介護現場では、利用者さんの体調や様子を正しく把握し、より良いケアを行うため、また職員間で大切な情報を共有し、事故やトラブルを防ぐために介護記録を作成します。
ただ、新人のうちは何をどう書けばいいのか分からず時間がかかったり、書く内容を忘れてしまったりと戸惑う場面も多いものです。
この記事では、新人介護士のカイゴさんとうめが、そんな不安を少しでも減らし、効率よく分かりやすい介護記録を書くためのコツを紹介します!
登場キャラクター
カイゴさん
現場に入って間もない新人介護士1年目。分からないことだらけでも日々奮闘中!
うめ
介護に詳しくて、少しおせっかいな猫。カイゴさんの頼れる相談役。
1. 5W1Hと数値で記録する
昼の食事介助後、カイゴさんは介護記録を残しました。
えっと、『利用者さんが食べたくないと言っていた。少ししか食べてなかった』…っと。
上記の介護記録を書いたところ、内容が曖昧だったため、後で介護記録を確認した先輩からいくつかの点を確認され、状況の伝達に時間がかかってしまいました…。
NG:抽象的で曖昧な記録
…ってことがあったんだけど、介護記録ってどうやって書けばいいんだろう…。
他の人が読んでも分かりやすい介護記録を書くのって、最初は難しいですよね。
どこが分かりづらさの原因だったんでしょうか…?
そうですね…例えば、『少ししか食べてなかった』と書いていますが、この記録をカイゴさんが読んだら、どう思いますか?
うーん…確かに客観的に見ると、情報が抽象的で曖昧になっていて「いつの話なのか」「どのくらい食べたのか」が分からないですね…。
そういうときは、「5W1H」を意識して整理すると書きやすいんです!
「5W1H」…それってなんでしたっけ?
誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どうした(5W1H)のことですね!それでは、5W1Hを用いた良い記録例を一緒に見てみましょう!
OK:5W1Hと数値に基づいた記録
『5/12 12:15 昼食時、利用者さんが三口食べた後、うつむいたまま手を動かさなくなる。
声かけをすると「食欲がない」と返答。顔色は悪くなく、せき込む様子もない。
バイタルチェックを実施し、看護師に連絡する。
状態異常は見られないが、念のためしばらくベッド休養する。』
5W1Hを意識してメモをとり、具体的な数値も記録したことで、その状況を見ていない他のスタッフにも詳細を正しく伝えることができました。
5W1Hを意識したら、スムーズに伝わりました!
いい感じですね!このように具体的な数値を入れると、情報の精度がぐっと上がります!
POINT:5W1Hと数値に基づいた記録
- 誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どうした(5W1H)を意識する
- 数値(〇割・〇回・〇℃など)を入れることで情報の精度がぐっと上がる
2. 客観的な事実のみ記録する
午後の排泄介助後、カイゴさんは介護記録を残しました。
えーっと…『元気がなさそう』っと。
上記のように介護記録を残したところ、後で排泄記録を確認した先輩から、どんな状態だったのか補足を求められてしまいました。
NG:主観的な表現の記録
自分が感じたことを文字にするのは難しいです…。
カイゴさんはなんで「元気がなさそう」って感じたの?
えっと、うつむいてて、話しかけても返事がなかったから…。
それです!介護記録の時は、「うつむいていた」「返事がなかった」っていう事実を書いたほうが伝わりやすいんです。
なるほど!人によって「元気がない」ってとらえ方が違いますもんね!
その通りです!それでは、客観的に記録した良い例を見てみましょう!
OK:事実のみで客観的な記録
『5/12 14:00 ポータブルトイレ介助のために訪室。介助時に声かけを行うもうつむいており、返事がなかった。
熱発がないか、身体をぶつけた様子がないか確認するも異常はない。
立位動作や排泄自体も普段と変わらない。
介助後、念のため看護師に報告し様子を見ることとなる。』
介護記録は誰が見ても同じように判断できることが重要です。
そのため、状態確認した事実を中心に、具体的に表現できる部分は数値で書くことで正しく事実を伝えることができます。
いいですね!具体的に書かれていて、状況が把握しやすいです。
こうやって詳細に記録をすれば、読んだ人が今後の対応方法を判断するための指標にもなりますね!
POINT:事実のみで客観的に記録
- 主観的な感想(例:「様子が変だった」「不機嫌そう」)は避け、客観的な事実のみを記録する
- 発話内容・動作・表情なども見たままを記述
- 後で読む人が状況を正確にイメージできるように心掛ける
3. 確認項目を基にメモをとる
夕方、カイゴさんは入浴介助の介護記録を書こうとしましたが、詳細がなかなか思い出せません。
…えっと、利用者さん、着替えの時に何て言ってたっけ…?
業務に追われて、すぐにメモができなかったことで、小さな気づきや言葉を忘れてしまっていました。
NG:メモ不足で記録内容を忘れる
うめさん…今日の入浴介助時の介護記録を書こうとしているのですが、その場面のことを何も覚えてなくて…。
忙しいと忘れてしまいますよね…。メモはしていましたか?
その時は覚えていたので問題ないと思い、メモしていませんでした…。
覚えていると思っていても、業務中に忘れてしまう可能性があるので、こまめなメモは大切ですよ。
でも、業務をしつつメモをとるって大変です…時間もかかってしまうし…。
それなら、事前に必要な情報のリストアップをしておきましょう!
OK:必要項目に基づいたこまめなメモ
体温・食事量・排泄など、介護記録に必要な項目をまとめたリストを作りました!
リストを作成したことで効率的にメモをとることができ、情報の抜け漏れがない分かりやすい介護記録を書けるようになりました。
あとはこのリストを利用してこまめにメモをとることも意識していきましょう。
介助は立て続けに発生する業務なので、誰に対して何の情報を聞き取ったり、感じたのかが混同しないように日頃から情報を整理しておきましょう。
情報共有がされていなかったり、他の利用者さんと間違えてしまったりしたら大変ですもんね…。
そうですね。もしメモが取れない場合は、近くにいる他の職員に共有しておき、後で介護記録を作成する際に相談するという方法もありますよ!
なるほど!こまめにメモや相談をして、あとで整理すればいいんですね。
その通りです!先輩の介護記録を参考によく使う表現をメモしておくと、言い回しにも困らなくなりますよ!
POINT:必要項目に基づいたこまめなメモ
- 介護記録のキーとなる必要な情報(体温・食事量・排泄状況など)を事前にリスト化しておく
- 気になったことはすぐにメモ。あとで一気に書こうとすると抜けや曖昧になったり情報が混同しやすい
- 先輩の介護記録から「使える表現」や「言い回し」を学び、ストックしておく
- よく使うフレーズは辞書的にまとめておくと、記録スピードがアップ!
まとめ:わかりやすい介護記録は“チーム連携のカギ”
最初は苦手だった介護記録も、ちょっと自信が出てきました!
素晴らしいです!ポイントを意識するだけで、相手に伝わる介護記録が書けるようになりましたね!
先輩との報連相のやりとりがスムーズになった気がします!
分かりやすい記録作成ができると、先輩や他職種のスタッフからの信頼もぐっと高まりますよ!
今回の話をまとめると「介護記録」のポイントは以下の3つです!
よーし、明日からも分かりやすい介護記録が作成できるように頑張ってみます!
介助記録に必要なポイントを押さえ、効率よく作成できれば業務にも余裕が生まれ、利用者さんとしっかり向き合う時間も増やせます。
ぜひ、明日からの業務に取り入れてみてくださいね。
次回も必ずチェックします!