介護職員の家賃を負担する事業所に市が補助金を支給
福祉・介護サービス分野において、全国的に慢性的な人手不足と言われているなかで、特に大都市である横浜市では福祉人材の確保が重要な課題となっています。
今後も高齢者数が増加することは明らかで、福祉人材の確保は厳しい状況になると予想されているのです。
そんな状況を鑑み、横浜市では介護サービスを行う個人・事業所に対して支援を行っています。
例えば横浜市では、「横浜市介護職員住居借上支援事業」や「横浜市介護ロボット等導入支援事業」、「横浜市外国人留学生受入支援事業費補助金交付」を行っています。
まずは、「横浜市介護職員住居借上支援事業」を確認しましょう。
これは、新たに雇う介護職員用の住居を借上げる法人を支援するもので、対象の団地の部屋は市が提供してくれます。
原則、住居借上費用は本人に負担を求めないようになっています(ただし、事業実施者の負担額が横浜市の補助額を超えたときは、越えた額の範囲内で本人が負担する必要がある)。
家賃は生活費のなかでも特に金額が大きくなりがちなので、少しでも節約したい介護職員にとっては嬉しい内容ですね。
続いて、「横浜市介護ロボット等導入支援事業費補助金」をみていきましょう。
これは、40歳以上の中高齢者、または外国人を雇用したを雇用した施設に対して、介護ロボットなどを導入する資金の一部を支援するものです。
当該年度に40歳以上の中高齢者、または外国人を2名以上3か月以上雇用した場合、介護ロボット等を導入する際の経費(対象経費の上限45万円、9/10補助)の一部が助成対象となります。
最後に、「横浜市外国人留学生受入支援事業費補助金交付」を紹介しましょう。
これは、介護福祉士を目指して来日する留学生を受け入れる事業所に対して、日本語学校の学費などの1/2(上限35万円)の経費を助成し、留学生の受け入れ、就学、就労までがスムーズに行われることを目指すものです。
ただし留学生は、日本語学校を卒業した後、介護福祉士養成校に入学をしなければ補助対象とはなりません。
ここまで解説してきたように、介護職員志望者が働きやすくなるような制度が整っている横浜市は、これから介護業界を目指す方にとっては理想的な環境といえるでしょう。
横浜市の高齢化率は25.6%。生産年齢人口の割合は高めだが、介護職員の手は足りていない
※総務省統計局「統計ダッシュボード」、日本医師会「地域医療情報システム」を元に作成
ここ半世紀の間、横浜市の人口は増加を続けてきました。
特に、オリンピック時期にはそれが顕著で、1955年~1975年の15 年間は約125 万人ほど増加するなど、その急増ぶりは凄まじいものでした。
バブル経済が崩壊し、平成不況と呼ばれた時期から2000年までは増加率が鈍ったものの、直近の2000年から2005年の5年間は好景気に恵まれ、人口増加率は4.5%へと回復しました。
ではここで、2023年9月時点の年齢3区分別人口をみてみましょう。
0~14歳(年少人口)が42万9,082人、15~64歳(生産年齢人口)が238万8,842人、65歳以上(老年人口)が93万6,823人となっており、年少人口、生産年齢人口ともに減少しました。
一方、老年人口は増加しており、総人口に占める老年人口の割合は25.0%です。
とはいえ、全国と比較すると、横浜市は生産年齢人口の割合が高く、老年人口の割合が低いほうではあります。
ただし、生産年齢人口の割合が高いからと言って介護問題について楽観視することはできません。
なぜなら、人口自体が非常に多く、横浜市内には高齢者が90万人以上いるからです。
福祉人材センター・バンクによると、2022年の神奈川県の福祉分野の求人倍率はなんと8.10倍でした。
人口がこれほど多い地域で人材不足状態であることを考えると、今後も介護職員の需要が続くと予測されています。
では、高齢者の情報をピックアップしてみてみましょう。
横浜市の高齢者人口は2000年の47万人から徐々に上昇。
2023年の65歳以上の人口は95万2,270人で、高齢化率は24.4%となっており、高齢化率が超高齢社会の目安となる21%を超えた2013年以降、上昇し続けてきました。
65歳以上人口の内訳をみると、65~74歳が40万8,851人、75歳以上が52万7,972人となっています。
さらに高齢者人口の推移を年代別に分けて見ると、特に急増しているのが後期高齢者人口(75歳以上人口)です。
2009年後期高齢者の人口は31万人でしたが、2023年では52万人にまで増加。
「団塊の世代」が後期高齢者になる2025年には、後期高齢者が17万4,000人増えると予想されています。
特に、横浜市の高齢者については「高齢夫婦のみ世帯」と「高齢単身世帯」が急激に増加していることが特徴。
65歳以上世帯員のいる一般世帯数は 60万1571世帯で、一般世帯全体の 34.5%を占めており、65歳以上の約5人に1人が一人暮らしとなっています。
この傾向は将来的にさらに強まり、社会的孤立を防ぐ対策とも合わせ、介護人材の採用が一層重要になっていくでしょう。