高齢者の免許返納は増加傾向にある
70歳以上の免許保有者数は1,195万人を突破
急速に高齢化が進むにつれて、高齢者の運転免許保有者数が増加しています。
内閣府がまとめた『令和2年度交通安全白書』によると、70歳以上の運転免許保有者は2019年時点で1,195万人。運転免許保有者全体の14.5%を占めるまでになりました。
1975年の13万人と比べると約92倍、1986年の80万人と比べても約15倍にまで増加しており、ドライバーの高齢化が加速していることがわかります。
免許返納件数も過去最多に
ドライバーの高齢化とともに、運転免許の自主返納の件数も増加しています。加齢による視力減退や筋力、判断力の低下などを理由に、運転免許保有者は申請のうえ免許を返納できます。
2019年の免許の自主返納件数は60万1,022件。免許返納者数は過去最高を記録し、前年と比べると42.7%も増加しています。

さらに返納者の過半数にあたる58.3%が75歳以上ということもわかっています。
免許証の自主返納が増加した背景には、高齢者による重大事故がニュースで多く報じられたことがあります。
暴走や逆走、ブレーキとアクセルの踏み間違いなど、高齢者の運転能力の低下が要因と考えられる交通事故が目立っており、本人やその家族が自主返納を決めるケースが多くなっているのです。
免許更新時の検査で事故を防ぐ
75歳以上の死亡事故の4割で認知機能の低下があった
1年間に交通死亡事故を起こした75歳以上の高齢ドライバーは376人。そのうち、39.9%にあたる150人が認知機能検査で事前に「認知機能に問題あり」と判定されていたことも判明しました。

この内訳をみると、5人(1.3%)が「認知症の恐れ」(第1分類)、145人(38.6%)が「認知機能低下の恐れ」(第2分類)の判定を受けています。
一方、60.1%にあたる226人は「問題なし」(第3分類)で、認知機能以外の要因で死亡事故を引き起こしています。
2022年には免許更新時の実車試験も導入される予定
2022年からは、高齢者を対象とした免許更新時の実車試験が新たに導入される予定です。
実車試験の導入は、2019年12月19日、警察庁から発表されました。増加する高齢ドライバーの事故防止が中核となっていて、一定の違反や事故歴のある75歳以上もしくは80歳以上のどちらかで検討が進められています。
現在、75歳以上の高齢ドライバーには認知機能検査が義務づけられています。しかし、ブレーキやアクセルの踏み間違いといった運転操作ミスによる死亡事故が多いため、実車試験の導入が議論されてきました。
実写試験は免許の更新期限内なら何度でも受験可能で、合格後は現行の認知機能検査に進めます。不合格の場合は、運転は認められず、免許更新ができなくなります。
実車試験の導入と併行して、自動ブレーキなどを搭載した安全運転サポート車(サポカー)の限定免許の創設も検討されています。
サポカー限定免許なら、実車試験に合格できなかった高齢者でも運転を継続できる可能性が残ります。
つまり、免許返納が難しい高齢者への救済措置といった位置づけです。
なお、サポカー限定免許は任意制を想定。申請すればただちに免許証に「限定免許」と表記される予定です。
自動運転に期待が高まるも課題は多く
自動運転レベル3の車がついに実用化
近年、急速に開発が進む自動運転。高齢ドライバーはもちろんのこと、社会全体が安心して運転できる未来が期待されます。
2020年4月の改正道路交通法などで、レベル3の公道走行が可能になったのを受けて、同年度中に世界初「レベル3」の自動運転車の発売が決定。自動運転中の携帯電話の操作や、テレビの視聴も可能になります。
レベル3の自動運転車では、渋滞しているか渋滞に近い状態の高速道路など特定の条件下でシステムに運転を任せることができ、渋滞時でも時速50km以下での走行ができます。
緊急時はドライバーが運転する必要がありますが、レベル3の実車化でいよいよ車が主体となった自動運転による公道の走行が実現するのです。
安全性能つきの車は金銭的ハードルが高い
一方、ナイルが70歳以上の1,418人を対象に実施したインターネット調査によると、52%の人が住んでいる環境が理由で免許返納ができないと回答しています。
さらに、54%の人が安全性能つきの車に乗りたいと考えていますが、そのうち43.8%は金銭的な理由で乗っていないことが判明。
生活上の問題で免許の返納はできず、経済的な理由から自動運転を含めた安全性能つきの車に乗り換えるのも困難というのが現実なのです。

2020年3月、政府は「サポカー補助金」を創設。
2020年度中にサポカーの購入支援によって100万件超の新車購入や後付け装置の購入を目標にしてきました。
サポカーの普及によって高齢者の運転操作ミスによる事故を防ぐことが期待されましたが、2020年9月24日時点の申請件数は約48万件にとどまっています。
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運転免許の自主返納件数も、やがては頭打ちすることが予想されます。高齢者の重大事故を抑制するには、免許制度の見直しをはじめ、サポカーの推進など、総合的な対策が急務です。
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2020年9月7日 制定