初任者研修の受講料とテキスト代を最大9万円補助!
茨城県では近年、介護職に対して多様なサポートが行われるようになっており、数多くの支援事業が展開されています。
その1つが、介護職への就業促進と定着率アップを目的に行われている「介護職員初任者研修支援事業」です。
これは、介護職員初任者研修を修了後に県内の介護施設・事業所へ就職した人、もしくは就職後に同研修を修了した人を対象に、自分で負担した受講料とテキスト代に対して最大9万円の補助金を支給するという事業。
また、これから介護福祉士資格の取得を目指す人に対しては、「介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度」という、介護福祉士実務者研修の受講資金を1人につき20万円まで貸し付ける事業を実施。
実際に貸付対象となるのは、以下の条件を満たしている人とされています。
- 申請期間中に実務者研修施設に在学している
- ①住民登録を茨城県内で行っている人、②茨城県内の実務者研修施設に在学している人、③実務者研修施設の学生となった年度の前年度に茨城県に住民登録をしていて、実務者研修施設での受講のために茨城県外に転居した人、のいずれかの条件を満たしている
- 介護福祉士国家試験を受験できる方
- 茨城県以外の都道府県から本資金を借りていない方
- 卒業(修了)後、介護福祉士の資格を取得・登録し、茨城県内において介護等の業務に従事する意思のある方
さらに、1度介護職を離れた人に再び働いてもらうために、再就職のための準備金を貸し付ける「離職介護人材再就職準備金」事業も実施。
特に出産・育児を理由に介護職を辞めた方は、これを活用することで再就職しやすくなります。
貸付金額は1人につき1回限りで40万円以内とされ、貸付の対象となった経費は、子どもを預けるための活動費用、学び直しをするための講習会への参加経費、介護福祉士試験の受験費用、参考書の代金、就職のための転居費用と転居の際に発生した礼金、仲介手数料、仕事で使用する服装や用具の購入費など。
対象となる人は、介護福祉士、介護福祉士として必要となる知識・技能を実務者研修施設で学んだ人、介護職員初任者研修を修了した人などです。
県内の介護施設・事業所に再就職して、継続して2年間介護職として就労し続けた場合、貸付金の返済は免除。
子育てが一段落ついて、本格的に介護の仕事を再開したいという方にとっては、利用する価値のある支援と言えます。
2022年の求人倍率は7倍を超えて人材不足はかなり深刻
※福祉人材センター・バンク「令和4年度 福祉分野の求人求職動向」、厚生労働省「一般職業紹介状況」を元に作成
※統計ごとに母数は異なる
2022年の茨城県の介護分野における有効求人倍率は7.04倍。
関東地方の各都県と比較すると、神奈川よりは低いものの、次いで高く、東京千葉埼玉や群馬、栃木を上回る数値となっています。
福祉分野の有効求人倍率の全国平均は4.23倍なので、それを上回っていることを考えても、茨城県における介護分野の人材不足状況は深刻な状況にあると言えるでしょう。
また、公益財団法人介護労働安定センターの調査によれば、介護施設・事業所に従業員の過不足状況について尋ねたところ、「大いに不足」「不足」「やや不足」のいずれかを回答した施設の割合は68.4%に上っています。
実に県内の7割の介護施設・事業所が、人手不足に直面しているのです。
不足している理由は「採用が困難である」が88.9%を占め最多となり、その要因としては「同業他社との人材獲得競争が激しい」と「景気が良いので、介護業界へ人材が集まらない」が58.3%、「他産業に比べて労働条件等が良くない」が56.3%となっていました(複数回答)。
労働条件などの要因で介護業界に人が集まらず、少ない人材を介護施設・事業所同士で奪い合っている状況が続いているのです。
ここまで説明したように現状有効求人倍率が7倍を超えて人手不足感も強くなっているため、茨城県での介護職へのニーズは、今後さらに高まっていくと予想されます。
県内で介護サービスを利用する人の数は、2008年時点では約6万6,000人だったのに対して、2021年には約13万5,000人まで増加しました。
特に自宅で訪問介護や通所介護などを利用する「居宅サービス」の利用者が増えており、平成12年10月と令和2年10月を比較す ると、約3.4倍になっています。
また、介護サービス全体に占める居宅介護サービスの利用者割合も微増しつつあり、2011年では75.4%でしたが、2015年には76.9%、2021年には77.9%と少しずつ上昇しています。
高齢化率が2040年に40%を超える見通しで介護人材の確保が急務
出典:「統計ダッシュボード」(総務省)
「高齢化関連の各種データ」(茨城県)
茨城県の総人口は2000年頃から減少が始まっており、当時は約298万6,000人でしたが、2023年4月には約282万8,848人と16万人近くも減っています。
人口の減少傾向は今後も続いていくとみられ、2040年までには約242万人まで落ち込む見込みです。
ただし、この人口減少は主に少子化によって引き起こされているもので、64歳以下の人口減少がその原因となっています。
高齢者人口に絞ってみると、2000年以降、右肩上がりで増え続けている状況です。
65歳以上の人口は、2000年当時は約49万6,000人でしたが、2015年には約77万2,000人、2023年10月には約85万3,000人まで増加しました。
総人口が既に減り始めているのに対し、高齢者人口は大幅に増え続けているわけです。
そのため、総人口に占める高齢者人口の割合である高齢化率も年々上昇し、2000年当時は16.6%でしたが、2015年には26.8%、2023年10月時点では30.8%となりました。
約3人に一人が65歳以上となり、高齢化率は今後も上昇していくとみられています。
特に、今後は要介護者が増加すると言われる後期高齢者(75歳以上)の人口が急増していくと予想されています。
総人口に占める後期高齢者人口の割合は、2000年当時は7%、2015年では12.5%、そして団塊の世代と呼ばれる人口の多い1946~49年生まれの人が75歳となる2025年には18.3%になる見込みです。
市町村別に高齢化率をみると、最も高いのは「大子町」の46.8%で、以下、「利根町」の46.6%、「河内町」の39.5%、「常陸太田市」の39.2%と続きます。
これら高齢者の多い地域では、介護サービスを担う人的資源には限界があり、要介護者をできるだけ増やさないよう介護予防に力を入れる施策を積極的に行う必要があると考えられているのです。
一方、高齢化率が低いのは、「つくば市」(20.3%)、「守谷市」(23.1%)、神栖市(23.7%)などでした。
ただし、これらの市でも高齢化は緩やかながらも着実に進んでいます。
例えばつくば市では、2015年時点における高齢者人口は4万903人でしたが、2021年には7万8,028人と6年で3万5,000人以上も増えています。
市町村ごとに高齢化率の数値には違いがありますが、全体としてはどの自治体においても上昇傾向にあると言えるでしょう。