介護職がもらえる給付金を解説
介護職とは、老人ホームなどの高齢者向け施設において、高齢者のお世話をする仕事です。仕事内容の幅は広いですが、主に利用者の食事や入浴、排泄の介助といった日常生活の介護を行います。
介護職という仕事において大事なことは、ただ利用者の身の回りのサポートをするのではなく、本人がその人らしい、いきいきとした生活を送れるように手助けすることです。高齢者を支え、日本の福祉に貢献するという点で、非常にやりがいのある仕事と言えます。
介護職員への慰労金とは
コロナ禍の2020年5月27日、政府は閣議において第二次補正予算案を決めましたが、その中に「慰労金」という介護職への新たな給付金を支払うという内容が盛り込まれました。この案は翌6月12日に閣議において決定。対象となる介護職に給付金が支払われることが決まりました。
慰労金の正式名称は「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」。給付対象は職種による制限などはなく、介護・障がい福祉サービスにかかわる職種であれば、事務員も介護職員も受け取ることができます。また、正規職員、非正規職員による区別もありません。
5万円の場合
支給される金額は20万円の場合と5万円の場合の2パターンあります。5万円の支給対象となるのは、介護・障害福祉のサービスを提供する事業所のうち、感染者や濃厚接触者が発生していない事業所で働いている介護職です。
なお、支給されるには条件があり、1つは今年6月30日までに通算で10日以上勤務していること。また、実際に勤務している人を対象とするため、有給や育休の期間は勤務日数には含まれません。この給付金はすべて非課税とされます。
20万円の場合
一方、20万円の支給対象となるのは、新型コロナウイルスの感染者が発生した事業所、もしくは濃厚接触者に対応した事業所で働く職員です。
なお、5万円の場合と同じく、支給条件としては6月30日までの間に通算で10日以上勤務している必要があります。有給や育休など勤務に従事していない場合は、勤務日数には含まれません。なお、給付金はすべて非課税とされます。
介護職になるために必要な資格と職種
介護福祉士
介護福祉士は、介護に関する国家資格です。資格取得者は、高齢者または障がいのある方への食事や入浴、排泄の介助、歩行支援、さらには介護を行う家族への相談業務なども担います。
介護に関する知識とスキルを豊富に持ち、「介護のプロ」として要介護者と介護者の両方をサポートしていくのが、介護福祉士の仕事です。
また、介護福祉士は介護現場でリーダー的な存在となり、例えば訪問介護事業所だと、各ホームヘルパーに指導やアドバイスを行う業務も担います。
取得すれば資格手当がつくことが多く、介護職としてキャリアアップを目指すなら、取得を視野に入れたい資格です。
介護職員初任者研修(ヘルパー2級)
介護職員初任者研修はいわば介護職の入門資格で、受講を通して介護に関する基礎的な知識やスキルを身に付けることができます。研修を受けるにあたっては、資格や介護経験、年齢などは不問です。
かつてはホームヘルパー2級という名称でしたが、2013年に行われた制度改正によって介護職員初任者研修となりました。しかし、現在でもかつての名残として、「ヘルパー2級」と呼ばれることがあります。
ただし、介護職員初任者研修と旧ホームヘルパー2級は異なる部分もあるので注意が必要です。1つは研修内容が違います。ヘルパー2級は訪問介護に重点が置かれた内容でしたが、介護職員初任者研修は訪問介護だけでなく施設介護にも力点が置かれた研修内容となっています。
また、受講時間も変更されています。ヘルパー2級では必須とされた30時間の実習が廃止され、その代わりにスクーリングの時間が多くなりました。
さらに3つめとして、ヘルパー2級では行われていなかった修了試験が、介護職員初任者研修では課せられます。そのため、ただ受講すれば良い訳ではなく、修了試験に向けた準備も必要となったのです。
介護福祉士実務者研修(ヘルパー1級)
介護福祉士実務者研修とは、介護福祉士を目指すうえで取得が必須となっている資格です。旧制度の下では、ホームヘルパー1級に該当します。
介護福祉士の受験資格を得るには、介護の実務経験が3年以上あることに加えて、介護福祉士実務者研修を修了していることが条件です。介護職としてキャリアアップを図るなら、資格取得は避けて通れない道と言えるでしょう。
介護福祉士実務者研修においては、介護知識やスキルに加えて、たんの吸引や経管栄養(胃や腸に穴を開けてチューブを通し、直接栄養を送ること)など、より専門的な介護技術を学んでいきます。
なお、介護職員初任者研修の修了者、旧ホームヘルパー1級保持者、介護職員基礎研修修了者は研修を一部省略できるので、これらの資格をお持ちの方は比較的取得しやすいでしょう。
サービス提供責任者
サービス提供責任者とは、訪問介護事業所を利用する方が適切にサービスを受けられるように、利用者とホームヘルパーに対して多様な支援を行う専門職です。略して「サ責」とも呼ばれています。
具体的な職務内容としては、ホームヘルパーが利用者宅で行うサービスの訪問介護計画書の作成、ケアマネージャーとの連絡役などがあり、任せられる仕事の幅は実に広いです。
在宅介護の現場において、「訪問介護」は重要な役割を果たす介護保険サービスの1つ。サービス提供責任者は、その中心になって仕事をしていきます。高齢化が進む中、自宅で介護を受ける高齢者は今後さらに増えていくと予想されます。サービス提供責任者という専門職へのニーズは、将来的にさらに高まっていくでしょう。
認定介護福祉士
認定介護福祉士とは、介護福祉士のスキルとキャリアを向上するために導入された民間資格です。
現在、日本では高齢化が進み、介護に対するニーズも多様化、複雑化しつつあります。そうした状況に対応するため、経験豊富な介護福祉士の中から、より高度な介護の知識とスキルを持つ人材を育成しようとする動きが2011年頃から始まりました。
その結果、2015年に「一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構」が設立され、介護福祉士の上位資格として認定介護福祉士が誕生したのです。
認定介護福祉士は通常の介護福祉士よりもさらに知識、スキルともに豊富な人材であることを証明する資格であるため、より大きな役割、責任を果たすよう求められます。具体的に期待される役割は以下のようになります。
- ユニットリーダーや介護現場のリーダーとして、現場職員のマネジメントや教育指導を行う
- 医師や看護師など多職種との連携の円滑化を図る
- 地域の介護施設やボランティアなどへの助言を行う
介護助手
介護助手とは、無資格ながら介護現場で働く介護職のことです。経験豊富な介護職の指導を受けながら働くことで、現場で求められる介護知識やスキルを学ぶことができます。
近年、介護職における人手不足は深刻さが増しており、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年には、約38万人の介護人材が足りなくなるとの試算もあるほどです。
そうした中で厚生労働省は現在、資格を持たずに介護現場で働いてもらう介護職の導入に力を入れています。その理由は、介護福祉士のような有資格者にはより複雑な介護業務に取り組んでもらい、無資格者の介護助手はそのサポート役に回ってもらう体制を構築するためです。
これにより介護職の人数を確保しつつ、より効率的に質の高いサービスを提供できるようにする、というのが厚生労働省のねらいと言えます。
介護職というと、資格が無ければ働けないと思われる方もいるかもしれません。しかし、実際には無資格でもあっても介護助手という形で就職できます。働きながら資格取得を目指し、キャリアアップを図っていくのも1つの方法です。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は認知症の方への介護を行うプロとして、専門的な知識と技術を有することを証明する民間資格です。国家資格ではないものの、資格取得により認知症に対する専門的な知識とスキルを保有することを証明できます。介護福祉士による取得率が高い資格ですが、近年では医師や看護師など医療分野の専門家が取得するケースも増えてきました。
有資格者には、通常の介護職が介護現場において認知症の方への対応に困った場合、専門的知識やスキルを活かして、最適なケアの方法を助言することが求められます。介護施設や事業所によっては、重要な役職を任されることも少なくありません。
認知症ケア専門士には上位資格となる認知症ケア上級専門士という資格もあります。取得することで認知症に対するより高度な知識やスキルを有する証となり、仕事の幅もより広がってくるでしょう。
難病患者等ホームヘルパー
難病患者等ホームヘルパーとは、日常生活において見守り支援を必要とする難病や特定疾患を持つ方のサポートを行う専門職です。
利用者の方が患っている病気の特徴を把握し、注意すべき点を理解したうえで必要な介護を行います。また、利用者を生活面で支えることに加え、自立支援や社会参加への支援も実施。利用者が自らの生活の質を高められるように、全面的なサポートを行うのが難病患者等ホームヘルパーの仕事です。
難病患者等ホームヘルパーとして働くには、都道府県など地方自治体が指定する機関において「難病患者等ホームヘルパー養成研修」を修了する必要があります。
なお、研修内容には「入門講座」と「基礎課程Ⅰ」、「基礎課程Ⅱ」のカリキュラムがあり、受講するにはホームヘルパー1~3級や介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士などの資格取得が必要となります。
重度訪問介護従業者
「重度訪問介護従業者」の資格とは、障害程度区分4~6に該当する肢体不自由者の方に介護サービスを提供す際に必要となる資格です。都道府県知事指定の事業所にて重度訪問介護従業者養成研修を修了することで、資格を取得できます。
研修には大きくわけて基礎課程と追加課程とがあり、基礎課程を修了すれば障害程度区分4~5、追加課程を修了すれば障害程度区分6の利用者にサービス提供が可能です。受講資格などは定められておらず、重度訪問介護従業者として働きたい方であれば、誰でも受講できます。
重度訪問介護従業者の主な仕事は、利用者への食事、入浴、排泄の介助、調理、洗濯など家事のサポート、外出時の支援などです。利用者には脳性麻痺や脊髄損傷、難病患者の方が多く、介護を行う際は本人の状態に合わせた注意や配慮が求められます。
ケアマネージャー
ケアマネージャーとは、要介護認定を受けた方にケアマネジメントを行う専門職です。正式名称は「介護支援専門員」ですが、一般的にはケアマネージャー、またはケアマネと呼ばれています。
ケアマネジメントとは、日常生活において介護・支援を必要とする方が自立した生活を送るために必要なもの(ニーズ)と、介護施設や事業所が提供している介護サービス(社会資源)とを結びつけることです。
つまりケアマネージャーは、介護サービスを必要とする人と介護サービス事業所とをつなげる役割を果たしていると言えます。
主な仕事内容は、介護を必要とする方の生活の質を維持・向上させるうえでの問題点や課題を明確にして、適切な介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作成、分析、評価することです。また、ケアプランの内容を実行に移せるように、利用者に変わってサービス提供事業者との連絡・調整役も担います。
主任ケアマネージャー
主任ケアマネージャーとは、ケアマネージャーへのアドバイスや指導、フォローアップなどを行うほか、介護に関係する各種サービスのネットワーク構築や地域・利用者の課題解決に向けて、中心的な役割を果たす専門職です。
一般的なケアマネージャーの上位職にあたるため、ケアマネージャーの取りまとめ役として高度な知識・能力が求められます。現場でケアマネージャーの指導・育成を行うことをはじめ、地域包括支援センターにて地域全体の介護福祉を発展させることも、主任ケアマネージャーが果たす重要な仕事です。
ケアマネージャーとして将来的にキャリアアップを考えている場合は、ぜひ取得を目指したい資格であると言えるでしょう。
介護施設管理者
介護施設管理者とは、老人ホームなど介護関連施設にて責任者・管理者として働く人のことです。介護分野においては最も高い地位・役職であるとも言えます。施設によっては「所長」と呼ばれることもあり、施設全体のマネジメント業務を行うのが主な役割です。
介護施設管理者が行うマネジメント業務としては、利用者の管理をはじめ、スタッフ管理、運営管理、収支管理などが挙げられます。また、各種行政機関に対する届け出や、介護保険事業者事故報告書、消防計画などの作成、提出など、介護施設にかかわる多岐にわたる事務作業を管理しなければなりません。
施設サービスを提供する介護施設において施設長や管理者になるには、厚生労働省が定めている特定の条件(介護の資格や勤務経験、研修の修了など)を満たす必要があります。ただし、民間施設の有料老人ホームの場合は特に規定はありません。そのため、求人の際の採用条件には資格や経験を定めていないこともあります。
介護タクシー
介護タクシーとは、要介護状態の方が利用するためのタクシーのことです。車椅子やストレッチャーをそのまま載せることができる車両を使い、利用者を安全に目的地まで送ります。
また、移動のみならず、運転手が利用者に対して必要な介助を行う点も、介護タクシーの大きな特徴です。そのため、介護タクシーの運転手には、ホームヘルパー2級など介護を行うために必要な資格を有していることが求められます。
なお、介護タクシーとはあくまで通称であり、法律上規定されている名称ではありません。一般的に、介護関連の資格を持つ運転手が、介助行為を行いながらタクシーサービスを行う場合に介護タクシーと呼んでいます。
行政ではこうした利用者への介助を行う福祉輸送サービスを「福祉タクシー」と呼称することも多いです。利用者の利用範囲に応じて、介護保険適用となる場合とならない場合とがあります。
介護ドライバー
介護ドライバーとは、デイサービス(通所介護)の利用者を車で送迎する運転手のことです。多くの場合は施設所属のワンボックスカーを運転し、朝に利用者宅まで迎えにいきます。そして施設利用が終わる夕方になると、利用者を自宅まで送り届けるのです。
ただし、介護ドライバーは車の運転をすれば良いというわけではなく、利用者宅に迎えに行ったときは、車椅子の上げ下ろしや乗車の介助を行うこともあります。また、施設によっては利用者だけでなく訪問マッサージ師などの送迎を行う場合や、事業所で働く介護士が運転業務を兼務する場合もあり、働き方は施設ごとに異なると言えるでしょう。
なお、介護ドライバーはデイサービス以外に一部の有料老人ホームに勤務するケースもあり、その場合は運転業務だけでなく、施設のメンテナンスや清掃業務などを兼務することもあります。
介護事務員
介護事務とは、介護保険サービスを提供している施設や事業所にて、受付業務や介護報酬請求業務などの事務作業を行う職種のことです。介護保険制度にかかわる専門的な知識が要求され、仕事の範囲は勤務先となる施設・事業所によって変わってきます。
介護事務においてメイン業務となるのは、介護報酬請求業務。これは事業所の経営・収支に直結する仕事です。そのほか、電話応対や来客対応といった窓口業務や、施設によっては備品の管理、スタッフの労務管理を行うこともあります。
介護事務として働くには特に資格は必要ありません。しかし一般的には、「介護事務管理士」「介護保険事務士」「ケアクラーク」「介護保険事務管理士」などの資格を取得しておくと、就職時に有利となるケースが多いです。
介護事務管理士
介護事務管理士とは、介護事務職員としてのスキルを証明する民間資格です。JSMA技能認定振興協会が主催し、介護事務管理士技能検定試験の合格により資格を取得できます。
資格試験は介護保険制度や介護報酬請求業務にかかわる知識を問うマークシート形式の学科試験(10問)と、レセプトの作成や点検を行う実技試験で構成。年6回実施され、全国の主要都市で受験できます。
介護施設・事業所に介護事務として働くには、原則として資格は必要ありません。しかし実際には、介護事務管理士のような介護事務にかかわる資格を取得しておくと、就職時に有利です。また、介護事務管理士の資格取得に向けて学習した内容は就職後にすぐ活かせるので、スムーズに仕事を開始できるでしょう。
サービス介助士
サービス介助士とは、公益財団法人日本ケアフィット共育機構が主催する民間資格です。資格取得に向けた学習を通して、ホスピタリティマインドやノーマライゼーションの理念、高齢者や障がい者への理解と介助の方法・自立支援のあり方などを一通り学ぶことができます。
近年では大学や専門学校の講座としても導入が広まっており、2016年6月時点において既に13万人以上が資格を取得。一般的な認知度は年々高まりつつあり、介護業界だけでなく、小売業や観光業などで働く人においても資格取得者が増えています。高齢化が進む中で今後さらにニーズが高まる資格と言えるでしょう。
介護予防運動指導員
介護予防運動指導員とは、専門知識に基づき、運動プログラムの立案および指導を行う介護予防専門の資格です。
資格取得後は、介護施設・事業所において利用者一人ひとりの心身状態に合わせた介護予防プログラムの立案、転倒予防体操や尿失禁予防運動などの運動指導、マシントレーニングの指導などを行います。介護予防のスペシャリストとして、活躍できる場は広いです。
現在、社会の高齢化が急速に進む中、要介護者の増加を抑えるために、介護予防に関する専門的な知識とスキルを持つ介護職へのニーズが高まっています。介護予防運動指導員の資格を持っていれば、その施設・事業所における介護予防の中心的な存在として活躍できるでしょう。
介護食アドバイザー
介護職アドバイザーとは、高齢者の食に関する専門的知識を総合的に学習し、介護職のレシピ作りを実践する技術を持つことを証明する資格です。
一般財団法人日本能力開発推進協会が認定を行っている資格で、資格試験を受けるには協会が行っている教育訓練において、所定のカリキュラムを修了する必要があります。
カリキュラムの中で学ぶ内容は、高齢者の心理や栄養学の基礎知識、高齢期の病気と食生活のあり方、介護食の基礎知識など。学ぶ範囲は広いですが、受講を修了し、資格試験に合格することで、食のスペシャリストとして評価されます。
スマート介護士
スマート介護士とは、介護ロボットや介護センサーなどの操作、介護にかかわるオペレーションシステムの構築に携われる能力を持つことを証明する資格です。2019年3月に創設されました。
近年、日本では介護人材の不足が深刻化しており、介護現場では限られた人手の中で業務を効率化し、生産性を向上させていくことが求められています。そうした中で期待されているのが介護ロボットや介護用センサーの開発、導入です。
しかし実際には、ロボットやセンサーの使い方・操作方法がわからないために、介護現場で活用できないというケースが少なくありません。
こうした問題に対処すべく創設されたのが、スマート介護士の資格です。スマート介護士は、介護ロボット・センサーを活用し、介護業務の効率化を図ることが期待されています。介護分野に新しい風を吹かせる存在として、今後さらに活躍の場が広がるでしょう。
無資格、未経験でも介護職になれる
介護職は、介護福祉士やケアマネージャーなどの資格保持者でなければ働けない、ということはありません。無資格、未経験であっても、一部の介護の仕事を行うことができます。「特に資格もないから、介護分野での就職・転職は難しそう」と思われがちですが、実際には資格がなくても介護現場で活躍することはできるのです。
もちろん、介護職員初任者研修や実務者研修、介護福祉士などの資格を持っていた方が、介護分野での就職・転職時に有利に働きます。しかし、介護の仕事はこれら専門職が担うものばかりではありません。資格を持つ専門スタッフのサポート、補助を行う人材へのニーズも現在高まりつつあります。
資格がないからといって、介護分野への就職をしり込みする必要はないわけです。就職後に経験を積み、資格を取得していくことで、就職時点では無資格・未経験でも、そこからキャリアアップを図ることもできます。
介護職の給料
1.保有資格ごとの平均給与額
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」に基づき、介護分野における主な資格の平均給与額をご紹介しましょう。
保有資格によって給与額には大きな違いがあります。全体的に、取得の難易度が高い資格ほど、平均給与額(賞与などを含む)は高めです。
保有資格 | 平均給与額 |
---|---|
介護福祉士 | 32.9万円 |
社会福祉士 | 35.3万円 |
介護支援専門員 | 36.8万円 |
実務者研修 | 30.3万円 |
介護職員初任者研修 | 30.1万円 |
保有資格なし | 27.5万円 |
2.手取り
一般的なサラリーマンが月給をもらう際、「額面」「手取り」という言い方をします。額面とは基本給に各種手当が加算された総支給額のことです。一方、手取りとは額面給料から源泉徴収によって差し引かれる税金や社会保険料を計算した後に、実際に給料として振り込まれる金額のことを指します。
一般的に、手取りの金額は額面給料の7~8割になるケースが多いです。そのため、上記の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」で提示されている平均給料額の7~8割が手取り額と考えると良いでしょう。
3.介護職員処遇改善加算(手当)とは
2019年10月、「介護職員等特定処遇改善加算」が新たに導入されました。これは介護現場の人手不足を解消することを目的に、介護職の給料をアップさせる加算制度です。
これにより、例えば勤続10年以上の介護福祉士であれば、平均8万円もの月給アップとなりました。介護分野での人手不足は将来的にさらに厳しくなると予想され、今後もこうした待遇改善が図られるとも考えられます。
介護職の仕事内容
1.主な業務
入浴介助
入浴介助は、入所施設の場合は午前と午後の2回、通所施設の場合は午前中に1回行うのが一般的です。入浴の際は、湯温はもちろんのこと、着替えの段階から温度に気をつける必要があります。また、浴場内は滑りやすいため、利用者が転倒しないように注意することが大切です。
入浴介助は介護の中でも特に体力・筋力が求められますが、入浴時に利用者の気持ちよさそうな様子を見ることができ、やりがいを感じやすい仕事と言えます。
排泄介助
排泄のタイミングや1日あたりの回数は利用者によって異なるため、介助の際は注意する必要があります。
自分でトイレを行えないということは利用者自身の自尊心を傷つけ、それ自体がストレスになることも少なくありません。そのため介護する側としては、介助される側の気持ちをくみ取り、心身の不快感を最小限にするように気を配ることが大事です。
便秘などにより排泄が難しくなってしまい、それでもなんとか無事に終えたとき、利用者と一緒に喜びを分かちあうこともあります。
食事介助
食事介助は、自分で箸やお椀を持って食事をすることが困難な方を介助することです。また、年齢を重ねると次第に嚥下機能が低下していき、悪化すると食べたものを自分で噛み、飲み込むことが難しくなってきます。
その場合、その人に合った食事形態で、無理なく口から召し上がってもらえるよう適切に介助しなければなりません。
利用者に食べる喜びを感じてもらえるよう介助することが大切です。
レクリエーション
利用者の心身状態に合わせたゲームや、機能回復につながるような動作を取り入れた催しを行うのがレクリエーションです。具体的な内容としては、指先を使った工作や風船やボールを使ったゲーム、みんなで合唱を行うなど多岐に渡ります。そこにいる皆が楽しめるような内容を考えることが大切です。
手先を動かすことは高齢者の健康につながるため、効果的なレクリエーションは長寿にもつながります。一緒に楽しむことで、介護職が利用者との距離を縮めるきっかけにもなるでしょう。
口腔ケア
口腔ケアとは、利用者の口腔内を清潔に保ち、雑菌を減らすためのケアのことです。自分でブラッシングができるようになることを目的として、介助を行う場合もあります。
介護職がブラッシングするときでも、利用者の手を添えて一緒に磨くようにするなど、少しでも本人の自立につなげようとすることが大切です。
トランスファー(トランス)
トランスファーとは、ベッドから車椅子に自力もしくは介助によって乗り移ることです。歩くことが難しい方の場合でも、介助により車椅子にさえ移乗できれば、寝たきりを予防できます。
トランスファーの介助を行う際は、ベッドから転落しないように、しっかりと利用者の体を支えることが大切です。ベッドから落ちると骨折などの重大事故につながるため、介護職は細心の注意を払わなければなりません。
就寝介助(ナイトケア)
就寝介助(ナイトケア)とは、普段着から寝巻・パジャマの着替えを解除し、就寝のサポートをすることです。就寝時にどのような服装で寝るのかは、利用者によって違う場合が少なくありません。
例えば、パジャマの上着をズボンの中に入れないと眠れないという方や、靴下を履いていなければ眠れないという方もいます。人によって生活習慣・好みは違うため、介護職はその点を見極めたうえで、本人にとって最適な介助を行うことが大切です。
介護職が行える医療行為
介護職は原則として医療行為は行えません。しかし、医師法・歯科医師法・保健師助産師看護師法などの法律では医療行為と位置付けられているものの、規制対象外として介護職員が行える行為もあります。
具体的な規制対象外となる医療行為は、以下の通りです。
- 耳垢の除去、爪切り・爪のやすりかけ
- 歯ブラシや綿棒を使っての口腔ケア
- ストーマのパウチに溜まっている排泄物の処理
- 自己導尿補助のカテーテル準備・体位保持
- 市販品であるディスポーザブルグリセリン浣腸器の使用
2.介護職が働く場所
有料老人ホーム
有料老人ホームは、企業などが運営している民間の介護施設です。民間運営であるために施設によってサービスのあり方が大きく異なり、介護職の仕事も違ってきます。
例えば、要介護者が多く生活する介護付き有料老人ホームであれば、食事や入浴、排泄の介助などを施設スタッフがサービスを提供します。
一方、住宅型有料老人ホームの場合だと、入居者が訪問・通所の介護サービスと個別に契約して利用する必要があるため、在宅介護の場合と同様に、必要なサービスを組み合わせて利用できるのが特徴です。
グループホーム
グループホームは、専門医から認知症の発症を診断された方のみを入居対象とする施設です。利用者は入居後、9人以下の人数からなるユニットを構成し、ユニット単位で共同生活を送ります。
介護職の仕事は、介護を必要とする利用者への食事や排泄、入浴の介助などが中心です。その一方で、利用者と一緒にご飯を食べたり、散歩に出かけたりと、ともに行動することが多くなる傾向もあります。
認知症の状態は利用者ごとに異なり、気性が激しくなっている方も少なくありません。介護職には、どのような症状の利用者に対しても落ち着いてコミュニケーションを取るスキル・能力が求められます。
デイサービス・デイケア
デイサービスとは、要介護認定を受けた高齢者に事業所に通ってもらい、専門スタッフによる食事や入浴の介助を行う介護保険サービスです。
利用者がデイサービスに通っている時間は介護をする側が自由な時間を確保できることから、家族介護者の介護負担を軽減できるサービスでもあります。
さらにデイサービスでは各種レクリエーションが行われることも多く、それが利用者にとっての「生きがい」となることも多いです。
また、デイサービスと同じように「通い」で受けるサービスとしてデイケアがあります。デイサービスは介護やレクリエーションを受けることがメインなのに対して、デイケアはリハビリの提供が中心です。筋力・体力をつけ、リハビリ・機能訓練に力を入れたいという場合、デイケアが適しています。
訪問介護(ホームヘルパー)
訪問介護とは、利用者宅を訪問して身体介護や生活援助などを行う介護保険サービスです。利用者は自宅で介護サービスを受けることができるので、精神的な負担を感じずに済みます。基本的に、利用者一人に対して、ホームヘルパーが一人で対応するため、その人に合ったサービスを提供しやすいです。
料理や部屋の掃除などのみを行う生活援助サービスをのみ利用している場合、食事や排泄の介助を行う身体介護は必要ありません。利用者によって、身体介護のみや生活援助と組み合わせてのサービスなど、それぞれの状況に応じて変わってきます。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、社会福祉法人や地方自治体によって運営されている公営の介護施設です。入居条件が要介護3以上であることから、自力での生活が難しい要介護度の重い方が多く生活している点が特徴と言えます。
特別養護老人ホームで働く介護職の仕事は、利用者への食事、入浴、排泄の介助をはじめとする身体介護がメインです。また、利用者の家族ともコミュニケーションを取り、施設内での生活状況や介護のあり方などについて相談します。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、要介護状態の高齢者が自宅で生活を送れるようになるために支援を行う施設です。
病院から退院したあと、すぐに自宅での生活が難しい場合に利用されることが多く、その意味で医療機関と自宅との橋渡しの役割を担う施設と言われています。
介護老人保健施設の大きな特徴は、利用者が日々自宅復帰に向けたリハビリに取り組んでいるという点です。利用者は常駐する医師と相談しながら、施設でリハビリを続けるかどうかを3ヵ月ごとに検討します。
病院
介護職は病院でも働くことができ、その場合の仕事内容は主に入院患者の介助および看護師のサポートです。
患者の食事や排泄、入浴の介助などの身体介護をはじめ、ベッドのシーツ交換とその洗濯などを行います。
また、患者のカルテを整理したり、医療器具を消毒したりするなど、看護師の補助も行います。病院だと医師や看護師がすぐ近くにいるため、患者における医療面での不安や不明点をすぐに解決できるという点は大きな利点です。
さらに、病院で開催されている各種研修に参加することで、感染症対策などの医療知識を学ぶこともできます。
3.一日のスケジュール例
介護職の一日のスケジュールを、介護施設にて日勤で働いた場合を例に挙げてご紹介しましょう。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設の場合、利用者への介護とリハビリがメインです。
時間 | 内容 |
---|---|
9:00 | 出勤および引継ぎ |
9:30-11:00 | 利用者への見守り、および入浴や排泄の介助 |
11:30-13:00 | 昼食の準備、食事の介助 |
13:30-16:30 | 入浴や排泄の介助、レクリエーションの実施、各種報告書の作成 |
16:30-17:30 | 夕食の準備、食事の介助 |
18:00 | 次の引継ぎ者への申し送りを行った後、退勤 |
介護職として働くメリット・デメリット
メリットは深い人間関係が築けること
利用者のそばで身の回りの世話や食事、入浴の介助を行うため、必然的にコミュニケーションを頻繁に取ります。
そのため、介護職と利用者との間で深い人間関係を築ける場合が多いです。お互いの性格や好みなどもわかり、表面だけの付き合いではない、深い関係性を構築できます。利用者(サービスを受ける側)と親しい関係性の中で仕事を行えるというのは、介護職ならではのやりがいの1つです。
何歳まででも働けるのもメリット
一般社団法人日本在宅介護協会の調査によると、介護業界においては正職員の場合だと12.6%、非常勤職員の場合だと42.5%の事業所において、定年制度を設けていません。
定年制のある事業所でも、60~65歳となっている場合が一般的で、その後も再雇用や嘱託などの形で雇用を延長する制度を導入しているケースがほとんどです。介護業界は、高齢だから働けない、という職場ではないと言えるでしょう。
最近では、求人の内容にも年齢不問としている事業所が増えています。介護人材が慢性的に不足している現在、年齢に関係なく、働ける人を少しでも多く確保したいというのが施設・事業者側の本音です。
デメリットは体力的なきつさ
介護職のデメリットとしては、体力的にきついという点が挙げられるでしょう。介護職は、自分より体重が重い利用者の入浴介助や着替えの補助を行うことも必要になってきます。
そのため、介護の仕事に従事するには、どうしてもある程度の筋力、体力が不可欠です。実際に、体力的にきつくて長続きしないという人も多く、慣れるまでは大変に感じるかもしれません。
異業種からの転職を成功させる方法
1.介護職の履歴書の書き方
履歴書は就職や転職を行う際の、自分の顔ともいえるべき重要な書類です。まず、日付については履歴書を郵送する場合はポストに投函する日や郵便局の窓口で手続きをした日、面接を受ける際に提出するときは面接日を記入しましょう。
氏名については、戸籍の漢字通りに記入する必要があります。崩し字や略字は使わず、正確に記入してください。氏名欄の横に押印欄がある履歴書を使う場合、必ず認印を押しましょう。生年月日については、日付を記入するときに選んだ和暦、西暦のどちらかに合わせます。
住所は都道府県から記入し、番地、番、号を略さずに書いてください。マンション名があれば、漏れなく記入します。電話番号は連絡がつきやすい携帯電話のみでも問題ありません。メールアドレスは、小文字と大文字、数字をはっきりと書き分けましょう。
学歴と職歴については、最初に学歴を書き、その次に職歴を書くのが一般的です。学歴は中学校卒業もしくは高等学校入学から記載します。職歴については、アルバイト・パートは記載しないのが通例。社会人経験のない方は、「職歴」の行の後ろに「なし」とのみ記入しましょう。
2.魅力的な志望動機の書き方
志望動機を記載する際は、同じ業界のほかの施設・事業所ではなく、「なぜこの施設・事業所でなくてはならないのか」を明確にする必要があります。ほかの施設・事業所との違いを記入し、志望するに至った動機をストレートに伝えましょう。
また、志望動機を書くにあたって大事なのが、応募するきっかけとなった具体的な体験を盛り込むことです。他人から聞いた話などではなく、自分自身の経験に基づく言葉で表現することで、文章の内容により説得力を持たせることができます。
なお、実際に志望動機欄に記入する際は、スペースの8割を埋めましょう。わずかな文字数だと印象がよくありません。
3.面接での留意点
面接で応募先の施設・事業所を訪問するときは、スーツ着用が基本です。新卒者の場合はリクルートスーツで問題ありません。施設・事業所の中にはビジネスカジュアルのような服装でも良い場合もありますが、判断に迷う場合はスーツを選択するのが無難です。
シャツにはシワがないようにし、清潔感のある服装を心がけましょう。普段アクセサリーを付けている人は、すべて外しましょう。また、女性の方は、香水やメイクは香りが強くならないよう注意が必要です。
たとえ応募先から私服でも構いませんとの連絡があっても、デニムやサンダルといったカジュアルな服装は避けましょう。
転職者の場合、前職の退職理由を聞かれます。その際、「人間関係や給与待遇に不満があって辞めた」などとネガティブな回答をするのは避けましょう。将来的に介護業界でやりたいこと、挑戦したいことを述べ、ポジティブな印象を面接官に与えることが大切です。
4.介護職に向いている人
介護職は常に利用者と接する仕事であるため、コミュニケーション能力に加えて、相手を思いやる高いホスピタリティを持つことが求められます。体調面や精神面など、利用者のちょっとした変化に気づいてサポートし、必要に応じて事業所やケアマネージャーに報告し相談する姿勢が大切です。普段から人との会話を楽しみ、友人・知人の輪を広げるのが好きな人は、より介護職に向いていると言えます。
また、介護職は肉体的にも精神的にもハードな仕事です。サービスを提供する対象は高齢者や障がいをお持ちの方で、中には認知症を発症している方もいます。そうした方々に対して、いつも前向きで明るく接しなければなりません。
仕事の中で、利用者とのコミュニケーションをうまく取れずに落ち込んだり、もっと良い介護ができたのではないかと悩んだりすることもあるでしょう。しかし、そうした中でもポジティブな精神状態を維持し、明るく業務を行っていくことも、介護職には求められます。