齢者夫婦世帯数は約3倍、高齢者単身世帯は約4倍も増えているのです。
高齢者のみの世帯数は今後も増えていくとみられ、特に1人暮らしの高齢者は介護者がおらず、地域で支えていく仕組みづくりが急務となっています。
ここまでみてきたように、今後、急速に高齢化が進行していくと予測される盛岡市では、間違いなく今後も介護職員の需要が拡大し続けていくと考えて良いでしょう。