「ロボットには介護できない」は本当なのか。現場にAIを導入する問題点とは?
2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、人口減少と相まって、高齢化社会がピークを迎えるとされています。
これがいわゆる「2025年問題」ですが、その2025年問題と人口減少による働き手の不足・介護労働力不足の代わりに急速に普及しようとしているのが、ロボット・AIの導入です。
介護ロボットには、ビッグデータ、AI、IoT(Internet of Things モノのインターネット)が欠かせないのです。
2025年にはロボット産業そのものの市場は5.3兆円、2035年には9.7兆円と大幅な伸びを見せることが予測されています。
介護業界においても、ビッグデータや人工知能(AI)を活用したロボットが急速に普及しつつあります。
2012年には0.9兆円、2015年には1.6兆円だったものが、2020年頃には2.9兆円に増え、その後は指数関数的に需要が増えていくものと見込まれています。
この大幅な介護労働力の不足を補うために生まれた介護ロボット需要ですが、導入することでいったいどのような影響、メリット・デメリットがあるのでしょうか。
介護業界にロボット・AIが導入されることによるメリット
まずはメリットとして、人手不足の解消・介護スタッフの負担軽減が挙げられます。人口減少時代に入った日本では、サービス業を中心に負担の重い仕事の回避が起こっており、それは重労働の介護分野も例外ではありません。
たとえば介護予防ロボット「パルロ」。
パルロは、認知症を予防するためのロボットです。
インターネットとつながっており、クイズやゲームなどを行いながら、介護施設の利用者とコミュニケーションを取ることができます。
5歳の男の子の声をイメージして作られており、孫の相手をしているような気分になれるのです。
このパルロが、10年後に700万人まで増えると言われている認知症患者の予防、改善に役立つと言われていることをご存知の方も多いでしょう。
インターネットを通じて学習し、毎日違うクイズを出して遊ぶこともできます。
それによって職員の負担も軽減され、他の介護ケアサービスに力を注ぐことができます。
これも人手不足解消の一環です。パルロやPepper(ペッパー)などが、全国の介護施設で使われつつあります。認知症予防に最適なAI搭載の介護ロボットの導入は欠かせなくなっていくでしょう。
介護スタッフの肉体的な負担の軽減
介護スタッフにとっては着替え、入浴、排泄等の介助は重労働です。
負担が重く、腰痛が原因で介護業を離職する人も少なくありません。
ロボット、パワードスーツなどの導入は、この負担を和らげてくれるでしょう。
最近の介護スーツは進化しており、体の動線にあわせて複雑かつなめらかな動きもできるようになっています。
少しの力で、最大限の力が発揮できるパワードスーツはロボット化の最たるものです。
体への負担がが軽減されれば、介護をやってみたいと考える方も増えるのではないでしょうか。また、少人数でも仕事を回せるようになるので、人手不足の解消にもつながります。
自立的生活が可能に
介護のパワードスーツは介護スタッフだけでなく、高齢者にとっても役に立ちます。
特に、筋力が衰えた下半身などに身につけることによって、生活の援助になります。
肉体的に衰えた部分をロボットによってサポートし、自立した生活が可能となります。
すでに、軽量で装着しやすいパワードスーツが開発されつつあり、実用段階に入っています。
企業だけでなく大学などでも研究されており、今後は幅広い普及が見込まれます。今以上に普及が進めば、これまで人力でのケアが必要だった高齢者にとっても自立した生活が可能となり、健康寿命の躍進に大いに役立ってくれるのです。
介護施設の集客になる
2025年問題に向けて介護業界は伸びつつある業界であり、施設介護への参入も増えてきます。
そこで今後は、いかにして入居者を集客するかも課題になってくるでしょう。
その段階で、「うちではPepperを使って認知症予防に役立てています。
パロを使って癒し系の介護ロボットを導入しています」などと宣伝すれば、集客する効果を得ることができるでしょう。
今後は、いかに資産を持った高齢者を誘導していくかが介護業界の報酬向上の焦点でもあり、お金を使ってもらえるかが鍵になってきます。
そこで、主に経済的にゆとりのある高齢者を集客するために、最先端のロボットやAIを使って合理的かつ未来的に介護を行っていることをアピールできれば、集客することが可能となるでしょう。
介護業界にロボット・AIが導入されることによるデメリット
ここまで見てきたように、介護業界にロボット・AIを導入することによるメリットははかりしれません。しかし、当然のことながらデメリットもあります。
価格が高い、お金がかかる
介護ロボットは価格が高く、初期費用がかかります。
福祉用具のように介護保険の対象にはなっていないため、導入までのハードルは高めといったところが難点です。
それはすなわち、利用者の利用代金に上乗せされていくものなので、福祉用具と比べて割高になる介護ロボットの導入には、抵抗を感じる事業者も少なくないでしょう。
また、同様に管理スペースなどにも費用はかかります。使い方を覚えるための時間もコストとして計算しなければなりません。慣れるまでの時間的なロスも見逃せないでしょう。
効果に対する客観的なデータが不足している
実際のところ、AIを導入したからといって本当に認知症予防になるのかどうか、実際的な客観的データはまだまだ不足しています。
あくまで「健康に良さそう」ということであって、客観的な効果に対するデータは不足しているのです。
今後、このようなデータは増えていくものと思われますが、現在のところは、AI導入に関しての介護的な効果をはかる現実的なデータは出ていないというのが実情です。
介護ロボット、見守りセンサー、ICTなどの導入に関して、政府は次の介護報酬の改定に向けて、人員や設備、報酬の見直しを俎上にのせることを提言しています。
当時の塩崎厚労相をトップとするデータヘルス改革推進本部を立ち上げ、ビッグデータなどを駆使しながら自立支援が可能となる効果の高いケアを実現していきたい構えです。
実証の結果が出る前から報酬などの話をする点などには批判が出ていますが、積極的なICTの導入に向けて、政府も後押ししていきたい考えです。
介護ロボット・AIなどを導入することによって、介護サービスを合理化し、費用の抑制に結びつけたいと考えているようです。
介護業界のAI導入はもうすぐそこ!
徐々に、介護の現場にAIやロボットは導入されつつあります。特に、コミュニケーションロボットはすでに現場で導入されつつあり、利用者の満足度向上に役立っています。また、介護のパワードスーツなども、実用段階に来ています。
介護人材は30万人以上不足することが予測されており、また、介護報酬も増大の一方を続けています。人材不足を解消し介護費用の増大を抑制するためにも、産官学での介護ロボット・AIの導入が進められています。
介護業界にAIが導入される時代は、すでに到来しつつあるのです。現場に導入される直前の段階まで進んでいます。楽しみのような、未知数のような、未来が訪れようとしています。
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2020年9月7日 制定