脳卒中は夏に発症しやすいと国立循環器病研究センターが公表
高齢者、夏は血管の病気に注意
6月29日、東京都心では最高気温32.9℃を記録し、早々と梅雨明け宣言がなされました。
関東甲信において、6月の梅雨明けは1951年の統計開始以降初めて。
東北や北陸も同様に気温が高く、真夏日は全国で318地点となっており、最高気温35℃以上の猛暑日が32地点もありました。

季節は夏真っ盛りといったところですが、高齢者が気をつけたい夏の病気といえば、熱中症や夏風邪、夏バテが筆頭に挙がります。
さらにこの3つに加え、脳卒中(脳梗塞)も「夏の病気」に含まれることは、あまり知られていません。
国立循環器病センターによると、脳卒中は夏に多く発症することが明らかとなっています。
脳卒中には、血管が詰まるタイプ「脳梗塞」と血管が破れるタイプ「脳出血」「クモ膜下出血」があります。
これらのうち、「脳梗塞」は夏に発症率が高くなるのです。
脳梗塞の初期症状は熱中症と似ている
脳梗塞が夏に多くなる理由の一つに、大量の汗をかくために、体が脱水状態になりやすいことが挙げられます。脱水が起きると血液中の水分が不足して粘度を増し、血栓と呼ばれる血の塊ができやすくなるのです。
また、夏は体の熱を放出しようと末梢血管が拡張して、体は血圧低下状態になっています。
これが健康な人なら、血流が悪くならないよう、脳の調節機能が働くので問題はありません。
しかし、生理機能が低下している高齢者の場合は、薬による血管拡張作用のために血圧が下がり、血流が遅くなることによって血栓ができやすい状態にあります。
特に夏は汗を多くかくため、水分を補給していないと脱水症状に陥って血液がドロドロ状態となり、血管が詰まりやすくなるのです。
医学博士である高沢謙二氏によると、この事態は戸外だけでなく、エアコンの効いた室内でも起こるとのこと。なぜなら、エアコンは湿度を下げて空気を乾燥させるため、たとえ日差しを避けていても、体内から水分が出ていきやすいからです。
また、あまり知られてはいませんが、脳梗塞の初期症状は、熱中症とよく似ていると高沢氏はいいます。
夏に急激に起こるめまいや頭痛、吐き気、冷や汗、倦怠感などは熱中症に限られた症状と思われがちですが、脳梗塞といった血栓が詰まる病気(血栓症)でも、同じ症状が現れるのです。
脳梗塞が認知症の原因となることも
脳卒中の種類は「脳梗塞」「脳出血」「クモ膜化出血」の3つ
6~8月の夏に多く発症する脳卒中ですが、多くは次の3つにわけられます。
- 脳梗塞:脳の血管に血栓が詰まる
- 脳出血:脳の細い血管が破れて出血する
- クモ膜下出血:脳の動脈にあるコブが破れ、脳と、脳を包むクモ膜から出血する
この中でも一番多いのは脳梗塞で、脳卒中の7割以上を占めています。脳梗塞の主な原因として注意したいのが、「心房細動」と「頸動脈狭窄(けいどうみゃくきょうさくしょう)」です。

心臓が不規則に拍動する心房細動は、高齢者に多い不整脈の一種で、日本では高齢化に伴って患者数が増えています。
また、頸動脈狭窄は、首の左右にある頸動脈の動脈硬化が進行して起こるもの。
これらによって、心臓や首の血管内で血栓がつくられ、それが脳の血管まで流れてきて詰まることによって、脳梗塞を招くのです。
これらが招く脳梗塞は、糖尿病とも深い繋がりがあります。
九州大学の久山町研究室によると、糖尿病患者は、糖尿病でない人の2~4倍、脳梗塞を発症しやすいとのこと。
脳梗塞は動脈硬化のために血液が流れなくなって起こる病気というのは前述した通りですが、糖尿病はそうした動脈硬化の進行を早めてしまうのです。
脳梗塞で引き起こされる脳血管認知症とは
脳梗塞や出血などによって起きる脳血管性認知症は、他の認知症と同じく、運動麻痺や感覚麻痺、歩行障害、夜間せん妄といった症状を伴います。
具体的にいうと、服の前後や上下を認識できずに逆さまに着たり、言葉が出てこないなどの症状が現れるのです。
ただ、正常な部位の能力は機能しているため、もの忘れを起こしたり計算ができなくても、判断力やその人が今まで培ってきた専門知識などは、維持されている場合もあるのです。
このように、正常な能力が部分的に残っている状態を「まだら認知症」と言います。意欲もなくボーっとしていて何もできず、抑うつ状態がみられるようなときがあるかと思えば、意識もはっきりしていることもあります。
他に脳血管障害の症状としてよくみられるのは、感情がコントロールできなくなり、すぐに泣いたり怒ったりするようになる感情失禁。
たとえば「今日は天気が良くて気持ちがいいね」と言われただけで泣いてしまったり、何もないのに笑ってしまうようなことも珍しくありません。
夏バテだと自己診断するのは危険!脳梗塞の予防法
脳梗塞を発症しやすい時間帯は早朝から午前中
脳梗塞が集中して発症する時期は、6月から8月の夏場、時間帯は、睡眠中と朝の起床後2時間以内です。高齢者は夏の夜間、汗を多くかくので脱水になりやすく、血流も悪くなりがちなので、この時間が要注意です。

脳梗塞の前触れとしては、一過性脳虚血発作があり、主な症状は次の通りです。
- 身体が痺れたり、手や足に力が入らなくなる(片側の手や足に力が入らない)
- 言葉を発しづらくなる(呂律が回らない、言葉や人の名前が出てこない)
- 視野に異変が生じる
- 平衡感覚が狂い、立てなくなる
これらの症状は、小さな血栓が一時的に血管を詰まらせることで起きます。
この症状で厄介なのは、発症時間は数分から数十分程度で、一日も経つと症状が完全に治まってしまうところ。
多くの人はそのまま放置してしまうことになり、これが事態を悪化させていきます。
この段階で脳梗塞を疑い、一刻も早く脳神経外科で脳検査を行うことが肝心です。
脳梗塞にならずに過ごす予防法は?
それでは、脳梗塞をどう防ぐかですが、起床時には体内の血圧が上昇するので、就寝前と起床後にコップ一杯分の水を飲むことが脳梗塞予防の基本だといわれています。
また、脳梗塞は夏の発症に注意したい病気ですが、脳梗塞の発症は加齢や生活習慣と深くかかわっているため、特に高齢者は一年中注意を払う必要があります。
まず、脳梗塞の3大危険因子といわれる「高血圧」「高血糖」「脂質異常」の予防・改善には、食事や運動、喫煙、飲酒など生活習慣の改善が大変重要です。
食事では塩分や脂質、エネルギーをとり過ぎない、運動を日常生活に取り入れる、禁煙する、お酒は飲みすぎないことが大事だとされています。
ひとことで言うと、日頃から安定した生活習慣を心懸けることこそ、脳梗塞の予防・改善につながるのです。
血栓症は、一度発症すると重篤な症状になることが多い病気。勝手に熱中症と判断せず、気になる症状が出てきたらすぐ医師に相談すると良いでしょう。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 3件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定