介護現場では利用者さんとの関わりでやりがいを感じる一方、慣れない業務や不規則な勤務で心身への負担がかかることもあります。
しかし適切な対処法を知っておけば、メンタルの不調を予防し、長く健康的に働き続けることは可能です。
今回は、新人介護士の「カイゴさん」とおせっかい猫の「うめ」が、メンタルケアの基本を分かりやすく解説します。
登場キャラクター
カイゴさん
現場に入って間もない新人介護士1年目。疲れたときにはつい大食いしてしまう。
うめ
介護に詳しくて、少しおせっかいな猫。疲れた時には銭湯に行く。
対策1:メンタルが弱っていないかセルフチェック
今日はカイゴさんがひとりで夜勤を受け持つ日でした。前回のひとり夜勤でヒヤリハットがあったため、緊張しっぱなしで何とか勤務を終えました。
夜勤はなんとか終わったけど気持ちが落ち着かないな…なんだか食事ものどを通らない…。
夜勤が終わったあとも気持ちが落ち着かず、あまり眠れませんでした。その後もひとり夜勤が近づくにつれて、眠れないことが増え、業務にもあまり集中しきれない状況が続いてしまいました。
NG例:疲労が溜まっていても放置してしまう
ということがあって…最近なんだか業務に集中できないんです…。
それは大変でしたね。ひとり夜勤のプレッシャーが負担になってしまっているのかもしれません…。
疲れている感じはしてたんですが、放置してしまっていました…。
そういった違和感は自分の身体からの重要なサインでもあります。カイゴさん自身を守るため、自分の不調と向き合う機会を設けることも必要ですよ。
うーん…でも、どうやって自分の状態を把握すればいいんでしょうか?
そういうときは、心身の疲れの程度を確認するため、チェックシートを作成するのがおすすめです!
疲れの程度を確認する…?それってどういう風にすればいいんですか?
まずは短い時間でも良いので、1週間に1回、振り返りの時間を設定してみましょう!そこで自分の状況を「身体・心・行動」の3つの軸で振り返るんです。
なるほど…週1回、短い時間ならすぐできそうです!
では早速一緒にセルフチェックをしてみましょう!
OK例:週1で「身体・心・行動」の3項目を振り返る
カイゴさんは、うめのアドバイスに従いながらセルフチェックを試してみることにしました。
『身体・心・行動』の3つの項目で不調をチェックするんですよね?具体的にはどんな風にすればいいですか?
まずは以下の項目に対して、当てはまる場合には5を、当てはまらない場合には1をつけるといった風に、1~5で評価を行っていきましょう!
身体の状態
- 頭が重い・頭痛がする
- 首や肩がこる
- 胃腸の調子が悪い
- 腰が痛い
- よく眠れない
心の状態
- イライラ感がある
- 不安感や憂うつな気分がある
- 集中できない感覚がある
- ひどく疲れた感じがする
行動の状態
- 食欲の変化(食べられない・食べ過ぎ)がある
- アルコール摂取量の増加
これらを合計して、数値が大きければストレスが高く、数値が少なければストレスは低い、というようになるんですね!
そうです!評価項目は自分に合わせて加えたり変更したりしてもよいですよ!
数値化すると客観的に見えますね!このシート、上司への相談にも活用できそうです!
そうなんです!定期的に記録しておくと、症状の変化が分かりやすいので今後体調を崩してしまったときにも、医療機関への相談がスムーズになります!
ありがとうございます!これから週1回、振り返りの時間を設けてみます!
素晴らしいです!ただしこのチェックは簡易的なものなので、厳密にチェックしたい場合や心配な症状がある場合は、厚労省のこころの耳というサイトのチェックツールを使用したり、医療機関に相談してみましょう。
POINT
- 自分の不調に早く気付く仕組みを習慣にする
- チェック結果は数値化で客観視し日記やアプリなどで記録する
対策2:ストレスを溜め込まずリセットする習慣を付ける
カイゴさんは午前中の業務を終え、休憩に入りました。
休憩時間なのに…なんだか気持ちがソワソワしてしまって落ち着かないな…。
気持ちが落ち着かないまま休憩時間が終わってしまい、あまり休まった感覚がない状態で業務に戻りました。
NG例:気持ちを落ち着かせるタイミングを設けない
うめさん…最近業務中に緊張したり焦ったりしてしまうことが多くて…仕事がうまくいかないんです。
そうだったんですね…。他の職員さんも忙しいですし、なかなか相談しづらいですよね。
そうなんです…声をかけるタイミングが分からなくて…結局一人で抱え込んでしまって…。
そういった状況で業務をしていると余計に緊張感が増してしまいますよね。
どうすれば落ち着いて仕事ができるんでしょうか…?
忙しい職場環境をすぐ改善することは難しいのですが…でも、カイゴさんの心を少しでも落ち着かせるかもしれない、簡単な対処法があります!
本当ですか!そんな方法があるならありがたいです…ぜひ教えてください!
それは吸う・止める・吐くを「意識して」呼吸することです。緊張している状態だと無意識のうちに呼吸が浅くなってしまうことが多いので、意識的に呼吸する時間を設けることで緊張がほぐれるんですよ!
確かに緊張していると息苦しくなってしまうことがたまにあるなぁ…。
では、実際に試してみましょう!
OK例:4-4-8呼吸法で気持ちをリセットする時間を作る
これは『4-4-8呼吸法』というものです。これはその名の通り、まずは鼻から4秒かけてゆっくり息を吸って、4秒間そのまま息を止めて、8秒かけてゆっくり息を吐き出す呼吸法です。
吸う息の倍の長さで吐き出すんですね。
そうです!可能であれば椅子に座った状態で、背筋を伸ばして行いましょう。これを3回ほど繰り返します。
あっ、なんだか少しだけ気持ちが落ち着いてきたように感じます。
カイゴさん、とても良いですね!ゆっくり呼吸することで副交感神経が働き、カイゴさんの緊張した心をやさしくほぐしてくれるんです。
これだったら休憩時間や仕事の合間でもすぐ出来そうですね!
そうなんです!忙しい業務の中でも、ほんの少し自分がリラックスするための時間をつくることで余裕をもって業務を進めることができるんですよ。
さっそく今日から休憩時間に始めてみます!
眠れないときにも使える呼吸法なので、ぜひいろいろな場面で活用してみてくださいね!
POINT
- ゆっくり意識しながら呼吸することで気持ちをリラックス
- リフレッシュの時間を決めて習慣化する
対策3:正しく伝わる形でメンタルの不調を相談する
職場で体調不良者が相次ぎ、連日の急なシフト変更が続いたせいで疲れてしまったカイゴさん。上司と1対1で話せる機会で、悩みを相談することにしました。
すみません、忙しすぎて疲れてしまって…どうすればよいでしょうか…?
カイゴさんは悩みごとを伝えようとしましたが、内容がまとまっておらずうまく言えませんでした。そのまま時間が無くなってしまったため、再度相談の機会を設けることになりました。
NG例:悩みを漠然としたまま伝える
ってことがあって…。何を伝えたいかあまり伝わらなかったみたいで、改めて時間を設けることになりました。
そうだったんですね…。困っている時ほど気持ちがあふれてしまって、本当に伝えたい内容が伝わらないことがあるんですよね。
そうなんです…。次に相談できるタイミングで、どうやって伝えたらいいのか…。
そんなときは事前に相談内容をまとめた相談メモをつくりましょう!
相談メモですか?確かに先にまとめておいた方が話しやすそうですね。
そうなんです!状況をしっかり理解してもらうための少しの準備で、ぐんと伝わりやすくなりますよ
では良い例をみてみましょう!
OK例:事前に伝えたい内容をメモで整理してから相談
2週間前から不眠による頭痛や集中力低下によって、抜け漏れやケアレスミスが発生していました。そこでご相談なのですが、夜勤回数を一時的に減らしてもらうことは可能でしょうか。
上司に相談したところ、夜勤シフトの調整を行ってもらえることになり、合わせて産業医への相談も提案してもらうことができました。
うめさん、ありがとうございます!おかげで落ち着いて話をすることが出来ました!
おぉ、とても丁寧に整理されましたね!
はい!メモに整理することで自分の状態を見つめなおす良い機会にもなりました。
本当に素晴らしいです!症状などの『状況』と、お仕事への『影響』、そしてカイゴさんの『要望』がとても分かりやすく整理されていますね。
ありがとうございます。事前に落ち着いて話せる時間を設けるのって大事なんですね…。
素敵な気付きですね。お互いによりよい相談の時間にするため、事前にアポイントメントをとるのも大事です!
POINT
- 相談は「事実→影響→要望」の順で整理したメモを準備
- 事前にアポイントメントをとり落ち着いて話せる時間をつくる
まとめ:メンタルの疲労でうつになる前にストレスマネジメントで心を守ろう
うめさん、おかげで少しづつ自分のメンタルを守る方法が分かってきました!
素晴らしいです!今回一緒に学んだことでカイゴさんの心が少しでも軽くなったなら嬉しいです。
今回の話をまとめると「ストレスへの対処法」は以下の3つです!
新人のときは『分からない』『慣れない』が連続して心が揺れやすい状況が続くことがあります。不調や不安を感じたときは今回のコツを実践するとともに、医療機関や相談窓口など頼れる機関に相談することも大切です。
次回は「業務に役立つアイデアを生み出す方法」を紹介!新人介護職の皆さん、次の更新もお見逃しなく!
次回も必ずチェックします!