消費者庁、高齢者の入浴における危険性を改めて提示
高齢者の入浴事故死は交通事故死よりも多い
消費者庁が11月26日に発表した資料によると、2016年に入浴中の事故で亡くなった高齢者は、10年前よりも7割増加した4,821人であることが判明しました。
同年の交通事故で死亡した高齢者は入浴事故より1,700人少ない3,061人であり、こと高齢者においては、交通事故よりも入浴による事故の方が死に直結する危険性が高いということになります。

この入浴中の事故死が交通事故での死亡数を上回る状況は2011年からずっと続いており、消費者庁は高齢者の入浴における危険について、たびたび注意喚起を行ってきました。
同庁は、脱衣所と浴室の温度差や、お湯の温度管理、入浴時間など、事故防止のために気にかけるべきポイントを提示。
中でも、高齢者は冬場の入浴に危険が伴うことを自覚し、家族で入浴習慣を見直すなどして、事故を防止するように呼び掛けています。
主な原因はヒートショックにある
冬に高齢者の入浴事故が多発する大きな原因として、ヒートショックが挙げられます。
ヒートショックとは、気温などの急激な変化によって血圧が変動し、身体に大きな負荷がかかってしまう現象のこと。
これによって不整脈や失神、重篤な場合は心筋梗塞や脳梗塞などを起こす可能性もあります。
東京都健康長寿医療センター研究所では、ヒートショックに関連した入浴中の急死は、2011年時点で推計年間1万7,000人おり、その9割が65歳以上の高齢者とのこと(2013年発表)。
また、厚生労働省が発表した入浴関連事故の研究資料では、こうした入浴事故の死因について、“入浴中の急死は、体温上昇および低血圧による意識障害のために出浴が困難となり、さらに体温が上昇して致死的になる病態(熱中症)と考えられた”と記述しています。
この文章における意識障害とは、ヒートショックのことを指しているとも取れます。
つまり、ヒートショックにはそれ自体で脳梗塞や心筋梗塞を引き起こし死亡する可能性に加えて、入浴中に意識障害を起こし、それによって溺死や熱中症により死亡する危険性を併せ持っているということです。
ヒートショックは冬に起きやすい
「激しい温度差」が入浴事故を招く
ヒートショックは急激な温度の変化による血圧の変動が原因とされています。特に高齢者の場合は、居住空間である家の温度差が大きいほど、このヒートショックになるリスクが高いです。
例えば、冬の入浴時。
温かい部屋から冷たい浴槽に動き、さらに熱いお湯に浸かるという一連の入浴動作に、ヒートショックを招く可能性が潜んでいます。
さらに、体を洗うために温度の高い浴槽から出たり、浴槽から上がって脱衣所に移ったりといった行動にもヒートショックの危険が存在するのです。
また、入浴以外では、暖房がついていないトイレもリスクが高い場所として知られています。トイレの場合では、排便の際に、血圧の上がり下がりが激しいのでヒートショックが起こる原因となってしまうのです。
入浴中の溺死者のうち約90%は高齢者
ヒートショックを起こしやすい人の特徴として、まず挙がるのは高齢者です。
これは、体温調節を始めとした身体能力が衰えていることに加え、動脈硬化などが進行している人が多いことが原因とされています。
他にも、糖尿病などの生活習慣病にかかっている人は、自律神経に障害を持っていることが多いため、血圧が不安定になることから、こちらもリスクが大きくなることで有名です。

また、不整脈や狭心症、高血圧などの血管に関する持病を持っている人や、以前に脳梗塞や心筋梗塞、脳出血などの病歴がある方も、ヒートショックには気を付けましょう。
こうした持病だけではなく、温度の高い風呂で入浴することが好きな人や、深夜の入浴、あるいは飲酒や食事、服薬後に入浴することが多い人は、ヒートショックのリスクが高まる場合があるとのことです。
上記のような習慣的な行動の場合は自分を過信してしまい、こうしたリスクを軽視する傾向が強くなりがちです。疾病を持っている人は入浴する際の危険性について自覚し、ヒートショックを気にかける必要があります。
ヒートショックを防止するには家の温度差をなくすことが大事
ヒートショックは健康な人でもなる可能性がある
入浴中の事故を防止するためには、ヒートショックを始めとした危険性を知り、その予防をすることが必要不可欠。しかし、この危険性の周知については、まだ進んでいないのが現状です。
消費者庁の調査によれば、入浴中の事故について、冬場に高齢者の事故が多いことを知っている人は8割もいましたが、持病がなく、健康な人であっても入浴中に事故が起こる場合があるということを知っている人は、全体の3分の1程度にとどまっています。

そのため、寒い日に入浴事故の対策を行っていないという人は36%(消費者庁調べ)、ヒートショックのリスクが高い41度以上の温度で入浴している人が全体の半数以上(リンナイ株式会社調べ)と、多くの人々がヒートショックへの対策を施していないという現状が明らかになっています。
これらの危険性の周知も、今後の課題です。
昼~夕方に入浴するのが有効的
ヒートショックを防止するための具体的な対策法としては、まず家の中で温度差をなくすことが重要です。そのためには、浴室や脱衣所に、暖房器具を設置するのが効果的ではあるのですが、コストの問題で難しい場合も大いに考えられます。
その場合は、シャワーから浴槽にお湯を注ぐことで、湯気により浴室全体を温めるなどの方法が効果的です。また、浴槽のお湯の温度を41度以下にし、湯に浸かる時間は10分以下にするよう心がけるなど、浴槽の温度自体に気を付けることも有効だと言えるでしょう。
他にも、入浴する時間にもポイントがあります。
人間の生理機能は14時から16時が最も高まると言われていますので、この時間に入浴をすることで、体温調節機能が活発になるので、リスクを低くすることが可能です。
さらに、この時間帯は日が出ていて気温が比較的高いという環境も、ヒートショックを防ぐうえで役立ちます。
年が明け、まだまだ寒さが強まる季節ですが、これらの対策を取ることで、リスクの少ない安全な入浴を心がけていくようにしましょう。
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2020年9月7日 制定