最近ニュースで耳にすることも多い、介護職の賃金問題。超高齢社会を支える重要な職業でありながら、長くその賃金は低く抑えられてきました。
一方、岸田政権になってから「月額9,000円」という賃上げのニュースも。 おかずクラブのオカリナさんも「なくてはならない仕事で大変なことも多いのに給料が安過ぎる」と、問題意識を持つ一人。看護師資格を持つオカリナさんは芸人になってから、介護施設や訪問入浴などで働いていた経験があるのだそう。
「おカネ大好き!そのために芸人になりました」とも語る、オカリナさんと「カイゴのおカネ」について一緒に学んでいきましょう。
第1回はデータを中心に現状と問題点を整理していきます。
そもそも介護職の平均年収はどれぐらい?

私も看護師として働いていたけど、お給料は夜勤を含まないと大変でした。介護職の場合、年収は平均でどれぐらいなんですか?
2019年の数値で介護職の平均年収は約350万円というデータがあります

この連載のスタート地点となるのが介護職=低賃金という世間の認識。「そもそも」から考えるために統計データを調査しました。2019年の賃金構造基本統計調査の数値で、介護職(ホームヘルパー、ケアマネージャー、福祉施設介護員の3職平均)は年収約350万円、非介護職は年収約397万円でした。
年収差にして約47万円。「そんなに違うの!」と驚く方や、「思っていたより高かった」と思う方、感じ方は人それぞれだと思いますが、客観的なデータではこうなっています。
介護職と非介護職の年収差は約47万円
月給 | 年間賞与 | 年間給与概算 | |
---|---|---|---|
介護職 | 24.8万円 | 52.7万円 | 350万円 |
非介護職 | 27.5万円 | 65.5万円 | 397万円 |
介護職と 介護職以外の差 |
-2.8万円 | -12.8万円 | -47万円 |
介護職の賃金が上がるってホント?

最近、介護や看護のお給料が上がるってニュースを聞いたような…
岸田政権は「介護職員、看護師や保育士の賃上げ」を方針として打ち出しています。これは目玉政策としてニュースで報道される機会も多く、注目を集めています。
岸田政権の「介護職の賃上げ」
岸田首相は就任当初から「新しい資本主義の実現」を政策の目標の1つとして掲げていた。
「公的価格の在り方の抜本的な見直し」では、社会の基盤を支える現場で働く介護職員、看護師や保育士などの所得向上を最優先課題とし、前倒しで実施することを公約していた。
2021年11月18日に後藤厚生労働大臣は、2022年2月から介護職らの給与を、月額3%程度(9,000円)引き上げることを正式に表明。
介護職の賃金は8年間で13%、40万円アップしている
実は岸田政権以前から介護職の賃金は上がっていました。介護職の年収は2012年の約310万円から2019年は約350万円に達し、約13%アップ。
一方、非介護職の年収も2012年の約373万円から2019年は約397万円とアップしていますが、介護職に比べると伸び幅はわずか。


わージワジワ上がってて、差が縮まってる!
政府による処遇改善加算などの対策が講じられていました

処遇改善加算とは、簡単に言うと「キャリアアップの仕組みを作ったり、職場環境の改善を行ったりした介護施設や事業所に、報酬という形で介護職の給与を上げるためのお金を支給する」という制度です。
具体的な支援策として、介護報酬上の「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」の2種類があります。
とくに2019年10月1日に創設された介護職員等特定処遇改善加算には公費1,000億円が投じられています。介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠にしています。
「上がらない」「施設が喜ぶだけ」現役介護職からは不満の声
こうした政府による巨額の予算を投じた処遇改善の動きがある一方、現役の介護職の方からは不満の声が上がっています。
「(給料の)上がり幅が少なく、将来を見ても大きな賃上げを期待できない」
「国から施設にお金は入るかもしれないが施設が喜ぶだけ、殆ど給料に反映されてない」
経営側が搾取している?現場サイドに聞きました
介護職の賃上げについて、お金の流れが政府→事業者→従業員となっていて施設がお金を止めて還元していないという憶測も呼んでいますが現場サイドの方に話を聞いてみることにしました。

あまり考えたくないですけど、国からもらったお金を止めてしまっているということはありますか?
経営側が搾取している、そんなことはありません。むしろ、加算を従業員に平等に還元しようとするとマイナスになるんです。
例えば、国からもらえる処遇改善の金額が100万円だとします。
それを従業員に公平に還元しようとすると結局50万円持ち出して150万円の原資を当ててしまう、ということはうちの事業所でもよくありますね。

政府の加算は、介護事業者側にとってプラスになるどころかむしろマイナスになることがあるそう。介護事業コンサルタントの小濱道博氏も「政府の処遇改善の取り組みによって、収益を圧迫されている事業所が増えている」と語ります。

お金をもらってかえって経営が苦しくなるって…ナゼ?
第2回は処遇改善加算制度の問題点に迫ります。