仕事で漠然とした不安や悩みを感じたとき、そのモヤモヤの正体をうまく言葉にできないことはありませんか?そんなときこそ「メモ」が役立ちます。書き出すことで思考が整理され、行動のヒントが見えてくるのです。
今回は、介護職1年目のカイゴさんと、ちょっとおせっかいな先輩猫・うめの会話を通じて、「思考力」が身につくメモの取り方のコツをご紹介します。
登場キャラクター
カイゴさん
現場に入って間もない新人介護士1年目。字の綺麗さには自信がある。
うめ
介護に詳しくて、少しおせっかいな猫。話せるし字も書ける。
1:ストレスの原因を分析し、客観的に観察する
夜勤勤務の前日。カイゴさんはなんとなく不安な気持ちを抱えていました。
うーん...夜勤って何回担当してもなんとなく不安だなぁ....。
結局不安の正体がつかめないまま夜勤の時間になってしまい、落ち着かない気持ちのまま業務をはじめたところ、何度かケアレスミスをしてしまいました。
NG例:漠然とした不安を抱えて放置してしまう
うめさん...夜勤って、なんだか毎回不安なんです。
ひとりでさまざまなことに対応しなければならないので不安ですよね…。カイゴさんは特にどんなときに不安を感じますか?
えーと...ナースコールが重なると焦ってしまいますね...それと利用者さんの状態が急変してしまったときの対応も不安だなぁ....。
なるほど、細かい不安がいくつかあるようですね。そういった気持ちをまとめて「なんとなく不安」って思っていませんでしたか?
あ、確かに。漠然と「夜勤が不安」ってくくっちゃってました。
そういう時は、メモを活用して不安や苦手意識の中身を分解してみましょう!具体的な問題が見つかって、対策ができるようになりますよ。
OK例:付箋やメモに不安を書き出し、種類ごとに整理する
まずは、時間を決めて不安なことをなるべく具体的にメモや付箋に書き出してみましょう。1分~2分ほどで大丈夫ですよ。
介助中にコールが鳴ったときに焦ってしまう、夜勤時に利用者さんが急変したらと思うと不安...あとは....。よし、悩みを書き出しました!
では次に、それらを分類して整理してみましょう。例えば、利用者さんへの対応、事務作業などカテゴリごとに振り分けていきましょう。
わかりました!こうして実際メモに書き出してから整理すると、客観的に自分を見つめられますね!
そうなんです!カイゴさん、分類した結果をみて、何か気付くことはありますか?
あっ、こうしてみてみると、利用者さんへの対応についての不安が大半を占めてるって一目で分かります!
素晴らしい気付きですね。こうして分類することで、それぞれの対策を立てやすくなるんですよ!
なるほど!じゃあまずは…この「コールが重なったときの優先順位のつけかたへの不安」を解消するために、先輩にアドバイスもらってきます!
良いですね!「悩みを分解して考える」ことで解決策を見つけられましたね。
ありがとうございます!頭の中で考えるだけでなく、とにかく「書いてみる」って大事ですね。
POINT
- なんとなくの不安は書き出して具体的に分類すると答えが明確になる
- 悩みを書き出すことで「何が問題か」が見えてくる
- 問題を細分化することで1つずつ解決できる
2:メモで自分の経験を記録し、次に活かす
職場の定例会議。カイゴさんは提案したいことがありましたが、頭の中で考えがまとまらず、うまく言葉にできません。
自分なりのアイデアはあるけど...でもどう言えばいいのかわからない…。いつも言葉がまとまらなくて発言するのを諦めてしまうなぁ…。
結局そのまま会議中に発言することができませんでした。
また今日も発言できませんでした....。いつも同じパターンで終わってしまいます。
毎回同じような状況になってしまうのですね。カイゴさんはそういったとき振り返りをしていますか?
振り返りですか...?特に何もしていません。ただ「またうまく意見を言えなかったな」と思うだけで....。
NG例:自分の行動を振り返っていない
それだと次回も同じことを繰り返してしまうかもしれませんね…。まずは今日の経験をメモに記録して振り返ってみませんか?。
でも、失敗したことを書くのは気が進まないです....。
気持ちはよくわかります。でも、記録することで「なぜうまくいかなかったのか」や「次はどうしたいか」が見えてきますよ。まずはひと言だけでもいいので、簡単な振り返りをメモに書くところから始めてみませんか?
確かに…そうですね...。自分からアイデアを提案できるようになりたいので、振り返りメモはじめてみます!
素晴らしいです!経験を記録することで、同じ失敗を避けて成長につなげることができますよ!
また、振り返りと一緒に「次回の目標」を書いてみるのもおすすめです。苦手意識があるものに挑戦する際は、ハードルを少し下げた目標設定が良いですよ。
なるほど、簡単な目標だったらクリアできそうな気がしますし、成功を積み重ねていけば少しずつ自信をもてそうですね!
その通りです!では良い例をみてみましょう!
OK例:具体的な目標を設定し、挑戦後の結果を書き残す
うめさん、前回の会議での経験をメモに書いて振り返ったところ、その場で言葉を考えていたのが原因だったようです。なので、事前にアイデアをメモにまとめておき、「1回だけ提案する」と目標を決めて実際に実行できました!
おお、素晴らしいです!どうでしたか?
皆さん真剣に聞いてくれて...「良い視点だね」と言っていただけました!
素晴らしい「成功体験」ができましたね!メモに行動した結果も書いておくと後から自分の振り返りに利用できますよ。
確かに、こうやって記録しておくとあの時こういう挑戦ができたという自信に繋がりますね。
そうなんです!目標を設定して記録しておくことで、もし挑戦がうまくいかなかったときも振り返りがしやすくなるんですよ。
挑戦した記録を残しておくことってすごく大事なんですね!次の会議ではもっと踏み込んだことにも挑戦してみようかな。
その調子です!小さな目標をクリアしていけば、必ず大きな自信に変わりますよ。
POINT
- 挑戦した記録を残しておくことで経験が蓄積される
- ハードルを下げると行動しやすい
- 小さな成功体験が次の自信になる
3:「自分なりの仮説」を立ててから行動する
夜勤時、何度もコールを押す利用者さんに悩むカイゴさん。日勤の際に先輩に相談をしてみました。
先輩、最近利用者さんのコールが多くて困ってるんです...どうすればいいでしょうか...?
先輩からは「具体的にはどういう時に?」と何度も聞き返され、相談に時間がかかってしまいました。
NG例:問題を分析しないまま丸投げしてしまう
ということがあって、あの時どう相談すればよかったんでしょう?
うーん、そうですね…その利用者さんの普段の様子に違和感はありませんでしたか?
えーと...昼間よくお昼寝をされていて、夜間お手洗いにお連れする際も落ち着かない様子でした。
いいですね!では問題を分析するために、そういった気付きをメモに書き出してみましょう!
OK例:メモに書き出し自分なりの仮説を立てる
- ○○さんは最近入所したばかりで、昼間に眠そうにしている様子がある
- 昨日の夜勤のときも「眠れない」と話していて、1時ごろにナースコールがあったけれど、これは毎日ほぼ同じ時間に起きており、他の職員も同じように確認している
- 毎日0時ごろにトイレ介助に入っていることも関係しているのかもしれないし、そもそも入所して間もないので環境に慣れていないのではないか
うーん…。書き出してみたんですがこんな感じでいいんでしょうか…?
おお!業務の中でさまざまなことに気付けていて素晴らしいですね!
ただこのままだと、
・事実
(眠れないと訴えがあった、1時頃にコール)
・背景
(0時ごろにトイレ介助、入所して間もない)
・推測
(環境に慣れていないのではないか)
といった要素が混ざってしまっているので、仮説を立てにくい状態です。
たしかに、頭の中のごちゃごちゃをそのまま書き出した感じですね。
ではこのメモをもとに仮説を立てていきましょう!詳しい手順とポイントは以下の通りです!
タイトルを書く
端的な言葉でテーマを見出し化、後から読んでも分かりやすくする。
例:○○さんのコール回数が多い原因を分析。
事実を列挙
観察・記録・バイタルなど“客観的事実”だけを箇条書き。(数字・時間・行動を中心に)
例:バイタル通常通り、異常なし。
連日1時頃にコールあり。
昨日の夜勤時は「眠れない」と訴えあり。
毎日0時ごろにトイレ介助を行っている。
背景を整理
現在の状況について、思いつく限りの要因を内的要因と外的要因に分けて整理する。
正解を気にせず、量を重視して出す。
【内的要因】
最近入所したばかり。
昼間に傾眠傾向が見られる。
【外的要因】
廊下の照明が明るい。
エアコンの調子が悪く騒音がある。
仮説を立てる
「もし◯◯が原因であれば、△△で対策できる」と文章で仮説をまとめていく。
1つの問題に対して1つずつ仮説をたてる。
自分なりの仮説を立てることができました!早速先輩に相談してきます!
カイゴさんはそのまま先輩のもとへ相談に行き、自分なりの仮説とそう考えたプロセスを説明しました。
この利用者さんは、不眠のためコール回数が増えているように思われます。不眠の原因として、トイレ介助のタイミングがご本人の睡眠のリズムに合っていないのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか?
先輩は「自分でここまで考えてくるなんて素晴らしいね」とカイゴさんを褒めました。そして過去の介護記録を参考に、利用者さんのトイレ介助のタイミングについて再検討することになりました。
仮説を持って相談したらとてもスムーズに問題解決できました!
完璧ですね!自分なりに原因を考えるだけでなく、行動に起こせていて素晴らしいです!
整理に使ったメモを見せながら話してみたら、いつもよりスムーズに話が進みました!
そうなんです!なぜそう考えたかも同時に共有することで、学びがぐっと増えるんですよ!
POINT
- 相談前に仮説を立てることで解決への行動が起こしやすくなる
- メモで思考を整理すると視点が増える
まとめ:頭の中で悩むよりメモに書き出して整理しよう
メモを活用したら、漠然とした不安や問題を分析できるようになりました!
素晴らしいです!問題への対処法を考えるのにも少しづつ慣れてきましたね。
メモって、ただの記録じゃなくて「考えるための道具」なんですね。
まさにその通りです!思考力が身につくと、どんな問題にも対処できる頼れる人材になれますよ。
今日のポイントはこの3つです!
メモを活用した思考整理を行うことで、介護現場でのモヤモヤを解決することができます。こうした試行錯誤を繰り返しながら、将来的にどんな問題にも自信をもって対応できる介護職員を目指していきましょう。
次も必ずチェックします!