様々な支援制度が用意され充実
福島県では介護分野の人材確保を進めるために、介護職員や介護職を目指す人、介護業界に戻ろうとする人材たちに対するさまざまな支援事業が展開されています。
2023年度では、以下の制度がありました。
- 介護福祉士修学資金等貸付制度
- 介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度
- 新規採用職員住まい支援事業
- 介護人材再就職準備金貸付制度
「福島県介護福祉士修学資金等貸付制度」は、福祉・介護の現場で働く人材の確保・育成を目的としている修学資金の貸付事業のうち、入学前に経費の一部を貸し付ける制度です。貸付内容は学費について、修学期間にあわせて月額5万円以内、さらに必要に応じて、入学準備金 20万円以内、就職準備金20万円以内、修学期間中及び福祉施設等に就労中の貸付利息は、全額無利子を行うという制度です。
貸し付けの対象者は、①福島県内に住民登録している方で、介護福祉士養成施設に進学し、卒業後、県内において介護福祉士としての業務に従事しようとする方、②貸付申請時に生活保護受給世帯又は市町村民税非課税世帯に属する方、③在学する高等学校長の推薦を受け、県内外の養成施設が実施する推薦選考を受験し、合格した方、①②③の要件を満たす方が対象となります。
「介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度」は、介護・福祉の職場で働く人材の育成・確保を目的として実施している実務者研修 受講資金の貸付事業です。貸付金額は最大20万円で、実務者研修受講中に1回限りとなります。
貸し付けの対象は、介護福祉士実務者研修施設に在学し、卒業後、福島県内において介護の業務に従事しようとする方、②県内に住民登録をしている方又は 県内の介護福祉施設(事業所等に勤務している方、③実務者研修施設を修了する年度の3月31日までに、常勤の介護職として従業期間・日数が介護福祉士国家試験の実務経験として認められる期間(3年以上)を満たす見込みの方、④実務者研修施設を卒業後、1年以内に介護福祉士国家試験を受験する意思のある方で、受講料 ・教材費 ・参考図書、学用品、交通費 ・受験対策講座の受講料・国家試験受験手数料 などが貸付経費の対象となります。
「介護人材再就職準備金貸付制度」は、介護の仕事に復帰するための費用について、最大40万円(1人1回限り)を借りることができる制度です。
ただし、対象となるのは、福島県内に住民登録をしている方又は福島県内に所在する事業所に介護職員として就労し た方で、過去に介護事業所等で介護職員の業務に1年以上の実務経験のほか、①介護福祉士の資格を持っている、②実務者研修施設において実務者研修を修了、③介護職員初任者研修施設を修了(すでに廃止されている介護職員基礎研修、1級課程、2級課程のいずれかを修了している方でも可)の3つのいずれかに該当する方、介護保険サービス事業所等において常勤の介護職員等として再就職した方、介護職員等として再就職する日までの間に、予め福島県福祉人材センターに届出又は登録を行い、かつ、再就職準備金利用計画書を提出した方となります。
返済について、介護保険サービス事業所等において、常勤の介護職員として2年間勤務すれば返済免除となります。です。
これらのほかに注目すべき事業に、「新規採用職員及び中堅介護職員に対する就職支援金(福島県相双地域等で実施)」があります。
これは、浜通りまたは田村市にある介護施設・事業所で新たに採用された介護職員や新規の中堅介護職員が、連続して6ヵ月以上就労した場合に補助金を支給するという内容です。
新規採用職員には一人当たり10万円、中堅介護職員には20万円支給され、新規採用職員は資格要件、経験要件は不問となっています。
過去に福島県のこの事業で就労支援金を受け取った方は対象外となります。
福島県はこれから介護職に就くことを考えている人、そして介護職へ再就職を考えている人など、置かれた状況に応じた支援が充実していると言えます。
介護関連の有効求人倍率は2022年には4倍超え。特に被災地域での人材獲得は急務
※福祉人材センター・バンク「令和4年度 福祉分野の求人求職動向」、厚生労働省「一般職業紹介状況」を元に作成
※統計ごとに母数は異なる
2022年度の有効求人倍率をみたときに、福島県では1.46倍(10月時点)なのに対して、介護の職業に絞った数値では4.71倍となっているのが福島県。
人手不足の状況が続いています。
介護職の有効求人倍率は年々上昇しており、2012年度の1.68倍が2017年度に3.02倍まで上がり、2022年は4倍を超える数値となっています。
このように、人手不足の度合いは次第に増しつつあると言えるでしょう。
特に、東日本大震災の津波、による影響を受けた沿岸部では人手不足が深刻化しています。
実際に被災した介護施設では、運営を再開するにあたって震災前に働いていた職員に再就職を呼び掛けても、ほとんど戻ってこないのが現状。
多くの職員が、震災後に避難した場所で職を見つけて、そのままその土地で働き続けているのです。
例えば福島県沿岸地域のいわき地区の場合、介護職の有効求人倍率が4.41倍(2023年9月)となっており、人手がまったく足りていない状況が続いています。
こうした状況を受け、福島県では2023年度に「福島県介護人材確保戦略」を策定。
これは5本を柱(「介護イメージアップ」「人材マッチング」「人材確保」「人材育成」「人材定着」)として介護人材の確保等を進めながら、福島県における現状と課題を踏まえて、特に克服すべき事項に対応するものを戦略として位置づけ、重点的に取り組むものです。
5本の柱から、さらに魅力ある職場作り、魅力ある職場の発信、被災地の介護人材確保をかかげ、福島県の高齢者人口がピークを迎える2030年を見据えて介護人材確保に取り組もうとしています。
県の高齢化率は30%以上で介護職員は引く手あまた
出典:「統計ダッシュボード」(総務省)
「福島人口ビジョン」
福島県の高齢者人口の推移をみると、1950年時点では9万4,391人でしたが、高度成長期を迎えて生活水準が向上するにつれて次第に増加。
1975年には18万356人、1995年に37万1,572人、2015年は54万4,341人、2020年には57万2825人となりました。
特に後期高齢者(75歳以上)の増加率が高く、1950年時点では2万3,147人でしたが、2020年では29万1,055人と、70年間で約15倍も増加。
福島県で急速に進む高齢化の実情が、これらの数値から読み取れます(なお、原発事故によって避難指示が出ていた地域では、正確な人口が公表されていないので高齢化率は算出されていません)。
一方、福島県の総人口は、2005年には209万1,319人でしたが、2015年には183万3,152人と15年で約26万人も減少しました。
総人口が減少している一方で高齢者人口は年々増え続けているため、高齢化率は年々上昇。
1950年時点では4.6%に過ぎなかった高齢化率は、1980年に10.5%、2000年に20.3%、2015年に28.4%、2020年に31.8%にまで上りました。
そして2023年時点では33.3%と3、同時点の全国平均29.1%を鑑みると、それよりも3.4ポイントも高い数値となっています。
全国平均との差を考えると、福島県は高齢化が進展している県であると言えるでしょう。
また、総人口における後期高齢者人口の割合は、1950年当時はわずか1.1%でしたが、1995年には6.6%、2015年には15.0%、2019年2月時点では16.0%と年々上昇。
同様の上昇傾向は、今後も続いていく見込みです。
高齢化率を県内の市町村ごとに見てみると、最も高いのは「金山町」の61.4%で、続いて「三島町」の55.6%、「昭和村」の55.5%、「西会津町」の49.8%となっており、トップ3がそろって50%を超えているという状況です。
特に金山町は総人口の6割以上が高齢者が占め、これは全国的にみても高い割合と言えます。
一方、最も低かったのは「西郷村」の26.6%で、以下「郡山市」の28.5%、「大玉村」の28.6%、「鏡石町」の28.9%、「本宮市」の29.5%と続き、最も低い西郷村でも25%に届いています。
全体の傾向をみると、会津地域で高齢化の進んだ自治体が多く、県中~県南地域は比較的低めの自治体が多くなっているようです。