急性膵炎(きゅうせいすいえん)という病気を知っていますか?ネットやテレビなどで、芸能人が罹患したといったニュースにもなる病気としてのイメージが強いかもしれません。
急性膵炎は激しい腹痛と吐き気が特徴で、アルコールの飲み過ぎや胆石をきっかけとして発症します。
腹痛については個人差があり、痛みがひどいからといって必ずしも重症というわけではないようです。
急性膵炎の症状とは?
激しい腹痛が襲う急性膵炎
急性膵炎はその名の通り、急に症状が発生する特徴をもち、初発症状のうち88.6%を腹痛が占める病気。
吐き気もひどく、背中に激痛や発熱・悪寒があったりと、全身に症状がみられるようになります。
これらのような激しい痛みを感じる症状を伴い、重症化すると死亡することもあるのです。
しかし、腹痛は激しいものからそれほど苦しくないものまで個人差が存在。特に高齢者ではそれほど痛みがない場合もあるようです。腹痛がひどいから確実に重症であるというわけではなく、痛みとの相関はないという報告もなされています。
医学の発展にともなって死亡率は下がりつつある一方で、重症化して運ばれる人が多いことは事実であり、早めの発見と早期治療がカギとなる病気です。
急性膵炎となる膵臓(すいぞう)はみぞおちからへそにかけての間にあり、厚さ2センチ長さ15センチ程度で、重さはおよそ100グラムです。大きさは30代にピークを迎えますが、高齢となるにつれ、だんだんと小さくなるという特徴を有しています。
血糖をコントロールし、インスリンやグルカゴンを生成して血糖値の上下をコントロールする膵臓は、消化酵素を含む膵液(すいえき)という消化液も分泌する大切な臓器なのです。
急性膵炎は高齢になるほど死亡しやすい!
そんな急性膵炎ですが、従来日本では発症することはあまりなく、比較的珍しい病気でした。
事実、今から30年前の1987年には年間1万4,500人の患者しかいなかったものが、その20年後の2007年には5万7,560人と約4倍に増加しているというデータが存在しています。

そのなかでも、特に高齢者は致命率が上昇する傾向にある点に気をつけなければいけません。60代までは7%未満だった致命率が、70代に入ると一気に17%まで跳ね上がり、80代以上でも依然として12.6%を示しています。
30歳より若い年齢で急性膵炎になった場合の死亡者はいなかった一方で、高齢となるにつれて死亡リスクが高まっていくこの病気。関連した病気には多臓器不全や敗血症、心不全といったものがあり、これらを併発することが死亡の原因となっているようです。
急性膵炎にかかる背景
アルコールと胆石が主な原因!
そんな特徴のある急性膵炎はなぜ起こるのでしょうか。発症に関する最も大きな原因は「アルコール」であることが判明しており、「胆石による胆石性膵炎」がそれに続きます。

2007年時点のデータですが、1年間で2,256人の急性膵炎患者が発症し、そのうち31.4%はアルコールが原因でした。
しかしこの背景には男女差が。
統計上、男性にアルコール性の急性膵炎が多い一方で、女性には胆石性の急性膵炎が多く、胆石そのものも女性に多いという傾向があるのです。
アルコールに関しては、毎日150ml以上を数年飲み続けることによって膵臓の“くだ“が詰まり、急性膵炎を引き起こす可能性があります。
また、アルコールを摂取するタイミングでは、脂分の多いものを食べてしまいがちになるもの。
これらの偏った食事ををきっかけとして急性膵炎にあるケースが大きな割合を占めているのです。
そして、遺伝子変異によって遺伝する可能性があることも一部の患者で確認されています。
嚢胞性繊維症(のうほうせいせんいしょう:遺伝性疾患の一種)を発症していたり、その遺伝子を持っていたりする人は、慢性膵炎や急性膵炎になるリスクが高くなることもあるようです。
急性膵炎にかかりやすい人は?
では、どのような人が急性膵炎にかかりやすいのでしょうか。
まず男性は、女性と比べて2倍の患者数となっているという事実が。
男性には脂っぽい食事を好む人が多いことから食生活が乱れることが多く、それに付随してアルコールを飲む機会が多くなってしまうと考えられることは上記した通りです。
慢性的な飲酒を続けている人は急性膵炎となりやすいことから、過度の飲酒が体に良くないことは明白でしょう。
食生活は意識的に変えられるものであり、急性膵炎の致命率が急激に高まる高齢者となる前に、リスクを低減させるような食事内容にシフトするのが賢明となりますね。
急性膵炎の対応策について
急性膵炎を治療するには?
では、急性膵炎の治療はどのようにして行われるのでしょうか。急性膵炎の治療はとても過酷で、なんと絶飲絶食が行われます。水分や栄養を取り込む行為は、膵臓を刺激してしまうからです。
その状態で鎮痛剤を使用して腹痛をやわらげ、蛋白分解酵素阻害薬というものを使って膵酵素の働きを抑えます。重症化していない限りはこの治療で軽快するため、基本治療が効果的であることがわかります。
しかし、重度になると合併症を伴うことも多いため、集中治療室(ICU)での治療が必要になるケースも。血液浄化療法といった特別な治療も必要になる場合もあるのです。
胆石性の急性膵炎時には、内視鏡手術や胆管ドレナージ(胆管にチューブを挿入し、胆汁を体外に流すという方法)が必要となることもあり、重症化には気をつけなければなりません。かなり専門的な治療が必要となるため、専門施設に送られることもしばしばあります。
急性膵炎の予防方法
治療方法はあるにせよ、一番は急性膵炎にかからないこと。そのための予防方法にはどのようなものがあるのでしょうか。急性膵炎になるきっかけとして、アルコールや脂っぽい食事があるとお伝えしましたが、やはりアルコールの過剰摂取は問題です。

長期間アルコールを過度に飲酒し続けることは急性膵炎のリスクを高めるため、飲酒を控えることが直接の予防となります。
急性膵炎になった患者を調査したところ、エタノール換算で1日に100g以上のアルコールを摂取した場合、急性膵炎になるリスクが5.4倍になることがわかりました。
それほど多く飲んでいるつもりがなくとも急性膵炎になるリスクは十分あり、慢性的なアルコールの摂取は病気のリスクを招きます。
急性膵炎を発症すると飲酒を制限されるため、若い時から飲酒の習慣を改善しておくことで、生涯にわたってお酒を楽しむことも可能になります。
また、カロリーの高い食事をした後に激しい腹痛が起こることがあり、ケーキ等のデザートが引き金になる場合も。重症化すれば死亡率は20%となっており、異変を感じたらすぐに通院し、診察を受ける必要があります。
今回は急性膵炎についてみてきました。アルコール等を引き金にして起こる急性膵炎は激しい腹痛と吐き気を伴い、入院が必要にもなる怖い病気です。日頃の食生活と飲酒習慣を見直して、急性膵炎の予防に努めていきたいですね。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 5件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定