今回お邪魔したのは、ALSOKジョイライフ株式会社が運営する介護付有料老人ホーム・ユトリーム大阪北(大阪市淀川区)です。介護士・上野太揮さんがアパレルの世界から転身してきたのは10年前。現在は、ご入居者さまはもちろん、スタッフからも慕われる良きリーダーとして活躍しています。明るい笑顔が魅力的な上野さんが語る「自分の強み」の活かし方、そして介護の仕事の面白さとは?

大学卒業後はアパレル企業に勤務していたが、祖父の病気をきっかけに介護職への転職を決意する。小規模多機能型居宅介護などを経験し、2017年ALSOKジョイライフへ入社。2020年からは介護スタッフをまとめるサブリーダーとして活躍中。
2009年〜2011年 | アパレルの在庫管理業務に従事 |
2011年〜2018年 | 介護業界に転職。小規模多機能型居宅介護などに携わる |
2018年10月 | ALSOKジョイライフ株式会社へ入社 |
上野太揮さんのLIFE STORY
家族の介護をきっかけに気づいた介護の魅力
まずは以前のお仕事について教えてください。
アパレル企業で在庫管理の業務を担当していました。洋服が好きだったのでファッションに関連する仕事に就いた…といえば聞こえは良いんですが、実際のところはフリーターとしてゆるい働き方をしていましたね。
就職活動はされなかったんですか?
大学では情報系の学部に在籍していたため、周囲の友人達はサラリーマンとして普通に就職していきました。でも僕は「スーツにネクタイ姿で、毎朝同じ電車に乗って出勤する」という自分の姿がどうしても想像できなくて。結局、真剣に就職活動へ取り組むことなく卒業し、約2年間のフリーター生活を経たあと、介護職に就きました。
Before | After | |
---|---|---|
雇用形態 | パート | 正社員 |
業種 | アパレル | 介護付き有料老人ホーム |
職種 | 職員 | 介護サブリーダー |
勤務時間 | 9:00~18:00 | シフト制 |
休日 | 月8日のシフト制 | 月8〜10日のシフト制 |
仕事内容 | 在庫管理 | 身体介助・生活介助 人材マネジメント |
介護の世界へ興味を持つきっかけがあったのでしょうか?
25歳の頃、祖父が病気になったことです。当時、家族の中では僕が一番手が空いていたので、病院への付き添いや簡単な身体介助を手伝うようになりました。そのうち「高齢者のお世話って楽しいかも」と思うようになり、介護の世界で働いてみることにしたんです。
就職に向けて準備したことなどはありますか?
まず、ヘルパー2級(現・初任者研修)の資格を取得しました。正社員として頑張ろうと決心し、いくつかの介護系企業の採用試験を受けたものの、これが予想以上に難航して(苦笑)。
介護未経験で職歴もないに等しいのに、収入など待遇面ばかりを重視して選んだため、企業側が求める人材像とマッチしていなかったのかなと今では思います。最終的に、介護士として小規模多機能型居宅介護の施設に採用され、4年程お世話になりました。

実際に働きはじめた頃のことを聞かせてください。
資格勉強だけではわからない、いろんな驚きがありましたね。最初に勤めた施設はデイサービスやショートステイなど多様なサービスを提供していたため、自立度の高い方から介護度5の方まで幅広く利用されており、認知症の方もいらっしゃいました。
はじめての夜勤の時、深夜徘徊が止まらない利用者様がいらっしゃって、どうしていいかわからず夜中ずっと一緒に歩き回ったことは今でも鮮明に覚えています。ここでさまざまなケースを経験できたことで、介護技術や応対力を鍛えられたなとすごく感謝しています。
介護業界でキャリアをスタートして、10年程経っていますね。ずっと現場で介護士をされているんですか?
いいえ。ケア業務を続けるうちに、事務方の仕事にも興味が湧いてきたため、特別養護老人ホームでのデスクワークにチャレンジしたんです。
そこでは相談員業務を担当することになったのですが、書類仕事がまるっきり初心者の僕は、右も左もわからなくて。しかも、先輩が付きっきりで教えてくれるというより「見て覚えろ」的な社風だったこともあり、一体何から手をつけて良いのか途方に暮れるばかりでした。
自分にはデスクワークはまだ早かったと痛感する結果となり、もっと介護の知見を広げなければ通用しないと身にしみました。ケアの現場に戻り、改めて経験を積み上げるため、2018年に現在の勤務先である「ALSOKジョイライフ株式会社」へ転職しました。

正しい介助、丁寧な接遇。レベルの高い介護スキルが僕たちの自慢
現在の職場での業務内容を教えてください。
こちらの「ユトリーム大阪北」には、約40名の方がご入居されています。僕は介護士としてご入居者さまの身体介助を行うほか、2年前から介護サブリーダーという立場でスタッフのマネジメント業務を担っています。人材育成やシフト管理をはじめ、スタッフのみんなが働きやすい職場環境をつくることが役割です。
スタッフを育成する上で意識していることはありますか?
どんな高齢者施設に行っても通用する、丁寧で正確なケア技術を持つ介護士に育てること。弊社では介護技術が統一されていて、接遇研修(おもてなし研修)なども充実しています。ご入居者さまを介助する際の介護士の立ち位置、腕の添え方など細かく定められているんです。
もしかすると、他の施設で長年経験を持つ介護士にとっては、そのルールが煩わしく感じられるかもしれません。介助の仕方に個々の癖もあるでしょう。
でも、美しく無駄のない所作で介助することは、ご入居者さまのためだけでなく、介護士自身の身体的負担を軽減することにもつながります。スタッフたちがこれから介護職として長く活躍していくためにも、正しい技術を身につけてほしいと願いながら日々の指導にあたっています。

なるほど。正確な技術は、自分自身の体を守るためにも必要なことなんですね。
介護職は体が資本という面がありますからね。自分が健康であることが、毎日楽しく仕事をする上でも一番大切じゃないかな。
そういった視点から、技術面だけでなくちゃんと体づくりをしたいと思い、休みの日はジムへ通うようになりました。月に6〜7日程度は夜勤に入っているため、生活リズムが崩れがちなのも理由のひとつです。
20代の頃は若さで乗り切っていましたが、30代も半ばになった今、これからはそうもいかないなと(笑)。ジムで汗を流して心身ともにリセットし、すっきりした状態で業務に取り組むことを心がけています。

ユトリーム大阪北では、リハビリ機能を強化していると伺いました。
2019年に、リハビリに特化した施設としてリニューアルしました。理学療法士が24時間常勤しており、個々に応じた機能訓練を実施しています。ADL(日常生活の機能動作)やQOL(生活の質)の維持・向上を目的としています。
リハビリを推進することでご入居者さまに変化は見られましたか?
ポジティブな言葉が増えたと感じます。機能訓練の結果、立位をキープできる時間が増えたり、歩行できる距離が少し長くなったり。すると、今度はひとりでトイレに行ってみたいなど「次はこうしたい」といった未来への前向きな発言がたくさん聞けるようになりました。
できなかったことができるようになる幸せ。誰かに褒められる嬉しさ。成功体験というのは、人間が生きていく上で本当に重要なことだなと実感しています。
また、ご入居者さま同士の交流の機会が増えたこともメリットのひとつですね。お互い励まし合うことでコミュニケーションが生まれ、職員以外との人間関係が築かれることは、皆さんの生活に張りを与えていると思います。
効果を間近で見られることで、スタッフ側にも何か意識改革が起こりそうですね。
その通りです。理学療法士が指導する運動だけでなく、レクリエーションとして介護士による簡単な介護体操も取り入れているんですが、ご入居者さまの筋肉や骨の動きなどを注意深く観察するようになりました。
動きのわずかな変化に気が付くことが増えれば、不調の早期発見につながります。僕らは体の専門家ではないけれど、もっと勉強していろいろな視点からご入居者さまの状態を知りたいと思うきっかけになりました。

自分の得意を活かすことで周囲の役に立てる喜び
介護の仕事でやりがいを感じる瞬間を教えてください。
新しく入居されたご入居者さまには、僕が率先してかかわりを持ちに行くようにしています。切り込み隊長的な役目ですね(笑)。やはり中には、ケアを拒まれたり、なかなかお話をしていただけないなど対応が難しいケースもあって、そんな方が徐々に心を開いてくださった時は「この仕事をやってて良かった!」としみじみ感じる瞬間です。
初対面の方とでもコミュニケーションを取るのは得意ですか?
誰に対しても人見知りはしない性格です。また、相手の感情の機微を読むのが比較的得意なのも、介護の仕事が自分に向いているなと思う理由のひとつ。口数が少ないご入居者さまであっても、その方が望まれていることやお好きなことなどをなんとなく察することができるんですよ。
そうやって僕が感じたことを他のスタッフとも情報共有することで、ご入居者さまが早く施設に馴染み、心地よくケアを受けてもらえる結果につながると良いなと思っています。

それは大きな武器ですね。インタビューしている私も、上野さんの明るく親しみやすいお人柄を感じています。
自分の気質や特性が、働く上で強みになっているのは素直に嬉しく思います。ご入居者さまの皆さんには可愛がってもらっており、本当にありがたい限りです。
アパレルで在庫管理の仕事をしていた頃は、他者と関わることがあまりなかったんです。全国のショップから入ったオーダー通りに商品を出荷していく作業を担っており、膨大なタスクを迅速にこなすスピード感や効率性は身についたと思います。
でも、元々がこんな性格なので、人と話すことにとにかく飢えていましたね。だから今、介護の現場で大勢の人たちとコミュニケーションを取る毎日が楽しくて仕方ありません。

目の前の課題へ向き合うことが、大きな飛躍へとつながる
上野さんのこれからの目標を教えてください。
ケアマネの資格取得に向けて勉強しています。以前、祖母から「介護の仕事をするならケアマネ資格は取った方がいい」とアドバイスされたこともあり、孫としてこれは頑張らないといけないなと気合が入っています。
試験に合格した際は、事務方のお仕事に再挑戦することを考えているんですか?
将来的にはそうなると良いかな。けれど、現在のサブリーダーという仕事もまだまだ一人前とは言えない状況で(苦笑)。周りのみんなの助けがなければ、到底うまくやれないと自覚しています。
介護の仕事をはじめた当初、戸惑うことやできないことだらけでした。それでも目の前の課題を一つひとつこなし、経験を積み重ねていくことで、ここまでやってこられたという実感があります。大切なのは、その時自分に与えられた役割を精一杯まっとうすること。そうすれば自ずと自信が付いて、新たなチャレンジもうまくいく日がきっと来るはずだと信じています。

介護の仕事を目指す方へメッセージをお願いします。
介護の面白さは、毎日が変化にあふれていること。人間対人間の仕事なので、1日として同じ日はありません。僕は学生の頃、ルーティンに沿った毎日は嫌だと思ってサラリーマンにはならなかったわけですが、今こうやって変化に富んだ介護の仕事に就くことができて本当にラッキーだったなと思っています。
また、介護職はしんどいといったイメージを持つ方もいますが、どの仕事もしんどい面って絶対あるでしょう(笑)。ほとんどの介護施設では人員配置率などがしっかり守られているため、自分ひとりだけに負担が重くのしかかるということはないと思います。ぜひ勇気を出してチャレンジしてください。
※当記事の情報は2022年1月24日時点の内容となります。

撮影:STUDIO WAVE
はこちら ALSOKジョイライフ株式会社