特別養護老人ホームとデイサービスの経営状況に変化
特別養護老人ホームはコロナ禍でも堅調な状況が続く
コロナ禍によって、介護事業を含むさまざまな業種が、大きな減収に見舞われました。財務省の2021年1月調査によると、全産業の58.9%で業績が悪化していることが判明。
中でも、調査の中で業績が5割以上減少したと回答したのは、「運輸」(23%)、「宿泊・飲食サービス」(38%)、「その他のサービス」(48%)となっています。このようにサービス業界全体に大きな打撃を与えていることがわかります。
その中で、特別養護老人ホームの経営状況は、コロナ禍でも回復基調にあります。
福祉医療機構経営サポートセンターがまとめた調査によると、2020年度における特別養護老人ホームの収益の状況は「増収」が29.3%、「横ばい」が51.4%とあわせて8割を超えました。

デイサービスはコロナ禍の影響を色濃く受けている
その一方で、特別養護老人ホームに併設されるデイサービス(通所介護)の収益は、芳しくありません。
特別養護老人ホーム全体では減収した割合が18.0%なのに対し、デイサービスは48.2%にまで達しています。
内訳は、1割減が27.7%、2割減が12.0%、3割減が4.5%、4割以上減が4.0%となっています。
全国介護事業者連盟が2020年5月にまとめた調査結果でも、デイサービスが色濃く影響を受けていることがわかります。
経営への影響を尋ねた質問に、「影響を受けている」と答えたのは特別養護老人ホームで17.5%、有料老人ホームで37.5%、訪問介護で47.0%なのに対し、デイサービスは90.8%とその他の事業を大きく上回っています。
そのうち減収割合が1割未満なのは37.7%、1割以上2割未満が28.5%、2割以上4割未満が25.3%を占めています。中には100%減収と答えた事業も0.8%ありました。デイサービスは、コロナ禍の影響を色濃く受けたと言えるでしょう。
介護事業の経営状況は厳しい
倒産件数は過去最高に
介護事業の経営環境は年々悪化の一途を辿っています。東京商工リサーチの調査によると2020年の「老人福祉・介護事業」倒産は118件。介護保険法が施行されて以来、過去最多を更新しました。また、2016年からは一貫して100件を上回っています。

倒産した事業者の内訳は、訪問介護で56件、通所・短期入所で38件、有料老人ホームで10件となっています。
また、倒産までいかずとも、休廃業・解散が406件と介護事業から離れる事業者も最多のペースで推移しています。東京商工リサーチの見込みによると、今後も経営基盤の弱い中小事業者の倒産や解散などが相次ぐと指摘されています。
コロナ禍で経営が悪化する要因
コロナ禍による影響として挙げられるのが、「利用者の減少」と「新型コロナ対策費用」です。
例えば、2020年4月の緊急事態宣言時、在宅系の介護サービスを利用した人は2019年11月に比べて約9万7,000人減少したことがわかっています。さらに、デイサービスは約13万8,200人に達しました。
さらに、新型コロナ対策のための衛生用品の支出は介護事業者全体で79.2%が増加したと回答。ICT活用による通信費なども支出を増加させる傾向にあり、経営状況を悪化させる要因になっています。
デイサービスが苦境に陥る背景に人件費の圧迫が
事業が小規模になるほど経営が苦しくなる
介護事業の中でも、デイサービスはとりわけ経営状況が芳しくありません。福祉医療機構の調査によると、2019年度のデイサービス事業所の経常赤字割合は、大規模施設では20%程度にとどまる一方、地域密着型の小規模事業者では41.8%と大きくなっています。
利用率でも大規模施設は77~78%程度ですが、地域密着型の小規模事業者は68.9%と低くなっています。
中でも大きく異なるのが人件費の割合。
地域密着型の小規模事業者は68.7%、通常規模の事業者は67.8%なのに対し、大規模事業者は63.4%ほどです。
そのため、人件費が収益を大きく圧迫しています。
利用者の単価比率(利用者1人1日当たりのサービス活動における収益の割合)は地域密着型で3.5%、通常規模型で4.3%、大規模事業者で10.1%とその差は大きく開いています。

一方、デイサービスは、小規模から通常規模な施設が9割以上を占めています。つまりデイサービスの事業者の多くは、人件費が高く、収益が上がらないという苦しい経営をもともと強いられているのです。
経営改善をするために必要なこと
デイサービスの赤字事業者と黒字事業者を比較すると、「個別機能訓練加算」の算定率に大きな違いが見られました。
個別機能訓練加算とは、利用者の要介護度や健康状況に応じて、個別の機能訓練を行った場合に算定できる介護保険制度による加算のことです。
この加算は「個別機能訓練加算Ⅰ」と「個別機能訓練加算Ⅱ」に分けられています。
中でも「個別機能訓練加算Ⅰ」は、常勤専従の指導員を配置することが要件となっており、小規模事業者は人員確保が難しく、人件費も大きくなります。そのため、この加算を算定している小規模や通常規模の事業者では、経営を圧迫されることもあります。
小規模や通常規模の事業者の場合、加算と人件費を天秤にかけて人員を確保しなくてはなりません。
人件費の高い人材を確保するために必要なのは利用率を向上させることにあります。
つまり、仕事の効率をいかにアップさせて、人材を確保していくかが安定した経営を実現するために必要だと言えるでしょう。
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2020年9月7日 制定