参院本会議でカジノ法が成立!ギャンブル依存症が懸念されるが…
カジノ法案を成立させた政府の目的は経済効果にある
7月20日、「カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法」(通称・カジノ法)が参院本会議で自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立しました。
この法案の成立により、全国3ヵ所を上限としてカジノ、ホテル、国際会議場などを一体化したIRの整備が認められることになります。
政府としては2020年代前半の開設に向けて準備を進めたいと考えており、今後は各地で誘致活動が活発化する見込みです。
政府がカジノ法案を成立させようとした一番の目的は、観光客の増加によって経済効果を得ることにあります。
大和総研が行った試算によれば、仮に大阪・横浜・沖縄の3ヵ所にIRが誘致された場合、日本全体に与える経済効果は年間約2兆1,000億円に上るとのこと。
また、IR周辺にはショッピングモールや映画館、レストラン、アミューズメントパークなどの商業施設が数多く設立されると予想され、雇用促進効果も期待されています。
しかしその一方で懸念されているのが、「ギャンブル依存症」の問題です。
政府は対策として、カジノを利用する場合は入場料として6,000円を徴収し、入場回数は「週3回、28日間で10回まで」という制限を設けましたが、これで本当にギャンブル依存症を防げるのかについては、疑問の声も上がっています。
ギャンブル依存症のうち約4割は高齢者
厚生労働省の研究班が行った調査(2014年)によれば、国内のギャンブル依存症者数は約536万人で、そのうち50代以上の男性が約190万人、女性が約7万人(全体の4割)を占めているという状況です。

特に定年後の高齢者の場合、「仕事がない、家庭での居場所がない、趣味もない」という「3ない」状態に陥り、その寂しさをギャンブルで紛らわす人は少なくないと言います。
若い頃から蓄えてきた貯金があるなど、ギャンブルを始めるのに十分なお金を持つ人も多いので、高齢者はギャンブルにのめり込みやすい環境にあるとのことです。
実際、高齢者の中には、ギャンブル依存症となって老後の蓄えを使い果たし、さらに借金まで重ねて家族関係を崩壊させてしまう人も少なくありません。
借金までしてギャンブルに打ち込んだ結果、「老後破産(高齢者の自己破産)」に至るというケースも多いのが実情。
今回のカジノ法成立に対して、「既にパチンコなどによってギャンブル依存症に苦しんでいる高齢者が多い中、カジノの導入によって依存症者をさらに増加させ、老後破産者をより増やしてしまうのではないか」と懸念する有識者・専門家は多いです。
新しいデイサービスの形「カジノ型デイサービス」
デイサービスの利用促進と引きこもりの改善が目的
「高齢者はギャンブルにのめり込みやすい」ということが指摘・懸念されている一方、利用しやすさの向上を目的に、カジノで遊べる環境を整えたデイサービスも登場しています。
「カジノ型デイサービス」とも呼ばれ、利用者はルーレットやブラックジャック、ポーカーなどを楽しむことができ、そのための本格的な装置・テーブルなども設置されているのです。
もちろん、カジノと言っても本物のお金をやり取りするわけではなく、疑似通貨が用いられます。
しかし、ルール・遊び方や使っている道具類は、本物のカジノと同じです。
カジノ型デイサービスのメリットとしては、脳が活性化されること、手・指先の運動になることなどが指摘されていますが、最も大きいのは、デイサービスの利用促進とひきこもりの改善効果にあります。
高齢者の引きこもりは男性に多く、それにより昼夜逆転や心身機能の低下などさまざまな弊害も起こります。
本来ならば通常のデイサービスに通ってもらいたいところですが、合唱や塗り絵のレクリエーションが好きではない男性高齢者も多いのが現状。
しかし、カジノ型デイサービスであれば、男性高齢者でも楽しめる要素が多く、通いたいと思うようになるのだそうです。
実際、カジノ型デイサービスに通うようになって、ひきこもりの症状が改善されたというケースは少なくありません。
カジノ型デイサービスが生まれた背景には事業所競争の激化があった
カジノ型デイサービスが生まれた背景としては、デイサービスの倒産件数が増え、各事業所が生き残りをかけてオリジナル性を発揮せねばならなくなった、ということが挙げられます。
厚生労働省の「介護給付費等実態調査」によれば、通所介護の事業所数は、2015年度~2017年度にかけて減少傾向が続いている状況です。
事業所数減少の原因は、介護報酬改定や人材不足に加え、競争の激化による影響も少なくありません。
事業継続のために競争優位性を意識した運営手法も必要になりつつあるのです。

現在、国・厚生労働省は、特養などの入所施設数の不足や介護職員の不足などを理由に、在宅介護を推進しつつあります。そんな中でデイサービスは、在宅介護を受ける要介護者が健康維持や機能訓練に取り組める場所として、重要性はさらに高まっていく見込みです。
また、朝から夕方まで事業所に預けることができるので、介護負担の大きい家族介護者にとっては、レスパイトケアを受けられる貴重な機会にもなります。
カジノ設備の有無は、男性高齢者の利用者数に影響を与える側面を持つので、今後、デイサービスの収入を大きく左右する要素になるかもしれません。
カジノ型デイサービスは自立支援に適しているのか
カジノに自立支援効果があるのか疑問の声も
そんな、今注目されているカジノ型デイサービスですが、カジノは自立支援として効果があるのでしょうか?諏訪東京理科大学の研究チームによると、スロットで遊んでいる中高年の脳状態を測定したところ、空間認知機能に関わる頭頂葉と前頭葉の左側の部位が活性化された状態になることがわかったそうです。
ただ、国・厚労省によって本格的な調査が行われたわけではないため、介護保険で扱うのはどうなのか、という見方は強いです。
また、認知症予防に効果があるといっても、高齢者にカジノで遊んでもらうのに、貴重な介護保険の財源(税金と介護保険料から構成)をわざわざ費やすべきなのか、という意見もあります。
カジノ型デイサービスは保険適用なので、利用者負担は1割(所得によって2割、8月から3割の場合もあります)となり、残りの9割は介護給付でまかなわれます。
仮に「要介護1」の人がカジノ型デイサービスを利用した場合、1日の総費用は約7,000円。
1割負担だと6,300円が介護給付となります。
軽度者向けのカジノ型デイサービスに介護保険の財源を使うのではなく、もっと必要性の高いサービスに重点を置くべきなのでは、との指摘も多いのです。
あなたはカジノ型デイサービスについてどう思いますか?
「みんなの介護」では、インターネット上で「カジノ型デイサービスの利用についてどう思いますか」を尋ねるアンケート調査を行っていますが、「お金を賭けないのなら問題なし」と「認知症予防・機能訓練としてなら利用したい」を合わせると7割近くに達しています。
「射幸心を煽るので問題がある」と答えたのは2割だけで、多くの人はカジノ型デイサービスに肯定的な意見をお持ちのようです。

ただ慎重な態度を取る自治体・地域もあり、例として挙げると兵庫県は、2015年にカードゲーム・麻雀・パチンコなどを利用したデイサービスや高齢者施設に対する規制を行う法改正に踏み切りました。
当時兵庫県は「県内にまだカジノ型デイサービスはないが、先行して対応した。
高齢者がギャンブル依存症に陥る恐れがあるので、見過ごせなかった」という趣旨のコメントを出しています。
今回はカジノ法案成立の話題を皮切りに、カジノ型デイサービスの問題について考えてきました。
アミューズメント施設のようなデイサービスは通いやすいというメリットがある一方、「税金を使ってまでやることなのか」「倫理的にどうなのか」という問題もあり、今後も議論が続きそうです。
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2020年9月7日 制定