自粛ストレスが「帯状疱疹」発症の引き金に
長期化する自粛生活が免疫力の低下や「帯状疱疹」発生を招く危険性
5月17日、「笑点」にリモート出演した三遊亭円楽氏が、帯状疱疹の症状が出たことを告白しました。
番組冒頭の挨拶で、「神経が細いせいでしょうか。帯状疱疹が出まして」と明かした円楽氏は、ストレスが原因ではないかと自己分析。外出自粛生活が続く中で、余った時間を医者通いに使っていると伝えています。
専門家によると、緊急事態宣言の後、帯状疱疹やくちびるヘルペス、じんましんなどの症状により外来治療に訪れる患者数は増加していると言います。
専門家は、この理由について、外出自粛による生活リズムの変化や、ストレスが原因ではないかと分析しています。
自粛生活が長引く中、運動量が減ることで免疫力が低下してしまう危険性は、以前から懸念されていました。
今回話題となった帯状疱疹も、外出自粛生活がもたらした健康被害の1つと言えるでしょう。
帯状疱疹によって合併症が引き起こされることも
帯状疱疹とは、ヘルペスウイルスの一種である「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって引き起こされる病気です。
このウイルスは感染者の咳やくしゃみなどにより、飛び散ったウイルスを吸い込むことによる飛沫感染や空気感染に加えて、感染者の体液などに触れることで感染する接触感染が主な感染経路です。
また、「水痘・帯状疱疹ウイルス」は非常に感染力が強く、子どもの頃に感染を経験する人がほとんどです。
はじめて感染した際には、2~3週間の潜伏期間を経て、水ぶくれが全身に現れる水痘(水ぼうそう)を発症します。
水痘自体は、1週間程度で症状が治まるケースがほとんどですが、体中に入ったウイルスは脊髄の近くにある神経節と呼ばれる場所に潜伏し、体中に残り続けます。
潜伏中のウイルスが、疲れやストレスなどによって免疫が落ちた際に再び活動を始め、発疹や水疱などを引き起こすというのが、帯状疱疹です。
ほとんどのケースでは、体の左右どちらかだけに症状があらわれ、3週間程度で治まります。
しかし、重症化すると全身に症状が現れます。また、首から上に症状が出た帯状疱疹は、重症化した際のリスクが高く、顔面神経麻痺や角膜炎、網膜炎、難聴などの合併症を引き起こす場合もあるため注意が必要です。

発症率のピークは70代
高齢者の発症割合が高い
帯状疱疹の特徴の1つとして、高齢者の発症割合が高いことが挙げられます。
1997年から宮崎県において実施されている調査によれば、帯状疱疹の発症数は50歳以上で発症率が大きく増加し、発症数では60代、発症率では70代がピークとなることが発覚しています。

1,000人当たりの発症率で見ると、49歳以下の場合は1年で2.15人~2.90人という発症率であるのに対し、50歳以上は5.31人~8.41人となっており、2倍以上の差があるという結果に。
調査結果から、帯状疱疹は高齢者にとって、注意が必要な病気であるということがわかります。
また、1997年の全体の発症率は1,000人当たり3.61人となっていましたが、2014年には5.18人となっており、約1.4倍にの増加しています。
帯状疱疹患者は夏に増加する
また、帯状疱疹には発症しやすい季節があります。
調査結果によると帯状疱疹の発症数は夏季に増加し、8月がピークであることが判明。
2月は8月に比べて発症数が77.9%低く、1年の中で最も発症数が少ないことがわかっています。
四季別に1997年から2014年までの発症数を累計すると、6月から8月の夏季は2万5,111人であるのに対して、12月から2月の冬季は2万1,039人となっています。
紫外線や湿度の影響で水痘・帯状疱疹ウイルスの感染性が弱まるため、夏季には水痘が減少すると考えられています。
その結果、水痘が流行ることでその抗原への免疫機能が⾼まるブースター効果(1度体内で作られた免疫機能が、再度抗原に接触することによって免疫機能が⾼まること)がなくなることで、帯状疱疹が増加すると推察されています。
一方で、水痘の発症率は冬季に増加することが判明しており、帯状疱疹の発症数が増加する季節と真逆になることがわかっています。皮膚に現れた症状が治まった後も、痛みが続く場合がある
高齢者は「帯状疱疹後神経痛」にも注意
加えて、帯状疱疹は、発疹や水疱などを引き起こす症状や、顔面神経麻痺や角膜炎などの合併症のほかにも、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼ばれる後遺症が残る場合があります。
これは皮膚に置現れた症状が治まった後に、発症した部分に痛みが残り、焼けるような痛みや刺されるような痛みが伴うというものです。
また、感覚が鈍くなる「感覚鈍麻」と言われる症状や、多少の刺激でも痛みを感じるようになる「アロディニア」と呼ばれる症状が発症するケースも報告されています。
PHNは、帯状疱疹を発症する際にウイルスが神経線維を傷つけてしまうことが原因であると考えられており、合併症としては最も発症頻度が高い症状です。
また、加齢とともに発症する確率が上昇することもわかっており、50代以上の約2割がPHNを発症するとされています。

PHNは、症状を完全に取り除く絶対的な治療法はないとされており、薬物治療や神経ブロック療法など、痛みへの対処をメインとした治療が行われ、それが長期に及ぶことも少なくありません。
そのため、PHNを発症してしまうと痛みとうまく付き合っていく生活を強いられることになります。
一度発症すると体内から菌が消えない…抑制療法で再発防止
さらに、「水痘・帯状疱疹ウイルス」の厄介なところは、一度体に入り込んだウイルスを完全に除去できないということです。
日本では、ヘルペスウイルスに対する抗ウイルス薬として「バラシクロビル」などが承認されていますが、この薬はウイルスの増殖を抑えるというものであり、除去をする効果はありません。
そのため、水痘にかかった経験がある人は、全員帯状疱疹やPHNを発症する可能性があるということになります。
こうした前提のもとで、帯状疱疹を予防するためには、体内のウイルスが再び活動をしないように、免疫力や体力を落とさない生活をすることが重要です。
外出自粛という生活の大きな変化で、こうした症状が増えたことからもわかる通り、ストレスや不規則な生活は発症のリスクを高めてしまいます。
そのため、バランスの良い食事を摂ることや適度な運動を行うことで生活習慣を改善しすること。そして、ストレスを溜め込まないために、自分に合ったリラックス方を身につけ、健康的な生活を送ることが重要です。
コロナ禍で生活に制限がかかる部分も多いと思いますが、できるだけ健康的な規則正しい生活を送ることが、2次被害とも言うべき帯状疱疹への対策となります。
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2020年9月7日 制定