これからの季節、ニュースなどでも接する言葉である「ヒートショック」が高齢者にとって意外な落とし穴になるかもしれません。ヒートショックで亡くなる人は年間1万人を超えているとの報告もあり、高齢者の室内における死亡数の実に1/4を占めているのです。
ヒートショックとは?
ヒートショックという言葉を耳にしたがあるでしょうか。
ヒートショックは、暖かい場所から寒い場所へと移動する時、その温度差が体に大きな負担を与えてしまうことをいいます。
これが起こると、意識がなくなったり、深刻な場合は、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こしたりする懸念があります。
ヒートショックは、特にお風呂場で起こりやすい事故。
冬場は室内を暖かくしておくことが日常的ですが、入浴のために寒い浴室に移動するなどして急激に冷えたところで、さらに熱いシャワーを浴びることがあります。
こうしたことが、心臓などに大きな負担を与えるのです。
繰り返す急な温度変化によって体内の血圧が一気に上がり下がりし、心臓だけでなく、血管にも変調をきたします。
心筋梗塞や脳卒中に加え、脳梗塞や不整脈などがお風呂場で起こってしまうこともあるのです。
仮に意識を失うだけだったとしても、転倒して頭を打つ危険性はあり、浴室は滑りやすいことからそうした事故も起こっているようです。
ヒートショックによる死亡者数は年間で約1万人
ヒートショックで死亡する高齢者の数は、年間約1万人。これは、室内で死亡する高齢者の1/4を占めています。夏場の熱中症で死亡する高齢者の数が数百人程度であることを考えると、秋冬のヒートショックは大きな問題だということがわかります。
特に、高齢者は体力が衰えているため、冬場の急激な温度変化についていけず、ヒートショック状態となってしまいます。
消費者庁の調査によると、高齢者の入浴中の溺死事故が多くなっている模様。
2015年には、家庭内における浴槽内の溺死事故が4,804人を超えています。
これは子供も現役世代も高齢者も含めた総数なのですが、溺死者のうちの4,416人、すなわち92%が65歳以上の高齢者で占められているです。しかも、お風呂場での死亡者数は10年前と比べて、実に1.7倍にも増加しています。

月ごとに見てみると、やはり外も暖かい7月、8月は死亡者数が少なく、12月から2月にかけて非常に多くなっています。
この期間中だけで、死亡者数の半分を占めていることが見て取れるでしょう。
これは東京23区内のデータですが、冬場のヒートショックによる浴室での死亡数は概して多くなる傾向にあるので、注意が必要なのです。
ヒートショックが起こる背景とは
これから季節は冬に向かい、非常に冷え込む期間が続いていきます。ヒートショックは冬場に多く起こることをみましたが、具体的にはどのような背景で起こるのでしょうか。
まず、ヒートショックは、暖かい部屋と寒い脱衣所の温度差が10度以上ある場合に起こります。
外の寒さを凌ぐために部屋を暖かくしますが、入浴のために脱衣所へ向かうと一転して寒がりに。
そこから熱いシャワーを浴びて高温の湯船につかるというこの一連の動作が心臓への大きな負担となり、その環境に体がついていかないことから血圧が急激に上下してしまいます。
血圧が上がれば、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの誘因に。
また、血圧が下がれば、今度は脳貧血などを引き起こし、転倒のリスクを高めてしまいます。
浴槽内で脳貧血が起これば、最悪の場合溺死などを引き起こしてしまう可能性もあります。
外気温が低く、同時に脱衣所や浴室の温度が極端に下がっている12月から2月は、入浴中における突然死が非常に多くなっているのです。
入浴時の血圧はどう変化していく?
血圧の上下によって、深刻な症状が引き起こされることがわかりました。では具体的に、入浴時の血圧はどのようなの動きとなるのかを確認してみましょう。
2. 熱いシャワーを浴びて高温の湯船につかることで交感神経が緊張する。これによって血圧がいきなり上昇する。
3. 肩まで湯につかることで水圧で心臓に負担がかかる。これが血圧を決定的に上昇させる。
4. 体がお風呂で温まり血管がひらく。それによって血圧が急激に下がる。
5. お風呂から出ると水圧が失われる。血圧がさらに下降する。
6. 寒い脱衣場に再び出ることで体が再度冷える。熱が奪われないように毛細血管が縮むことで血圧が急上昇する。
一連の流れとしてはこのような形で血圧の急激な上下が起きます。どの段階でも重篤な病気の発症リスクがあり、冬場は特に注意が必要です。ヒートショックによる冬の事故死は夏場の11倍という調査もあることから常に警戒していかなければなりません。
ヒートショックはどのような人に起こりやすい?

先ほどお伝えした通り、入浴中の死亡事故は9割以上を65歳以上の高齢者が占めているというのは直視するべき現状です。では、高齢者のうちでどのような人がヒートショックになりやすいのでしょうか。
たとえば、高血圧や糖尿病、動脈硬化に加え、肥満や睡眠時無呼吸症候群、不整脈などの持病がある人においては特に注意が必要となります。
その他にも脱衣場に簡単な暖房機がない、一番風呂が好き、熱いお風呂を好む、そして飲酒した状態で入浴するなどの習慣がある人も注意です。
そして重要なことに、入浴中に転倒する割合は女性よりも男性に多くなっているのですが、それが深刻な状態を招いて死亡してしまうケースは女性の方が多いのです。
女性は男性に比べて皮下脂肪が多いため、体温調節をうまく行えないということが原因として挙げられます。
また、高齢期になるとヒートショックのリスクは高くなり、体に与える影響がとても大きなものとなります。
ヒートショックを未然に防ぐためにできること
ヒートショックを防ぐには、どのような対策を取れば良いのでしょうか。これまで見てきた通り、冬場における部屋の暖かさと、脱衣場の寒さ、そして浴槽の熱さという急激な温度変化がヒートショックを引き起こします。
そのため、簡易的な暖房機を設置し、服を脱ぐ前に脱衣所を温めるなどの施策は有効に働くでしょう。スイッチひとつですぐに温まりますので、室内との温度差を解消するのに患わしさもなさそうです。
浴室暖房なども洗い場を温めるのに有効ですが、水回りという制約もあり、後から設置することは難しいかもしれません。その場合はシャワーを出して浴室の空気を温めるという方法も有効です。いずれにしても、まずはお風呂場周辺を温め、温度変化を防ぎましょう。
また、食後の血圧が下がっているタイミングでの入浴は避けたいところです。
水を飲んでからお風呂に入ることや湯温を低めに設定する、かかり湯する、半身浴を楽しむなど、試すことのできる方法は沢山。
そして高齢者の家族は特に、入浴中の声かけを気を付けたいところです。
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2020年9月7日 制定