ケアマネージャー資格の底上げで報酬を増加
ケアマネージャーに求められる”総合力”
ケアマネージャーは要介護状態の方が介護保険サービスを円滑に利用するための、言わば”舵取り役”であり、その仕事は多岐に渡ります。
その中でも、特に大きな役割として挙げられるのが、介護保険サービスの利用支援。
要介護者とその家族が直面している問題を把握するアセスメントや、いつどのようなサービスを利用するかを定めるケアプランの作成、そして、サービス利用法が適切かどうかをチェックするモニタリングなどを行います。
また、これらの作業に関連して、医療・介護サービス事業者間の調整や、国保連(国民健康保険団体連合会)に提出する給付管理票の作成業務などを担うこともあるので、コミュニケーション力や事務処理能力など、”総合的な力”が求められる職業だと言えるでしょう。

このケアマネージャー、資格の取得には「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要がありますが、ここ数年合格者数が減少しています。
2017年度試験こそ合格率が21.5%を超えましたが、2010年から2016年までは20%を超えない低空飛行ぶり。
ケアマネージャーになろうとする人も、そして試験に合格してケアマネージャーになる人も、以前に比べてずいぶんと少なくなっているのが現状です。
ケアマネージャー管理者要件の厳格化が基本報酬引き上げのカギ
そんなケアマネージャー事情ですが、2018年の介護報酬改定で、報酬についての見直しが図られています。
その内容の1つ目が、ケアマネージャーが所属する「居宅介護支援事業所」の管理者要件を厳格化し、その分の基本報酬を引き上げるというものです。
現行制度では、ケアマネージャー資格を有していれば「居宅介護支援事業所」の管理者になることができましたが、今回の改定によって、2021年度から「主任ケアマネージャー」の資格が必要になります。
主任ケアマネージャーになるには、ケアマネージャーとして通算5年以上の勤務経験と70時間の研修を受けることが課せられ、資格を維持するには5年ごとに46時間の更新研修を受講しなくてはいけません。
一方で、研修内容には後輩のケアマネージャーの指導法や人事管理の手法なども含まれており、居宅介護支援事業所の管理者としての知識や技術を学ぶことができるので、キャリア形成には大きな経験となる可能性が十分にありそうです。
介護と医療の連携を高め、より安全な介護を
退院時カンファレンスの参加を重視する
ケアマネージャーに関する介護報酬改定の2つ目のポイントは、利用者の入退院に係る、病院側との連携に関してのこと。
現行制度では、入院時に利用者の情報を医療機関側へ提供することで算定される「入院時情報連携加算」は入院後7日以内に”医療機関を訪問して情報提供した場合”が月200単位、”訪問以外の方法で情報提供した場合”が月100単位となっていました。
それが改定後は、方法を問わず”入院後3日以内に情報提供した場合”に200単位、入院後7日以内に情報提供した場合に100単位とされます。
また退院時に、利用者の心身状態を知るための情報収集をした場合、情報収集のために医療機関の職員と何回連携・連絡を取ったのか、退院時カンファレンスに参加したかどうかによって決まる介護報酬である「退院・退所加算」が算定されますが、これが一部大幅に報酬アップとなりました。
例えば、現行制度では”連携回数1回、カンファレンス参加あり”の場合は300単位ですが、改定後は2倍の600単位となっています。改定にあたって、ケアマネージャーのカンファレンスへの参加が非常に重視されていることがここからも明白です。
医療機関との連携で算定される新加算”Ⅳ”
さらに、今回の改定ではケアマネージャーに日頃から医療機関との連携を進めてもらうべく、「特定事業所加算Ⅳ(月125単位)」が新設されました。
この改定内容の算定要件としては
- ターミナルケアマネジメント加算を年に5回以上算定されていること
- 「退院・退所加算」の算定に関係する「医療機関との連携」を年間35回以上行っていること
- 特定事業所加算Ⅰ~Ⅲのどれか1つを取得していること
の3つが必要です。
特定事業所加算Ⅰ~Ⅲとは、事業所の人員配置の体制(ケアマネージャー、主任ケアマネージャーの配置数など)、利用者との24時間連絡体制の有無、地域包括支援センターとの連携などを基準にして算定される介護報酬のことを指します。
この特定事業所加算の中に、新たに”Ⅳ”が設置され、要件として退院・退所加算に係る「医療機関との連携を年35回以上行っていること」が盛り込まれたわけです。
なお、この特定事業所加算Ⅳは2021年度から施行されることが定められています。
利用者が末期の悪性腫瘍である場合のケアプラン修正を簡素化
ケアプラン修正について「ターミナルケアマネジメント加算」算定へ
ケアマネージャーが関係する介護報酬改定3つ目のポイントは、末期のがん患者のケアプランを修正する際の手続きに関することです。
現行制度では、ケアプランを容体急変時に適した内容にへと変更する場合には、各介護サービスの担当者を招集して「サービス担当者会議」を開く必要があります。
しかし現場からは、これでは非常に手間がかかるので、会議の開催を省略した方が良いとの声が高まっていました。


こうした現場の声を受け、今回の改定から利用者が末期のがん患者で、1ヵ月以内に容体が急変すると医師が判断した場合は、サービス担当者会議の開催を省略できるようになります。
利用者の容体に合わせたケアプランの内容修正を、会議を開かずにできるようになったわけです。
その改定に合わせ、末期がん患者の利用者を担当する際には、会議を開かずにケアプランの内容を修正することで、新たに新設される「ターミナルケアマネジメント加算(400単位)」が算定されることになりました。
ただ、算定にあたってはケアプランの内容を修正するだけでなく、利用者の自宅を高い頻度で訪問することや、利用者の容体に関する情報を主治医・介護サービス事業者と共有すること、利用者と24時間体制で連絡がとれるようになっていることなど、いくつかの条件をクリアする必要があります。
ケアマネージャーの加算改定は医療機関にも大きな影響を与える
また、2018年に実施されるケアマネージャーの「退院・退所加算」に関する介護報酬改定によって、医療機関側も大きな恩恵を受けます。
というのも、退院後の療養生活をサポートするケアマネージャーなど3者以上と協力し、退院後の説明や指導を患者に行うことで得られる「退院時共同指導料2」の加算条件を満たしやすくなるからです。
「退院時共同指導料2」の診療報酬は2,000点ですから、医療機関側にとって大きなメリットになります。
それには、今回の改定で退院時カンファレンスに参加するケアマネージャーが増加するという見込みがカギとなっています。
今年の介護報酬改定は、医療機関との連携を強化することでケアマネージャーの報酬が上がるよう制度化されていますが、医療機関側がより多くの診療報酬を得る機会を生む内容でもあります。
両者のいわゆる”利害関係”が一致するため、連携・協力関係がよりいっそう強まっていきそうです。
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2020年9月7日 制定