認知症の方と介護職が一丸となって取り組む”普通のレストラン”、注文をまちがえる料理店
注文をまちがえる料理店で働いてくださっている方は52歳から92歳までの20人です。
普段はグループホームに入居されている方をはじめ、小規模多機能型居宅介護やデイサービスを利用されてる方などが参加。
サポートをするスタッフは全員が介護職員です。
注文をまちがえる料理店で僕たちがこだわったのは、認知症の方が働いてること以外は普通のレストラン。
それも、できるだけ一流のレストランを目指して取り組みを続けています。
介護の根底にあるもの。それは「基本的人権」の尊重なんです
2018年4月のこと。
東京に創業約500年の歴史を持つ「とらや」という和菓子さんの工房、その名も「とらや工房」がオープン10周年だったんですね。
とらやさんはもともと注文をまちがえる料理店の実行委員会のメンバーなんですけど、どうしても”周年記念”として、自分たちの工房で注文をまちがえる料理店をやりたいということで、全面的にサポートすることになりました。
その打ち合わせのときのはなしです。
僕がちょっと強めに言っておけばいくらか違っていたと思いますけども、介護事業者さんはこういう取り組みをすぐに施設の行事くらいの感覚で捉えてしまう傾向にある。
自分のところの利用者さんたちが働いてるもんですから、バッと入ってきて、ドンッと座って、写真を撮ったりするわけです。
僕はその方々に、「ここはきちんとお金をいただいてお客さんをお迎えする普通のカフェ。その普通のカフェで働いてる人たちにとっても、そこに来てくださっている人たちにとっても、あなた方は失礼」とお話しさせてもらいました。
介護職員は”施設の行事でおちゃらけてやってる”ぐらいの感覚なんですが、そういうことじゃないんです。
根っこにあるのは人権の問題で、人として最後まで生きていいんだっていう日本国憲法の「基本的人権をどう実践していくか」ということが根底にあるんですね。
認知症の方のすることに先回りする。それはとても失礼
それから、介護職って、過剰にかかわるんです。
全然見極めなくかかわっちゃう。
僕は介護職員さんたちにそのことを理解してもらいたいなと思って、一番最後は強制的にそういう職員さんたちに「かかわらないでこっちにいてくれ」と一切そこに寄りつかないようにさせたんです。
そうするとどんなことが起こったかっていうと、とらやさんのスタッフと、認知症の状態にあるスタッフとして来てくださった方々だけでカフェが回ったんです。
つまり、介護職はいらないということ。
僕らは認知症の方が何かしでかすんじゃないかと思って、先回りしていろんな手を打とうとするけれども、実はそれってとても失礼なことなんですね。
心構えとしての大枠はそうなんだけど、「細かいところはしっかりと信頼を置いてやっていくことが大事じゃないか?そうじゃないと、今日みたいな”認知症の方一人ひとりが輝く光景”は見られないよ」っていう話を一番最後の挨拶でさせていただきました。
これからは、そういうことに気づけるトップリーダーを育てていかなければならないなと、僕は自分で勝手に思っています。