2025年間近、介護離職の現状
大手企業が従業員の介護離職対策に取り組む
2025年問題とは、超高齢化社会の中で団塊の世代およそ800万人が、2025年までに後期高齢者となることで引き起こされる、様々な問題を指します。
そのひとつに挙げられるのが、介護離職です。
一般的に介護が必要となる年齢は、70代後半〜80代からといわれており、その時の子どもの年代を40代後半〜50代とすれば、働き盛りで、会社で重要なポジションに就いているケースも少なくありません。
総務省の調査でも、40代後半~50代で介護者の全年代の53%を占めていることがわかります。

介護離職は当事者だけでなく、企業にとっても大切な人材を失うこととなり、その損失は決して小さなものではありません。
2025年問題を見越し、ハウス食品では2021年9月から、若手社員を含む全社員に介護研修を実施しています。
研修は、親の年齢や家族構成などの情報から家族の介護がどのくらい迫っているかを診断し、そのうえで経済面や時間面などの負担を可視化することで、仕事との両立や家族との関係、介護費用について学ぶことができるプログラムとなっています。
突然家族の介護をすることになったとしても、こうした介護研修を経験しておくことで、介護の知識や仕事との両立における心の準備ができ、不必要な介護離職を避けることができるのです。
今も尚、年間約10万人が介護離職する現実
2015年から安倍首相によって推進されていた一億総活躍社会の実現に向けた目標の一つに、「介護離職ゼロ」が盛り込まれていました。
現在まで継続して問題視されていることからわかるとおり、解決すべき優先度の高い課題なのです。
しかし、一時的に介護離職者数が少なくなった年があるものの、今も尚、毎年約10万人もの人が介護離職しているのが現状です。
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実は、厚労省が実施した「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」によると、介護離職後、「経済面」「精神面」「体力面」のすべての項目において、離職前よりも負担が増したと回答していることがわかっています。

仕事と介護の両立について、介護離職をした人のうち、男女ともに40%以上が「非常に不安を感じていた」と回答しています。現在職に就いている人では「自分の仕事を代わってくれる人がいないこと」が最も多い不安要素となっています。
また、離職者の中では、「介護休業制度等の両立支援制度がないこと」が最も大きな不安要素として挙げられていました。制度があることを知らないまま介護を担うことになったことが、大きな原因として考えられています。
また、就労者・離職者共に高い数値を出した結果が、「人事評価に悪影響が出る可能性があること」「両立支援制度を利用しづらい雰囲気があること」でした。
現状では、労働者に介護に関する支援策の存在が知られていないことが問題としてあり、いかにして周知を進めていくかということが課題となっています。
介護離職を防ぐ国の支援体制は?
「介護休業制度」の利用を
「介護離職ゼロ」を目指す国の取り組みの基盤は、1992年に施行された育児・介護休業法で、企業に介護休業の導入を義務付けています。
介護休業制度は、労働者が要介護状態にある家族を介護するためのもので、要介護状態の家族ひとりにつき、93日までの休業日を3回まで分割して取得できます。また、介護休業期間中に休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金が支給されます。
厚労省が公表する介護休業制度の規定整備状況を見ると、介護休業制度を導入する企業は年々増えているものの、従業員の多い企業と比べ、従業員が30人未満の企業の導入率が低いことがわかります。

この状況を受け、2022年4月から、有期雇用労働者の介護休業の取得要件が緩和されることとなりました。
その意図は、「労働者の離職を防ぐ」ことと、「希望に応じて男女ともに仕事と育児等(介護含む)を両立できるようにする」ことです。
これまで取得要件として挙げられていたのは以下の二つの条件でした。
- 引き続き雇用された期間が1年以上であること
- 介護休業開始日から6ヵ月以内に退職(あるいは労働契約の満了)の予定がないこと
そのうちの、「引き続き雇用された期間が1年以上であること」という要件が削除されることが決まっています。
勤務先に介護休業制度がない場合やパートやアルバイトでも、一定の条件を満たせば法に基づいて制度を利用できることが大きな特徴です。
その他の仕事と介護の両立支援制度
また、介護休業制度以外にも仕事と介護の両立支援制度があります。
家族の介護や世話をするための「介護休暇」は、被介護者1人につき年5日まで、1日単位または半日単位で休日を取得できる制度です。
その他、「短時間勤務などの措置」「所定外労働の制限」「時間外労働の制限」「深夜業の制限」などがあります。
こうした介護休業法は、「自分が介護を行う期間」だけではなく、「今後、仕事と介護を両立させるための体勢を整えるための期間」としても利用できることはあまり知られていません。
また、必ずしも書面での申請が必要なわけではなく、急を要する場合には口頭で申請することもできると定められています。
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国が用意している制度を知り、いざという時に利用することが、介護離職を防ぐ第一歩なのです。
介護離職防止のための企業の取り組み
企業側への支援体制も整う
国は「介護離職ゼロ」に向けた取り組みを進める一方で、「在宅介護の推奨」にも取り組んでいます。
一見相反する2つの取り組みを両立させるための施策が、2021年に始まった「中小企業のための育児・介護支援プラン導入支援事業」です。
介護支援プランとは、介護に直面した従業員の状況や希望を受けて、仕事と介護を両立する働き方を支援する計画のことです。これは事業者が作成します。
このプランを作成するにあたり、中小企業に対して「仕事と家庭の両立プランナー」を派遣し、事業者が介護支援プランを作成する支援を行う事業が、育児・介護支援プラン導入支援事業です。
「介護支援プラン」を立てることで、「人材確保」「社員の現状把握」「働き方改革」ができるというメリットがあります。
さらに、仕事と介護を両立させるための職場環境の整備を行い、介護休業の取得や復職の支援を行った事業者は、助成金の対象となる場合もあります。
仕事と介護の両立の事例
職場の両立支援制度と介護保険制度などを上手に組み合わせて利用することが、仕事と介護の両立を成功させるポイントです。最後にその事例をご紹介します。
- 事例1 要介護2軽度の認知症の親の介護
- 「短時間勤務制度」と「通所介護」の組み合わせ。平日の日中は一日6時間滞在できる通所介護サービスを利用し、通所介護の送迎時間に合わせて出社時間を調整。仕事が忙しい時期は、通所介護の延長サービスを利用することで残業も対応可能。
- 事例2 要介護4の親の介護
- 「介護休暇制度」「フレックスタイム制度」と「小規模多機能型居宅介護」の組み合わせ。小規模多機能型居宅介護は、通い・訪問・泊まりのサービスを柔軟に対応してもらえるため、出張や残業時の際も利用が可能。通院時は、半日単位の介護休暇制度を活用して付き添う。
- 事例3 要介護5の親の介護
- 「介護休業制度」「フレックスタイム制度」と「特定施設入居者生活介護」の組み合わせ。入院中の面会や世話、退院手続き、施設入所手続きのために介護休業制度を2ヵ月間取得。自宅から通いやすい場所にある介護付き有料老人ホームへ入所後は、フレックスタイム制度を活用して、通勤途中に施設に立ち寄りが可能。
- 引用元:「仕事と介護料率のポイント」(厚生労働省)より引用更新
介護はいつ起こるかわかりませんが、誰にでも起こりうることです。
いざというときに困らないためにも、各種制度の存在を広め、誰もが休暇を取れるような職場環境を整えておく必要があるのです。
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2020年9月7日 制定