【簡単にわかる】ユマニチュードとは?5つのステップと認知症ケアの効果を解説

認知症の人への対応で、悩んでいるご家族の方も多いのでは?この記事では、注目を集めている認知症ケアの技術「ユマニチュード」について解説します。取り組むうえで必要な5つのステップや効果について詳しく解説。ぜひ日常に取り入れて、より負担の少ない介護を目指しましょう! もっと見る
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ユマニチュードとは

ユマニチュード(Humanitude)とは、フランス語で「人間らしさ」を意味する言葉で、「人とは何か」「ケアをする人とは何か」という哲学的な考え方がその基盤になっています。

実施する際の考え方としては、「ケアされる人」と「ケアする人」という一方的なものではなく、「関係」や「絆」を中心にとらえます。

認知症ケアの技術として知られており、言葉や身振り、目線など、あらゆる感覚を活用したコミュニケーション法を軸としています。
「まるで魔法のようだ」と思われることもありますが、具体的な手法によって体系化されています。

この技術をきちんとマスターすれば、介護のプロだけでなく、ご家族なども認知症の人のケアができます。これは、介護疲れなどを解消する糸口になるのではないでしょうか。実際、世界中の認知症介護の場で取り入れられ、大きな成果を挙げつつあるのです。

それでは、ユマニチュードの歴史、技法、効果、注意点などを、認知症治療の第一人者であるアルツクリニック東京の新井平伊院長監修のうえ、本田美和子氏、ロゼット・マレスコッティ氏、イヴ・ジネスト氏の共著『ユマニチュード入門』(医学書院)を参考に、わかりやすく解説していきます。

ユマニチュードの歴史

黒板を前にユマニチュードの歴史を解説する教授と頭に疑問符を浮かべる若い女性

ユマニチュードは、フランス人のイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティによって1979年に提唱されました。
日本では、2012年2月に両氏が国立病院機構東京医療センターを訪問し、日本人患者へのケアを行ったのが最初です。

その後、同センターでユマニチュードの研修が定期的に行われ、新たなケア技法として注目されました。

ユマニチュードの目標

ユマニチュードでは、ケアする人を「心身に問題を抱える人をケアするプロ」として定義しています。そして、ケアのプロとしての目標が提示されています。
以下が、プロに必要な3つの目標です。

ケアのプロに必要な3つの目標

『週刊医学界新聞 第3056号』(医学書院)を基に編集部作成

1.心身の回復を目指す

寝たきりの場合、筋力の低下や関節可動域の縮小などは症状を悪化させる原因となります。そのため、少しでも立位保持ができるようであれば、清拭(せいしき)を立ったまま行うなど、可能な限り回復に努めた生活を心がけます。

2.機能維持

身体の機能を少しでも維持するため、できるだけ車椅子を使わずに歩くことなどを、日々の行動のなかに取り入れます。

3.最期まで寄り添う

心身の回復や身体機能の維持が難しくなった場合、残りわずかな力を奪わないように気をつけながら、できるだけ穏やかな最後を迎えられるように寄り添います。

基本となる4つのアクション

認知症の人が介護を拒否する理由

認知症の人に介護を拒否されてしまう理由のひとつに、認知機能の低下があります。
認知機能が低下していると、介護の意図を理解してもらうのに時間が必要です。

ユマニチュードの研修では、相手にしっかり届く話し方や触れ方の訓練が行われています。

こうしたケア技術をきちんと使うことで、認知症の人と良い関係を築きやすくなるのです。
関係が良好であれば、少しずつ「この人と一緒にいることは心地良い」という感情記憶が認知症の人に残るようになり、介護を受け入れてもらいやすくなります。

ユマニチュードの4つの柱

ユマニチュードは、以下の4つの動作を基本としています。

視線の高さや話し方、さらに体への触れ方に気を配ることで、「大切に思っている」ということを相手に伝えることができます。

また、「立つ」ことは人間らしさを取り戻すことにつながります。
この4つの技術を基本に、150ものケア技術が介護現場で実践されているのです。

では、具体的にどのような技術なのか見ていきましょう。

ユマニチュードの基本的な概念

『ユマニチュード入門』(医学書院)を基に編集部作成

見る

高齢の女性を見つめながら食事介助をしたりベッドの上でつきそったりする若い女性

認知症の人の介護において「見る」という行為はとても重要です。
なぜなら、「見ない」という行為は、相手の存在を否定するメッセージにもなり得るからです。

同じ高さから目線を合わせることで平等な関係性であることを、正面から見つめることで相手への誠実さを伝えることができます。
また、できるだけ長く目と目を合わせることで、ポジティブさや愛情が伝わります。

ユマニチュードでは0.5秒以上見つめ合うことが必要だとされています。

話す

医師と話す高齢の女性と、介護職員と話す高齢の男性

話すときは、ゆっくりと穏やかに話すように心がけます。
返事がない場合や、意識的な反応が見られない場合は、介護を行っている自分の手の動きを実況中継する「オートフィードバック」法を使って、言葉を途切れさせないようにすることもひとつの手です。

「左腕を少し上げます」や「温かいタオルで左手の甲を拭いています」といった言葉を重ねることは、介護を受けている側が「自分の存在」を改めて認識する大切な機会となります。

触れる

若い女性の介護職員と手をつなぐ高齢の女性

愛しい人に触れるときのように、優しく包み込むような動作で触りましょう。

急につかんだりすると、本人にそのつもりがなくても認知症の人に対して攻撃的な印象を与えかねません。
また、触れる際は皮膚の接触面積をできるだけ大きくして広い範囲で触れるようにすると、安心感を与えることができます。

なお、肩や腕など体の鈍感な箇所から触れていくことも大事です。
いきなり手や背中など敏感な部分を触ると、「ビクッ」と驚かせてしまう恐れがあるからです。

立つ

杖をついて立つ高齢の女性と高齢の男性

座っている状態では、寝た状態よりも空間を立体的に認知しやすくなり、それによって「自分がここに存在している」という自覚をより強く持つことができます。

立ち上がることができれば、空間は縦方向にも広がることになります。
より多くの空間的な情報を得ることで、自分の存在をさらに強く意識することができます。

また、立つことで体の関節や軟骨に栄養を行き渡らせ、循環器系や呼吸器系の機能が活発化。
骨粗しょう症の改善や筋力アップを図れるほか、褥瘡※の予防にもつながります。
※じゅくそう…外部からの圧力によって骨で圧迫された身体の組織が、ダメージを受け、できものや傷のようになった状態。

ケアする際の5つのステップ

ユマニチュードでは、認知症の人とそのお世話を行う人との間に絆をつくることが、ケアの中心に置かれています。
絆をつくるため、実際にケアを行うにあたっては、いきなり開始するのではなく、以下の「5つのステップ」にのっとって行われなければなりません。

1.出会いの準備

「出会いの準備」とは、来訪を伝えることです。
部屋の中にいる認知症の人に「誰かが会いに来た」ことを知らせ、それを受け入れるかどうかを選択してもらう形を取ります。

方法としては、まず、中にいる人に聞こえるようにドアを3回ノック。
その後3秒間待ち、再び3回ノックして3秒待ちます。

もしそれで反応がなければ、1回ノックして室内に入ります。
「3秒待つ」という時間を挟むことで、本人の脳が活性化する水準を少しずつ高める効果が期待できます。

2.ケアの準備

「ケアの準備」は、「あなたに会うために来た」というメッセージを伝え、関係性を築く段階です。

認知症の人と親しくなれるような言葉や態度を取ることが大事で、正面から近づいていき、目と目を合わせ、目が合ってから3秒以内に話し始めることがポイントです。

話すときはポジティブな言葉だけを使うようにし、ユマニチュードの柱における「見る」や「話す」、そして「触れる」の技術を使いながら絆を作っていくのです。
もし、3分以内にケアを行う同意が得られないようなら、いったんその場はあきらめましょう。

この「ケアの準備」の段階を経ることで、認知症の人の攻撃的な行動が7割減少し、ケアに協力的になることが知られています。

3.知覚の連結

「知覚の連結」は、「見る」と「話す」と「触れる」のうち、少なくとも2つ以上の技法を同時に使いながら、「あなたを大切に思っている」というメッセージを継続的に届ける段階です。

優しく話しかける一方で、手を強く握るなどの行為を行ってしまうと、届けるメッセージに矛盾が生じます。
言葉と行動に調和や一貫性を持たせながら接することがここでは重要です。

本人の五感に伝わるものすべてが、同じ意味を持ち、ポジティブなものとなるようにするのです。

例えば「背中を拭きますね」「気持ちいいですか」といった言葉を笑顔とともにかけるけれど、本人から言葉の反応がないとき。そんな場合も、筋肉の緊張がほぐれる、あるいは呼吸の速さがゆっくりになるなど、何らかのメッセージを介護者の側に向けるようになります。

4.感情の固定

「感情の固定」とは、ケアを受けた際の経験を素敵なものとして感情記憶に残すことです。

ケアを終えた後「気持ちよかったですね」と声を掛けることや、ケアに協力してくれたことに丁寧にお礼を述べることで、本人は「心地良い時間を過ごせた」と感じることができます。

例えば「お疲れさまでした」などと声を掛けると、「ケアを受けて大変でしたね」といった否定的な意味合いを含みかねないので、ここでは不適切な表現となるのです。

認知症の人は、前回のケアがどのような内容だったのかを忘れていることが多いのですが、「この人は嫌なことを言う人かどうか」という「感情記憶」は残っています。
気持ちよくケアを終えられたことをお互いに確認し合い、そのうえで次のケアにつなげることが重要になるわけです。

5.再会の約束

認知症の人の場合、「またお会いしましょう」と言っても、そう言われたことを記憶できないかもしれません。
しかし、「自分に優しくしてくれた人がまた会いに来てくれる」という期待感や喜びは、感情記憶として残ります。

ベッドの横にメモ帳やホワイトボードなどを設置するのも有効な方法です。

そこに「また夜の7時に会いに来ます」などと伝言を残しておくと、それを何度も目にすることで、「優しくしてくれる人が来る」という楽しみを繰り返し感じることができます。
再開の約束を言葉としてではなく、「感情」として行うことで、次回に会ったとき、笑顔で迎えてくれるようになります。それによって、ケアをスムーズに開始できるようになるのです。

もちろん、自宅でも同様に行うことが可能です。

ケアを受ける人、する人への効果

ユマニチュードによるケアはフランスで高い効果を上げており、認知症の人が服用する向精神薬の使用量が減少することや、介護スタッフの離職率が低下するなどの調査結果が報告されています。

認知症を発症すると、言葉や態度が攻撃的になることも少なくなくありません。

しかし、ユマニチュードのケアを受けることでそのような症状が収まり、以前のような社交的な姿を取り戻すというケースが多く報告されています。

例えば、それまで暴言を繰り返していた人が、ユマニチュードのケアによって態度が一変し、介護者にピースサインをするようになることもあります。
ケアを受ける人、ケアをする人どちらもが穏やかな介護生活を過ごせるようになるのが、ユマニチュードの大きなメリットです。

介護離職を防ぐ効果も

怒っている表情から笑顔になる高齢の男性と安心した表情の若い女性

認知症の介護にユマニチュードが導入されることで、介護する側の介護負担も大きく軽減されます。
認知症の人はケアを受け入れないことが多く、家族などの介護をする人がそのことで悩み、認知症の人と格闘するかのようなケアを行う場面も少なくありません。

ユマニチュードを取り入れることで、認知症の人は感情的に穏やかになります。

結果として、それまでのケアよりも時間がはるかに短縮され、介護者が受けるストレスも大幅に減らすことができると言われています。
また、介護者の中には介護を始めた当初はやる気を高く持っていたのに、認知症介護の大変さを目の当たりにして「バーンアウト」(燃え尽き症候群)を起こす人もいます。

ユマニチュードであれば、ケアする側の負担も大きく減らせるので、こうした症状を避けることもできます。

実践する際に配慮すべきこと

ユマニチュードを行うに当たっては、認知症の人の健康に害を及ぼさないことが絶対条件とされています。
各人の健康状態や能力に適したケアを選び、実施していくことが重要になるのです。

ケアを受ける人に不安を与え、症状を悪化させるような強制的なケアや身体拘束などは厳禁。

また、ユマニチュードの本質は、認知症の人に対する気遣いにあります。
形だけ真似するのではなく、各技法の意味をきちんと理解し、実践する意識を強く持つことが大事です。

他の人はこちらも質問

ユマニチュードってどういう意味?

ユマニチュードとは、フランス語で「人間らしく」という意味です。
認知症ケアのひとつで、言葉や身振りなどを活用して、コミュニケーションを図ります。

誰もが学べ、実践できるユマニチュードとは?

ユマニチュードは誰でも学び、実践が可能です。
一般の方は市が開催する講座に参加、職員は企業が行う入門コースや実践コースに参加できます。

ユマニチュードは誰が考えた?

ユマニチュードは1979年に、フランスのイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが提唱しました。
両氏が2012年に来日して、国立病院機構東京医療センターで患者のケアをしたことが最初だと言われています。

ユマニチュードは何年で学べる?

ユマニチュードの研修を開催している機構では、専門職だと数ヵ月、一般の方で3ヵ月ほどの研修で学ぶことができます。
専門職は月2〜3回、一般は月1回の研修が行われています。