平均寿命の伸びに寄与する要因とは?
厚生労働省が毎年発表している「簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は5年連続で伸びていることがわかりました。
東日本大震災で一時的に前年比マイナスとなったものの数字は伸び続け、2016年には男性80.98歳、女性87.14歳に。
1985年が男性74.78歳、女性80.48歳だったことを考えると、大幅な伸びといえます。
男性よりも女性の方が長生きする傾向にあるのは昔から変わらず、現在では6.16歳ほどの差が現れています。

平均寿命と平均余命はよく混同される概念ですが、平均寿命とは0才児が今後何歳まで生きることができるかの平均値です。いっぽうの平均余命は、ある年齢時点における残り寿命の平均値のことを呼びます。
なぜ、私達はこんなにも長生きなのでしょうか。平均寿命の国際比較を後述するように、日本人が長生きであるということは有名な事実ですが、長生きの理由には食生活や体型などが挙げられるでしょう。
国際的な平均と照らし合わせてみると、日本人の体型はスリムです。
無駄な脂肪を蓄えている量が少ないので、結果として動脈硬化などが起きづらいということが考えられます。
そして、日本食には味噌汁や納豆などの発酵食品が多く、それが長寿につながっているという見方もあります。
また、不衛生な環境で生活することが少ないということも関係しているでしょう。病気の原因となる病原体は特に不衛生な環境下で蔓延するものだからです。
もともとの綺麗好きに加え、衛生に対する意識も非常に高い日本人。
その綺麗好きは世界でも知られており、仕事や家事などでもお掃除を熱心に行うので、海外旅行に出かけてトイレなどの汚さに驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
反対に外国から来られる方は、日本に来てその清潔さに感動するようです。
そうしたさまざまな事情が絡み合って、日本人は長寿なのです。
簡易生命表の一番古いデータは1947年で、当時の平均寿命は男性50.06歳、女性53.96歳でした。
終戦後、経済成長が起きて人々のライフスタイルが著しく近代化。
衛生観念が高まっていくのと同時に、乳幼児の死亡率も減り、寿命もどんどん伸びていったものと考えられます。
他国と比較して見えてくる長寿の傾向
一方、WHO世界保健機関が国ごとに平均寿命発表しています。それによると、1位の日本に2位のスイスが続き、シンガポール、オーストラリア、スペイン、イタリア、アイスランド、イスラエル、フランス、スウェーデンが上位となります。

いずれの国も平均寿命が81歳を超えており、経済的に豊かな国が長寿傾向にあると考えられます。
1位の日本および2位のスイスは、経済発展を遂げた国です。
日本は戦後に焼け野原から経済復興しましたし、スイスは四方を諸外国に挟まれ、厳しい自然環境を有した国でしたが、金融の分野で大きな成長を遂げました。
また、これらの国々は国民の平均所得が高く、生活面でも豊かであることが考えられます。人々の生活レベルが上がると、家計において健康を意識した出費を増やすことや医療費などに支出を割くことができるようになります。
そして、経済が豊かになると医療技術も進歩し、少しの病気では命を落とすことがなくなるというように事態が変化していくでしょう。経済発展で財政も潤い、インフラへの投資が行われることで手軽に医療サービスへアクセスできる環境も整います。
とりわけ先進国において長寿になる傾向があるのは、こういった医療環境進展の背景が影響を与えているようです。
死因の上位を確認してみると…
厚生労働省は年齢別の死因も調査しています。最新のデータによると、90歳男性のケースでがんが15.53%、心臓疾患などが16.25%、脳疾患などが7.52%、肺炎などが16.34%、その他が44.36%となっています。

同様に、90歳女性のケースでは、がんが9.80%、心臓疾患などが19.03%、脳疾患などが9.17%、肺炎が10.86%、その他が51.14%となっています。
その他という項目の詳細は、90歳という高齢を考慮すると「老衰」が多いのではないかと推測できるでしょう。
がんは複数の原因が絡み合って起こるので、予防することはなかなか困難です。一方の心疾患や脳疾患などは、生活習慣を正しくし、運動を定期的に行ってストレスのない生活を送ることで予防できると言われています。
特に見逃せないのは肺炎です。優れた抗生剤が登場しているにも関わらず、肺炎はがん、心疾患、脳疾患の次点、4位にランクインしています。
これは単なる風邪だと思って放置していて重症化することや、そもそも症状が出ていないので気が付かないなどさまざまな理由があります。
高齢者は体が弱っているので、肺炎になると体が一気にダメージを受ける一方、若年層に関しても肺炎で亡くなっている人は減っていません。
肺炎が命にかかわるという事実を国や厚生労働省が周知していく必要があるのと同時に、個々人でも日頃からそのリスクについて意識的に覚えておく必要があるでしょう。
平均寿命の行方は今後どうなる?
事実として伸び続けている平均寿命、いま現在は84歳程度であっても、団塊の世代が後期高齢者に入る2025年前後にはまた伸びていると考えられます。
上述したように、国民の所得向上が平均寿命を押し上げるのであれば、今後の未来はどうなっていくのでしょうか。日本経済は著しい少子高齢化とともに生産年齢(15歳~64歳)が大幅に減少していく社会に突入したことは、皆さんの実感としてあるところでしょう。
現役世代の絶対数が減ることで消費も減り、年々内需が減少していくことが予測されます。
経済の悪化、および福祉の増大による増税などで可処分所得が減ると、健康や医療に割くことができる支出が縮小せざるを得ません。
働く人たちの平均所得も400万円台と伸び悩み、経済が停滞する中で、平均寿命は短くなってしまうのでしょうか。
その一方で、高齢化社会によって老人の数が増えることによって医療の分野に莫大な資金が流入し、医療技術が大幅に進歩するという見方もできるかもしれません。
健康格差が広がる時代を生きる
このままいくと、健康で長生きする人と不健康で生きられない人の「健康格差」が広まってしまう懸念があります。
今や、人生は100年の時代に突入したとの本やワークショップなども注目を集めており、これは老後をどう生きるかという問題にもつながっていくでしょう。
まず、国は健康面での格差を埋めるためにも、予防給付に力を入れるようシフトしていくべきかもしれません。
すでに歯科の分野では、予防歯科が大きな注目を浴びています。
いまは病気になってから病院にかかるだけですが、健康な人は国民健康保険料を安くするといった「健康ゴールド免許」などの提言も、政治側から提言されています。
また、経済環境が厳しくなった上に長生きとなれば、いつまでも健康に働ける人生を私達ひとりひとりが考える必要もでてきます。日頃から健康に留意して、生涯において幸福な人生を送ることができるよう、あらためて意識を高めていく必要があるのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定