介護職員へ慰労金支給が決定
感染者がいなくても5万円、いた場合は20万円を支給
先日、緊急事態宣言が解除されましたが、東京都や北九州市などで再びクラスターが発生するなど、新型コロナの流行は収束する気配がありません。
そんな状況下で、介護業界への支援を政府は検討しています。
2020年5月27日、政府は第2次補正予算案を閣議決定しました。
その中で、新型コロナの感染防止策となるマスク・消毒液などの資材確保や、介護職員への慰労金給付などの支援を行うため、4,132億円の予算を確保。
このうち介護職員への慰労金は、感染者が発生したり、利用者が濃厚接触者となった施設では1人20万円、そうでない場合は1人5万円が支給されます。
給付対象となるのは、介護サービスの関係者すべてとなっており、職種に制限はかけないという方向で検討されています。
支給方法については、6月1日に厚生労働省の社会保障審議会分科会の中で議論され、事業所を経由する形が予定されています。
個々の介護職員に対して迅速に、かつ必ず慰労金が行きわたるようにするべきという意見が有識者より挙がっています。介護業界に対するケアの必要性が重要視されています。
デイサービスで経営難に悩む声多数…背景には公的な支援の不足が
以前より、新型コロナウイルス感染症をめぐる介護業界への悪影響が懸念されていました。
全国介護事業者連盟は5月18日、デイサービスなどの通所介護事業所を対象としたアンケート調査の結果を公表。
この調査は、全国727ヵ所の通所介護事業所から回答を得たもので、調査結果によれば、事業所の90.8%が経営面で新型コロナウイルス感染症の影響を受けたと回答しています。

2020年2月第4週と、4月の第4週の売り上げについても比較。経営面で影響を受けていると回答した事業所のうち55%が10%以上売り上げが落ち込んでいると言います。
利用者や家族などが、感染防止のために介護施設の利用を控える動きが広がったことが原因の一つとして考えられます。
それに加えて、マスクや消毒液などの購入費用かさんだほか、人手不足なども影響しています。
特に介護現場のマンパワーの不足は深刻で、発熱などで経過観察を必要として出勤できない職員や、感染リスクを考慮して休職、あるいは退職した職員が少なくありません。
デイサービス、上位の時間区分で介護報酬を算定可能に!
新たな介護報酬の算定ルールが6月1日から適用
厚生労働省は慰労金のほかにも、介護報酬の算定ルールについて、特例を打ち出しています。
同省は、通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護など、デイサービスを取り扱う事業所に対して、臨時的な算定ルールを適用するとしています。
これは、月あたり一定の回数まで、実際に提供したサービスの時間より2区分高い報酬を算定可能にするというものです。
例えば、2時間以上3時間未満のサービスの提供を行った場合では、その2区分上となる4時間以上5時間未満の報酬を算定することが可能となります。
この算定を行える回数は、事業所において、提供された回数が最も多い時間区分によって決まる仕組みとなっており、5時間未満が最も多い事業所では月1回まで。
それ以上の場合は、「サービスの提供回数の合計を3で割った数と4回のうち、少ない方を可能な回数とする」としています。
この特例は6月1日から適用されます。算定の際に、ケアマネージャーとの連携や、事前に利用者の同意を得ることが条件です。

同省では、この特例での請求を行うにあたって、通所介護計画やケアプランで決められたサービス提供回数との整合性をとる必要があることを注意喚起しています。
ほかにも、事業所が作成する介護給付費明細書、および居宅介護支援事業所が作成する給付管理票のそれぞれに、特例の請求を行ったことを反映させることや、区分支給限度基準額については変更がないという点を挙げています。
ショートステイと通所リハでも報酬増
厚生労働省は、通所介護だけではなく、通所リハビリテーション施設やショートステイに関しても同様の特例を打ち出しています。
通所リハビリテーション施設では、サービスの提供時間のうち最も多い区分を、3時間未満、6時間未満、8時間未満の3つのグループに分類。
3時間未満のグループは、サービス提供回数のうち、月1回まで2区分上位の報酬区分にて算定が可能。
6時間未満のグループは、1ヵ月のサービス提供回数を6で割った数と2回を比較し、少ない方の数について2区分上位の報酬区分にて算定が可能。
8時間未満のグループは、1ヵ月のサービス提供回数を3で割った数と4回を比較し、少ない方の数について2区分上位の報酬区分にて算定が可能としています。
ショートステイでは、サービスを提供した日数を3で割った数を上限回数として「緊急短期入所受入加算」の算定が可能に。
これは本来、ケアプランなどで計画されていない利用者を、緊急で受け入れた場合に行われる加算のことです。
厚生労働省は、緊急で受け入れを行った場合でも、合計14日分までは特例と合わせた加算が可能としています。
新型コロナ収束後も介護業界への公的支援は必要
平時から厳しい状況の介護現場。単発の給付金だけで支援は十分なのか
こうした政府の対策について、全国老人福祉施設協議会の平石会長が歓迎するという声明を出すなど、業界からは肯定的な声が数多く挙がっています。
その一方で、有識者からは元々介護職の平均賃金が低いことなどを理由に、新型コロナウイルス感染症が収束したとしても、人手不足の状況は変わらないのではないかと指摘されています。
そのため、今後も今回行われたような支援の継続的な実施を望む声が高まっています。
国税庁が公表している2018年の民間給与実態統計調査結果によれば、医療・福祉業界の平均年収は約397万円です。
全業種の平均である約440万円に対して、43万円も少ない状況となっています。

有識者の中には、「来年度に行われる介護報酬改定について、人手不足が解消されるような待遇の改善を行うことが、介護業界に対する支援の本丸ではないか」と指摘をする人もいます。
第2波・第3波を前提とした大幅な介護報酬アップが不可避
6月7日時点で、日本国内における新型コロナの感染者は1万7,141人、死者は916人となっています。
これは世界的に見ると少ない部類ですが、今後の見通しを不安視する人も多くいます。
約100年前に世界的な流行を見せたスペイン風邪は、最初の流行が終息したのち、第2波とよばれる再流行が発生しました。
この際、アメリカやフランスなど一部の国では、最初の流行と比較して致死率が10倍になるなど、より深刻な状況が報告されています。
こうした前例を考えると、介護業界は、今後第1波である現在の流行を切り抜けた後も、第2波・第3波のために対策を徹底し続ける必要性があると考えられます。
そのため、マスクなどの衛生用品の費用が経営を圧迫したことなどを教訓に、これらを配給制にするなど、介護をめぐる制度の刷新が必要であることは明白です。
また、待遇改善や介護現場のマンパワーの不足の根本的解決策が求められています。
ある意味、新型コロナウイルス感染症の流行は、介護業界が以前から抱えていた問題を浮き彫りにするきっかけであると言えるかもしれません。
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2020年9月7日 制定