介護を学ぶ学生は12年間でおよそ3分の1に減少!介護業界を救うには「多様な人材」の確保が重要
介護を学ぶ学生は過去最低を記録し、6,856人に
介護需要が高まる一方で、介護福祉士目指す学生は激減
今年9月の日本介護福祉士養成施設協会の発表では、2018年度に介護福祉士を養成する大学や専門学校への入学者数は6,856人と、過去最低を記録したことがわかりました。
入学者数は2006年には約1万9,300人となっていましたが、この12年間でおよそ3分の1近くまで減少したことになります。
この調査は、協会が介護福祉士を養成するコースがある全国の大学・専門学校合わせた365校を対象に集計したものです。
入学者の減少を受け、定員充足率も44.2%と低い水準にとどまっています。
そのため、2018年度春には、介護福祉士に関する学科を閉鎖した学校は全国で11ヵ所に上るとされています。
今後、団塊の世代が75歳以上になるという2025年には、介護業界人手不足が加速し、33万7,000人の人材が不足するという推計がなされています。
厚労省は16年度に190万人だった介護業界で働く人材を、25年度までには55万人増やす必要があるとしてきました。こうした介護業界の需要が高まるなかでの教育機関における入学者の減少は、業界の将来にかかわる大きな問題です。
介護福祉士養成校の閉鎖や募集停止が相次ぐ
こうした介護福祉士を養成する学校は、2008年のピーク時には434校ほど存在していましたが、2017年度には377校となり年々減少傾向にあります。最盛期に比べて、養成校は13%以上も減っているのです。
また、養成コース自体を継続させている学校であっても、定員割れを少なく見せるため、定員数を半分に減らすなどの対処をする学校も増えており、養成校全体の定員数も、2007年度から9,000人以上減少しています。
こうした流れを受け、日本介護福祉士養成施設協会では、入学者激減対策特別委員会を設け、この問題の解決策を検討していますが、抜本的な対策を行うことができていません。協会は「現状は非常に厳しく、回復もなかなか見込めない状況」と、懸念を表明しています。
国も入学者の減少に対応するため、卒業後に介護業界の仕事に就職するのを条件として、返済が免除されるという学費の貸付制度などを開始しましたが、こちらも大きな効果が上がっているとは言えません。
なかでもこの傾向は地方に強く、東北6県にある37校では、2017年度の入学者は662人と、定員1,572人に対して42.1%にとどまってしまっている状況です。
若者の介護離れが起きる原因とは?
学生減少の背景は「介護職のイメージ」にあった
こうした介護離れの原因は、景気の変化によるものだという指摘があります。もともと、介護業界は、景気が悪化すると安定職として人気が高くなる傾向にあるものの、好景気では他業種に人材が流出して人手が不足するという特徴があると言われています。
また、同じ介護職のなかでも、景気や人手不足に影響されて都市部での有効求人倍率が上がり、人材が都市部に流れ、地方における人手不足に拍車をかけることになっています。
もうひとつの大きな要因としては、身体への負担の大きい仕事である、不安定、薄給であるなどの介護職へのネガティブなイメージです。
厚生労働統計協会が発表した資料では、4年制大学介護福祉コースの学生に介護職のイメージについてアンケートをしたところ、1回生から4回生までの各学年全てで否定的なイメージが肯定的なイメージを上回るという結果が出ました。
課題もあるが徐々に待遇の改善も
一般的な介護職へのイメージが全て現状に即しているというわけではありません。
特に、給与に関しては、昨年度の介護報酬改定によって介護職員処遇改善加算の拡充がなされるなど、国も介護職の賃金を引き上げるための施策が多く行われています。
介護労働安定センターが発表した資料によれば、2008年度に16万2,900円であった平均給与が2013年には19万3,600円と、18.8%上昇しています。
また、同じく介護労働安定センターが2014年に発表した資料によれば、正規職員の47.5%、非正規職員の68.9%が残業がないとされるなど、労働環境が劣悪であるというイメージも、必ずしも全てが事実というわけではありません。
しかし、こうした待遇の改善がなされているということが十分周知されておらず、いまだに以前のイメージを引きずられている方も多いのが現実です。
そのため、保護者を始めとした周囲の人間が、介護業界に入ろうとした学生に対して引き留めるケースなども多いとされています。
今後は、介護業界のイメージアップを図ることも、問題の解決に重要となってくるでしょう。
介護業界を救うのは外国人か、それとも中高年?
外国人留学生は前年比の2倍に急増している
上記のような日本人学生の介護業界離れが加速するなかで注目されているのが外国人留学生の増加です。
昨年9月に施行された入管法の改正で、外国人の在留資格に介護が加わり、同じく昨年の11月に、介護が技能実習制度の対象になったことで、介護を日本で学ぼうとする外国人留学生は増えています。
近年では介護専門学校の入学者のほぼ6分の1にあたる16.7%、1,142人がこうした外国からの留学生で占められています。外国人留学生の数は昨年の591人からほぼ倍増しており、今後も介護分野での留学生は増加すると見られています。
現在、こうした留学生が、減少する日本人学生の穴を埋めつつあるのです。留学生の出身国のうち、542人を占めるのがベトナムで、中国からは167人、ネパールは95人と続き、アジアを中心としながらも、20ヵ国から介護福祉士を目指す学生が集っています。
今月に入ってから閣議決定が行われた入管法の改正案では、介護福祉士になった外国人が、条件次第では日本に永住できる資格を得ることができるようになるとされています。
こうした人々が将来的には、日本の介護業界を担う人材として、現在業界全体の慢性的な問題となっている人手不足の解消に貢献するのではないかと期待されているのです。
人材不足解決のカギは多様な人材の確保にある
もちろん、外国人に頼るだけではなく、介護業界に多くの人々が参入するように各方面で働きかけが行われています。
国は既に、勤続10年以上となるベテランの介護福祉士を主な対象とし、来年10月から処遇改善を行う方針を発表しています。
これは、専門性の高い人材を優遇することで、わかりやすいキャリアアップのモデルを構築しようとするものです。
介護業界が不安定であるという懸念を抱く人々が、安心して介護職に就けることを狙いとしています。
また、資格を有する専門性の高いスタッフを多く雇用する事業者に対して、報酬上の評価の実施も検討されています。専門的に介護を学ぶことでメリットが得られるようにし、学生が介護を学ぼうとするモチベーションを高めようとする施策も考えられているのです。
さらに、定年退職者や子育てを終えた女性などをターゲットとし、「介護入門研修」と呼ばれる講習会を全国で展開されています。業界へ多様な人材が参入することを目指した動きも活発となっています。
専門的なスキルを持った人はもちろん、さまざまな国籍、あるいは年齢層の人々が、介護業界に参入できるように条件を整えることが、今後の介護業界の人材確保には求められているのです。
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2020年9月7日 制定