認知症のリスクが生活の制限で上昇している
シニアの健康不安1位は「認知症」
2020年8月に山田養蜂場が全国の65歳以上の男女1,593名を対象に実施した健康意識に関する調査によると、シニアの将来に対する健康不安を感じる分野や事柄について「物忘れや認知機能の低下」と回答した割合は54%。
半数の人が、物忘れや認知症に対する不安を感じていることが明らかになりました。

さらに、漠然とした認知症への健康不安は変わらない一方で、新型コロナウイルス感染症が高齢者の健康意識に大きく影響していることも見えてきました。
同調査では、高齢者の84%が「前年の生活状況と比べて外出や運動の機会が減った」と回答。「友人や知人と会う機会が減った」と答えた人も70%いました。外出自粛や国が提唱する「新しい生活様式」の影響を色濃く受けていることがわかります。
コロナ禍で認知症の症状が悪化している
医学的な研究結果からも、新型コロナ拡大の影響による認知症の症状の進行が明らかになりました。
広島大学大学院の石井伸弥教授が、全国の医療施設や介護施設、ケアマネージャーを対象に実施した調査では、入所者や利用者の認知症の症状や認知機能の状況が判明。
調査結果によると、入所型の医療施設や介護施設の約4割、ケアマネの約4割が「新型コロナ感染拡大による介護サービスの制限によって、認知症者に何らかの影響が生じた」と回答。特に在宅の高齢者の半数以上で認知機能や身体活動量の低下などの影響がみられました。
さらに、この調査で重要なポイントは、ほぼすべての施設が「日常生活に制限が生じた」と回答していることです。
通所系や訪問系の介護サービスについても、認知症者の約8割が「これまで通りのサービスを受けられなくなった、もしくは自ら受けなくなった」ことがわかっています。
認知症者は年々増加…症状の「徘徊」はリスクが高い
10年後には国民の約2割が認知症に
九州大学の『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』によると、2025年の認知症の有症者数は全国で推計675万人(人口の19.0%)となる見込みです。
2030年には744万人(20.8%)と、国民の約2割が発症するという推計になっています。さらに40年後の2060年には850万人(25.3%)となり、日本人の4人に1人が認知症者になると予測されています。

また、認知症は糖尿病などの生活習慣病との併発が指摘されています。
2012年以降、糖尿病の有病率の増加にともなって認知症者の割合が高くなるとすると、2025年には認知症者数が730万人(20.6%)に到達するとの推計も。
2030年には830万人(23.2%)、2060年には1,154万人(34.3%)となることが予想されているのです。
2019年は認知症の行方不明者が最多
警察庁の発表によると、2019年の1年間で認知症の行方不明者はのべ1万7,479人。
昨年よりも552人多く、7年連続で最多を更新しています。
認知症者は行方不明者全体の約2割を占めていて、80歳以上が9,367人、70代は6,822人、60代が1,165人と続いています。
認知症の代表的な中核症状のひとつが「徘徊」です。
記憶障がいで自分のとった行動を忘れてしまったり、見当識障がいで時間や空間、自分の立場がわからくなったり、日常生活で必要な判断力に障がいが出てしまったりすることで、外出したまま帰宅できない状態が繰り返されるようになります。
発症する認知症の種類によって、その原因は以下のように異なっています。
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アルツハイマー型認知症 | 道に迷いやすく、自分の居場所がわからなくなったときに不安が増幅されやすい |
レビー小体型認知症 | 幻視症状が出やすく、幻影で見えた人や動物を追いかけてしまう |
脳血管性認知症 | 夜になると妄想や自分の居場所がわからなくなる見当識障がいの「夜間せん妄」によって、深夜早朝の徘徊が起こりやすい |
徘徊は、いきなり道路に飛び出して交通事故に遭う、段差やものなどに当たって怪我を負うなど、生命の危険にかかわるため、家族にとっては非常に神経を使う問題です。
「世界アルツハイマー月間」を予防を考える機会に
認知症の発症をAIで予測可能に
一方で、技術の発展が認知症の早期治療につながる可能性もあります。
2020年6月、島根大学と追手門学院大学の研究で、脳MRI画像のAI解析から、アルツハイマー型認知症の発症が事前予測できるようになったというニュースがありました。
従来の分析手法では2年以内の発症確率を推定するにとどまっていましたが、今回のAI分析では個人単位で経過年数ごとに予測できるまでのレベルになっています。
今回の解析手法は、健康な人とアルツハイマーの人の脳のMRI画像2,142例を基に、その後の発症を追跡したデータをベースに行っています。AIの深層学習(ディープラーニング)による解析の結果、推定の精度は83.5%にもなっています。
認知症の発症予測の精度が現場レベルで上がっていけば、早期治療につながります。
毎年9月は認知症への理解を深める「世界アルツハイマー月間」
毎年9月の1ヵ月間は「世界アルツハイマー月間」、9月21日は「世界アルツハイマーデー」と定められています。
これらは国際アルツハイマー病協会が1994年からWHO(世界保健機関)と共同で取り組んでいる啓発活動。
日本では9月21日前後に大阪の太陽の塔や愛知県庁など、各地のランドマークや自治体の庁舎などがオレンジにライトアップされます。
このほか、関係団体によるイベント開催も予定されています。
マクロミルケアネットの『認知症における意識調査』では、医師の約8割、ケアマネの約9割が、認知症対策には早期発見が大切だと回答しています。発症リスクを早期発見によってコントロールするためには、市民一人ひとりが認知症への理解を深める意識が大切です。

今年の世界アルツハイマーデーに当たる2020年の9月21日は、敬老の日でもあります。この機会に、ご家族や友人知人とのコミュニケーションの中で、改めて認知症予防について考えてみてはいかがでしょうか。
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2020年9月7日 制定