コロナ禍で「8050問題」が深刻化
中高年の引きこもりも増加傾向
学校でのいじめや就職活動の失敗などを理由に、家に閉じこもり、家族としか交流しなくなってしまう「引きこもり」が問題視されています。
東京都が新たに公表した調査結果によれば、地域包括支援センターの92.4%が「担当地域内に引きこもり状態の人がいる」と回答しています。引きこもりとは、以下の4項目のいずれかが6ヵ月以上続いている状態のことを指します。
- 趣味や用事のときだけ外出する
- 近所のコンビニなどには出かける
- 自室からは出るが、家からは出ない
- 自室からほとんど出ない
担当地域に引きこもり状態の人がいることを知った理由は以下の通りです。(複数回答あり)
- 当事者の家族からの相談(78.5%)
- 関係機関からの情報提供(69.5%)
- 近隣住民からの相談(62.9%)
その中でも特に深刻化していて解決が難しいのが、中高年の引きこもりです。40歳以上の引きこもりの割合は家族調査、本人調査ともに増加傾向です。

とはいえ、家族から相談があっても引きこもっている本人が相談や支援を望んでいないケースも少なくありません。
また、長期間にわたって引きこもった影響で、悩みが増大、および複雑化し、解決するのが困難な状況に陥ってしまうこともあります。
「8050問題」はコロナ禍でより根強く
そもそも、以前から中高年の引きこもりの子どもを高齢の親が支えている「8050問題」が課題として取り上げられていました。
「8050問題」の闇は深く、最悪の場合だと殺傷事件や孤独死に至るケースもあります。2019年に神奈川県川崎市の路上で発生した20人に及ぶ死傷者を出した事件の犯人は引きこもり傾向のある51歳男性でした。
また、元農林水産事務次官の77歳男性が、引きこもっていた44歳の息子を殺害した事件も起こっています。殺傷事件に至るまでではなくとも、引きこもりが家庭内暴力に発展するケースも少なくありません。
コロナ禍で、引きこもり問題は加速しました。KHJ全国ひきこもり家族会連合会の調査によると、新型コロナ感染拡大を受けて以下のような傾向があることがわかっています。
- コロナ禍では定期的な面談や集合形式でのプログラム実施が困難になり、順調に面談を実施していた相談者が数名引きこもり状態に戻ってしまった
- 就職してほしいとの親の気持ちが、外に出るのは新型コロナが収束してからでいいと先延ばしになっている
- 「新型コロナがこわくて」と言われると、支援がしにくい
- 自粛生活が促され、引きこもり本人が今の生活を肯定するようになった
さらに、引きこもりの本人が頼っていた親の収入が不安定になり、家族全体が生活困窮になったという問題も起こっています。
引きこもりは早期に対応しないと解決が難しい
10代後半や20代前半から始まり、期間は平均7~9年
引きこもり問題は、早期に対応しなければ解決が難しいと言われています。KHJ全国ひきこもり家族会連合会の調査によれば、引きこもりの開始年齢と兵権年齢は年々緩やかに上昇している状況です。

10代後半や20代前半から引きこもりを始め、30代以降になっても状況の改善が見込めない方も多くいるのです。平均引きこもり期間は7~9年にも及びます。中には一度も就職経験がなく、30代になっている方もいます。
引きこもりのうち支援団体や医療機関を継続利用しているのは半数以下
一方で、引きこもりを解消すべく「支援団体や医療機関を継続的に利用している」と回答した割合はわずか46.5%に留まっています。
そもそも引きこもり問題を解決する支援団体の存在を知らない、あるいは、支援を呼びかけることに抵抗がある方も少なくありません。また、世間の目が気になって、わが子が引きこもっている状況を隠しておきたいという考えを持っている方もいます。
引きこもっていることは家族しか知らず、まったく周囲に打ち明けない状況が続き、引きこもり本人は社会に出る機会や意欲を失ってしまうことも多いのです。支援団体や医療機関の利用への抵抗感をどう減らしていくかカギとなります。
予兆が見られたら早期解決を図るべき
引きこもり状態を打ち明けない本人や家族の実態を掴む
引きこもりである事実を周囲に打ち明けない家庭もあるため、国や市町村は引きこもり問題の実態を掴み切れていない側面もあります。
そういった経緯を踏まえ、厚生労働省は引きこもり問題を解決するために、市町村などの自治体の生活困窮支援窓口で相談を行った人を対象とした実態調査を民間会社に委託して行っています。
「8050問題」に直面した家庭は、生活困窮者になることも多いため、深刻化する前に解決へと取り組むべきです。また、引きこもりの本人や家族からは以下のような意見も挙がっています。
- 何でもいいから気軽に話ができる場所がほしい
- 同じ境遇の人と話してみたい
- どうしたらよいのかわからない
- 家族だけでは解決できそうにない
- 外に出るきっかけがほしい
自ら助けを求められていなくても、どう解決すべきか悩み、苦しんでいるのです。引きこもりについて東京都江戸川区が行った調査によれば、最も多い意見は「気軽に相談できる窓口が必要」というもので約6割にのぼっています。
次いで「悩みを話し合い、集える場所」が約5割と、居場所を求める声も多く寄せられ、本人や家族を孤立化させない仕組みをづくりが求められています。

引きこもりの予兆が見られたら早めに専門機関へ相談を
「8050問題」を抱えた家庭は社会から孤立してしまうことも少なくありません。精神的にも経済的にも余裕がなくなった先に殺傷事件や孤独死が待ち構えていることも。
実態調査を行ったうえで、適切に対応し、引きこもり本人や家族を救っていく取り組みが必要不可欠です。引きこもり状態が長期化および深刻化する前に支援団体や医療機関への積極的な相談を促していきたいところ。
内閣府の調査によると、40歳から64歳の中高年の引きこもりは全国に61万3,000人存在すると言われています。彼らも10代や20代のうちに解決に向けた取り組みを行っていれば、こういった結果にならなかったかもしれません。
引きこもっている事実自体は決して恥じることでもありません。支援団体や医療機関などの専門家に助けを求めることも大切です。
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2020年9月7日 制定